排気量アップでさらに余裕の走り!! 扱いやすさと快適性向上で長旅に出たくなるカワサキの大型ツーリングモデル「ヴェルシス1100 SE」の実力とは?

欧州を中心に人気を博す前後17インチの足回りを持つクロスオーバーモデル。ロードスポーツ寄りのタイヤサイズとしながら、ストロークの長いサスペンションやゆったりとした乗車姿勢など車体の基本構成はアドベンチャーツーリングそのもの。新登場したカワサキ『VERSYS 1100 SE』に乗ると、日本でも人気が高まる気配を感じずにはいられません。バイクジャーナリストの青木タカオさんがメディア向け試乗会に参加し、そう強く感じました。

走り出せば印象一変

 その場で押し引きすると「これは大きいぞ」と覚悟させられますが、ひとたび走り出すと印象はガラリと変わります。

 前後17インチホイールの足回りが軽快性のあるハンドリングを生み、車体は素直にリーン。切り返しも重さを感じさせません。

カワサキ「VERSYS 1100 SE」に乗る筆者(青木タカオ)
カワサキ「VERSYS 1100 SE」に乗る筆者(青木タカオ)

 単なるツアラーではなく、旅そのものを楽しませてくれる相棒として高く評価されるヴェルシスシリーズのフラッグシップが、排気量を拡大するなどフルモデルチェンジし『VERSYS 1100 SE』として登場しました。

 電子制御サスが生み出す快適性と落ち着きのある車体、余裕あるエンジンは果てしない距離を淡々と走り切ってくれるでしょう。「このままどこまでも走っていきたい」と、試乗車を返却するのが惜しくなります。

 ゆったりとしたライポジは、ロングツーリングに適したもの。上半身が前傾することなく、視界は高く遠くまで見渡せます。

 ステップが自然な位置にあり、膝の曲がりは緩やか。シート高は欧州仕様より20mm低い820mmとなっています。身長175cm/体重67kgの筆者がまたがると写真の通りで、両足を地面に下ろすとカカトが浮きます。

排気量アップの恩恵は絶大

 欧米で高い人気を博した『ヴェルシス650』の上位モデルとして2011年11月に発表され、翌12年から販売が始まったのが『ヴェルシス1000』です。

『ニンジャ650』や『ER-6』系の並列2気筒エンジンを心臓部とした650に対し、兄貴分はアドベンチャーモデルとしては珍しく直列4気筒エンジンを搭載してのデビューでした。

カワサキ「VERSYS 1100 SE」
カワサキ「VERSYS 1100 SE」

 斬新な縦2灯のフロントマスクをNinja1000系のスタイリングに刷新するなどモデルチェンジを繰り返し、2019年から国内ラインナップに加わります。21年モデルで電子制御サスペンションをアップデートし、SHOWAのスカイフックEERAテクノロジーが採用されるなど、カワサキが誇る最上級クロスオーバーです。

 水冷DOHC4バルブ並列4気筒エンジンはボア・ストロークを77×56mmで排気量を1043ccとしていましたが、新型ではストロークを59mmに伸ばして1098ccにスケールアップ。15PSアップし、最高出力135PSを発揮します。

 この55cc増しがエンジンにさらなる余裕をもたらしました。極低速域からトルクが厚く、アクセルのほんのわずかな開け閉めで車速や姿勢をスムーズにコントロールでき、6000rpmを超えれば弾けるような伸びでダイレクトな加速感が味わえます。

電スロのセッティングが秀逸

 開発リーダーの山本茂季氏に話を聞くことができました。

 排気量拡大の理由を聞くと「ユーザーからの要望に応えて、高速クルージングでのエンジン回転数を下げたかった」とのこと。トップギア6速のギア比をロングに設定することも考えたものの、それではトルクが落ちます。そこで排気量アップに踏み切ったと教えてくれました。

カワサキ「VERSYS 1100 SE」の開発リーダー、カワサキモータース株式会社 MCディビジョン第一設計部 第二課 基幹職 山本 茂季氏
カワサキ「VERSYS 1100 SE」の開発リーダー、カワサキモータース株式会社 MCディビジョン第一設計部 第二課 基幹職 山本 茂季氏

