新車価格の10倍超えも!? 確かにカッコイイけれど「絶版旧車」はナゼ高い? 3桁万円がザラの理由とは

バイクも「機械」である以上、基本的に新しい方が高性能ですが、「旧車」には性能だけでは割り切れない魅力があります。人気の絶版旧車の価格は驚くほど高額です……が、そもそもナゼこんなに高いのでしょうか?

そもそも「旧車」ってナニ?

 そもそも「絶版旧車」とはどんなバイクでしょうか? まず「絶版」は、生産終了して新車で販売されていないという意味です。

中古車検索サイトで3桁万円の価格が表示されているカワサキ「500SSマッハIII」(1968年~)
中古車検索サイトで3桁万円の価格が表示されているカワサキ「500SSマッハIII」(1968年~)

 次に「旧車」ですが、こちらは明確な定義がありませんが、一説によると生産されてから20~25年以上経過した車両を指すようです。

 ということは、今からだと21世紀になる前、1990年代以前のバイクはすべて旧車になります……が、これには異論も多いハズ。ライダーの年齢や免許を取得してバイクに乗り始めた年代などによって、「旧い・新しい」の時代感覚が異なるので当然でしょう。

 とはいえ現在ハタチ(20歳~)の人から見たら、1990年代は生まれる以前のバイクなので、十分に「旧い」と感じるでしょう。

モノの価格は「需要と供給のバランス」で決まるが……

 そんな旧車の定義はともあれ、中古車検索サイトなどを見ると絶版旧車はもの凄く高額になっています。とくにコロナ禍の2020年頃からは驚くほど高騰し、新車価格の10倍を超える物件も少なくありません。いったいなぜこんなに高額なのでしょうか?

中古車検索サイトで3桁万円の価格が表示されているホンダ「ドリームCB750FOUR」(1969年~)
中古車検索サイトで3桁万円の価格が表示されているホンダ「ドリームCB750FOUR」(1969年~)

 それは「需要と供給のバランス」で、端的に言えば「タマ数が少ないから」です。……と、あまりに当然な答えですが、なぜタマ数が少ないのでしょうか。

 まず人気車ならたくさん売れたので、今でも中古車のタマ数が多いハズ……と思いますが、じつはそうならない事情があります。そこには道路運送車両法による「かつての車検制度」が少なからず影響しています。

 現在は2輪車(250ccを超える小型2輪車)や乗用車は、新車を登録して最初の車検が3年、その後は2年毎に車検を受けます。ところが道路運送車両法の1995年の改正前は、車検は新車から10年間は2年ごとで、その後は毎年車検を受ける必要がありました。

 そこで10年超えのバイクは「1年車検のバイク」という具合に呼ばれ、所有するユーザーにとって経済的な負担が大きいとともに、中古車として販売する上でも足枷になっていました。

 そのため当時は生産から10年を超えたバイクやクルマは、よほど走行距離が短くて程度が良かったり、プレミアムな車両(ニッサンのスカイライン2000GT-Rなど)を除けば、どんどん廃車にされるのが実情でした。

 部品取り車になったり、格安で海外に輸出されたりしたのかもしれませんが、一般ユーザーに対する中古車の価値としてはかなり低いモノになり、その時点でタマ数は減少していきました。

人気の旧車も、昔は「古くて低性能」扱い!?

「いくら1年車検とはいえ、人気車をどんどん廃車にするワケがない」と思う人も多いかもしれませんが、本当に当時も「人気車」だったのでしょうか?

中古車検索サイトで3桁万円の価格が表示されているスズキ「GT380」(1971年~)
中古車検索サイトで3桁万円の価格が表示されているスズキ「GT380」(1971年~)

 たとえば大人気の絶版旧車(=超高額車)のカワサキ「Z2(ゼッツー)」こと「750RS」は1973年、ホンダの「ヨンフォア」こと「CB400FOUR」は1974年に登場しました。もちろん発売当時は人気がありましたが、1年車検となる1980年代初頭は、日本は空前のバイクブームに包まれていました。

「ヨンフォア」は400ccクラスで唯一の4気筒エンジンだっただけに、1976年に生産終了した際には大いに惜しまれましたが、1979年にカワサキが「Z400FX」を発売し、続けとばかりにヤマハやスズキも4気筒をリリース。そしてホンダが1981年に圧倒的に高性能な「CBX400F」を発売すると、4気筒ファンがそちらに流れたのは言うまでもありません。

 また排気量が750ccクラス(ナナハン)の「Z2」に関しては、増加する2輪事故や暴走族への対策で、試験場でしか大型バイクに乗れる免許が取れなくなった1975年の免許改正が影響します。「せっかく苦労して免許を取ったのだから、最高性能のナナハンに乗りたい」と思うのはライダーの性です。

 これは排気量に関わらずバイク全般に言えることですが、1980年代のバイクの進化は現在では想像できないほど凄まじく、半年どころか数カ月おきに性能アップした新型が登場する勢いでした。

中古車検索サイトで3桁万円の価格が表示されているヤマハ「XJ400」(1981年~)
中古車検索サイトで3桁万円の価格が表示されているヤマハ「XJ400」(1981年~)

 そうなると、旧車と呼べるほど旧くもなく、登場から10年ほど経過して1年車検になった「ヨンフォア」や「Z2」は、残念ながら「低性能な古いバイク」として扱われました。バイクショップの屋外の中古車コーナーの片隅で埃を被り、ヒトケタ万円のプライスで売られるのが実情でした。

 当時を知るライダーの中では「あの時買って持っておけば……」とよく語れられますが、もちろん未来は見えませんでした。

絶版「近年車」(?)も人気アリ!

 1年車検や免許制度、そして1980年代のバイクブームなど複合的な要因が重なり、絶版旧車のタマ数は減ってしまい、それが現在の価格高騰の一因になっているのは否めません。

ホンダ「CB400 SUPER FOUR」は1992年に発売され、モデルチェンジを重ねて2022年に生産終了。中古車検索サイトでは100万円を超えている。基本的に高年式車の方が高額
ホンダ「CB400 SUPER FOUR」は1992年に発売され、モデルチェンジを重ねて2022年に生産終了。中古車検索サイトでは100万円を超えている。基本的に高年式車の方が高額

 とはいえ、比較的近年に生産終了したカワサキの「ゼファー400」やホンダの「CB400 SUPER FOUR」も中古車価格はかなり高額ですが、こちらは純粋に車両の人気の高さと、新車で買える400ccクラスで4気筒のネイキッド車が存在しないからではないでしょうか。

 カワサキやホンダから、ここのところ噂されている4気筒ネイキッドのニューモデルが発売されたら、もしかすると(少しは)プライスがこなれるかもしれません。

 機械は生産から時間が経つと劣化で故障や性能低下します。とくに屋外で使用し、かつクルマのようなボディを持たないバイクのような機械は傷みが激しく、しっかりとメンテナンスする必要があります。これは現代のバイクでも同じですが、生産から時間が経つと補修するための部品の価格が徐々に高くなり、そのうちパーツ自体が絶版になっていきます。もちろん修理やメンテナンスするための労力が必要ですし、保管するスペースや税金などの維持費も必要です。

 というワケで、絶版旧車がもの凄く高いのは、発売されてから現在まで生き残るためには相当にコストがかかり、それも車両の価格に含まれているから……というのが一番の理由ではないでしょうか。

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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