 実際に乗って感じるのは、低中域トルクが太くなったことで扱いやすくなったことと、高回転域で感じる直4らしい胸の空く伸びはそのまま健在であることです。

 その感想を山本氏に伝えると、スロットルのリニアリティを見直したことも貢献していると言います。開度1/2までは扱いやすくフレンドリーで、もっと開ければパワーをダイレクトに感じられるよう緻密なセッティングが施されているのでした。

 また、4000~7000rpmの間でのトルク向上は、インテークファンネルのセンター2つを外側ファンネルより45mm長くしたことで達成。ECUおよび排気系を見直し、オイルクーラーも追加されています。

 KQS(カワサキ・クイック・シフター)はこれまで2500rpm以上で使用できましたが、1500rpmから使えるように。排気量アップによる余裕が狙い通り、クルージング時の快適性を向上させました。よりジェントルで、上質感のある乗り心地に仕上がっていることが感じられます。

 リアブレーキはディスク径を250→260mmにし、確実な制動力を確保し、コントロール性を向上。シートはウレタンクッションの厚みを増し、ロングライドでの快適性もアップしています。

 ホイールトラベルをフロント150mm、リヤ152mmとし、荒れた路面もそつなく走破する前後サスを持っていることも『ヴェルシス1100』の大きな魅力です。路面からの衝撃をドンと受け止めるのではなく、スッといなしてくれるのは、ロングストロークサスペンションとカワサキエレクトロニックコントロールサスペンション「KECS」のおかげ。スカイフックの開発理念は、「車体を空からフックで吊り下げているような車体姿勢」をイメージしています。

 セミアクティブサスは路面コンディションや走行状況に合わせて瞬時に減衰力を変化させてくれるので、不快な突き上げをほとんど感じることはありません。車体の過度なピッチング、不快な挙動を抑えてくれることで、長距離を走ったときも疲労を低減してくれ、どこまでも、いつまでも走りたくなります。

旋回力で示す前後17インチの実力

 ワインディングでは意外とも言えるほど機敏です。前後17インチの足回りがクセのないニュートラルなステアリングフィールを発揮。路面を掴むグリップ感がしっかりとあり、狙ったラインを外しません。

カワサキ「ヴェルシス1100」に乗る筆者(青木タカオ)
カワサキ「ヴェルシス1100」に乗る筆者(青木タカオ)

 モノブロックラジアルマウントキャリパーとラジアルポンプ式のマスターシリンダーを組み合わせるフロントブレーキは、申し分のない制動力とコントロール性を発揮しますが、コーナーアプローチでのブレーキングなどでは、KCMF(カワサキ・コーナリング・マネージメント・ファンクション)に頼ることもできます。レバーを強く握っても車体が起き上がることはなく、スムーズにコーナーへ入っていけます。

 ハンドルバーにはUSBタイプCの充電ポートを備えるほか、グリップヒーターやヘルメットロック、ETC2.0車載器を標準装備。積載能力の高いパニアケースやトップケースなど純正アクセサリーも充実しています。

 スマートフォンとのコネクト技術も大幅に進化し、ヘッドセットを通じて音声コマンドに対応するスマートフォンアプリ「RIDEOLOGY THE APP MOTORCYCLE」に連携。ナビゲーション機能も利用できるようになっていることも旅するライダーにとってはありがたいところでしょう。

 まさに万能で、速度域が上ろうとも破綻しない安心感は絶大です。これは開発リーダーの山本氏が言うとおり、ユーザーからの要望に応えつつ完成度を高めてきた欧州育ちのクロスオーバーであるからこそ。

 アウトバーンを走り、険しいアルプスを越えるライダーたちに愛され続ける理由は、日本の道を走ってもすぐにわかり、それは長旅における大きな武器になります。前後17インチのクロスオーバーモデルは、旅の中でダートの割合が比較的少ない日本でこそ、活躍の場がますます広がるように思えます。『ヴェルシス1100』はカワサキプラザ専用モデルで、メーカー希望小売価格は209万円です。

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Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

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