余白に込められた意味とは? バイク王の「バリバリ伝説」CM制作秘話 熱き“バイク愛”と語られた全貌!
CMのリアルな動きや音はこうして作られた!
実際に放送されたCMを見てみると、メインビジュアルで使われているCB750Fの走行シーンと、世界グランプリのレースでNSR500のタンクに伏せる郡の横顔の2カットが、迫力あるエンジン音と一緒に採用されています。その制作秘話をトミタ氏が語ってくれました。

トミタ氏:
「15秒のCMで2カット、かなりぜいたくなのですが、アニメーションで動かすとちょっと既視感が出てしまうんです。そうじゃないクリエイティブジャンルってどうしていくのだろ、という時に、監督さんにCMを作っていく上での演出のコンテみたいなものを挙げていただいたら、グラフィックの一シーンをロールに巻いて回しながら撮る、という手法を、『どうですか?』ではなく、『やらせてくれ』と言われて。そういうところでバイクの躍動感を出していくのだと説明された時、感動しました。
巨大なドラムに同じ絵を20枚くらい貼って回すと、飛行機のプロペラみたいに止まって見えるじゃないですか。あれをカメラで撮ると、シャッタースピードが追いつかなくて自然なブレが出てくるのです。それでバイクが走っている時の振動を自然に表現できています。手法としてはめちゃくちゃアナログです。もちろん今の時代はデジタルで同じように動かすことはできるのですが、それは本質ではないのですね。
実は今回たまたま、監督さんもカメラマンさんも、エディターさんも録音の人も全員がバイク乗りでした。『バイク愛と』と言っているのだから、そこはリアルを追い求めていこう、ということでこういう撮影手法を採用しました」
松井氏:
「CMが完成してオンライン試写で澤社長に見ていただいたら『なんで音が入ってないんだ?』って言われまして、急きょ、音を入れることになりました。
レースドライバーの加賀山就臣さんにお願いすると、『郡の走っているところ(回転数)はここらへんだから、こういう感じにしないとダメだ』と。加賀山さんも『バリバリ伝説』が大好きなものですから、すごくこだわっていただいて。
納品まであと1日というなかで、CB750Fの音は本当にCB750Fなのですが、本来はモリワキのショート管でいきたく、しかしそのマフラーが見つからず、結果4-2-1のRPMを使っていて、本物よりもちょっと音が高いのです。あと良く耳を澄ませて聞くとFCRの吸気音が聞こえますよ。
また、NSR500も手配できなくてRZV500を使っています。だからそれもやっぱり僕のなかでは100%納得してはいません。用意できなかったから仕方ないのですが。
結果的にこれが一番クリエイティブでしたね。社長が一番のバイク愛を授けてくれて、われわれもそれに応える、っていう。この一個のCM制作の中にたくさんのバイク愛を感じました」
“第5のバイクメーカー”への期待
最後に、バイク王がバイク業界にとって有益な情報を発信し、バイクの未来を切り開くことを目的として発足させた「バイク未来総研」の所長を務める宮城光氏は、このCMの意義について次のように語って座談会を締めました。

宮城氏:
「レースをやっていた人間としては、レースの作品ですから、CMで使う時にどういうふうにリアリティーがあるのかな、という点に注目しました。『バリバリ伝説』という作品を使うにしても、例えばバンク角はどうか、キャラクターはどこを向いているのか、とか。しげの秀一(『バリバリ伝説』の著者)さんの作品はとてもハードで、マシンの描写も丁寧ですから安心感がありますけど、レーサーとしてはそこは丁寧に伝えてほしいな、いじられていると嫌だな、というのはすごくありました。
また一方では、高揚感があるのかどうか、CMを見てバイクに乗りたいと思えるのか、バイクのことが想像できるのか、というのはすごくありました。しげのさんの作品は頭の中にしっかりありますから。それと、事前にお話を伺ったバイク王というブランドがくっついた時に、その2つがどう魅せてくれるのか。
80年代のバイクブームはレースがすごく盛り上がっていましたが、それはいろいろな環境が整っていたからだと思うのです。日本のメーカーが世界のレースで圧倒的に活躍していて、いろいろなオートバイの作品も成熟してきた。『ワイルド7』『月光仮面』『仮面ライダー』『750ライダー(ナナハンライダー)』『マッドマックス』『汚れた英雄』――さまざまな作品がありました。そういう下地があったタイミングで、多くの若いライダーたちにリーチしていきました。
そこに1983年、この漫画が出てきた。当時は情報が少ないなか、実際にできるゲームとしてオートバイを使って自分が遊べるチャンスがある、時代がシンクロしてきたのが1980年代前半でした。
僕らの時代は、オートバイは速く走る、刺激的に走るためのツールでしたが、今の若い子たちにとってはそうではない。オートバイに対するアプローチが全く違います。僕らにとっては当時の熱い気持ちをもう一回思い出すチャンスになるし、この作品を知らない若い人たちにとっては、このCMをきっかけにバイクのある文化的な生活に入っていってほしいです。
僕は、バイク王は“第5のバイクメーカー”になってほしいと思っています。日本には世界を代表する4つの優秀なバイクメーカーがありますけれども、そういった大きな会社がなかなかできないことを、バイク王が担って、バイクという文化をもっと発信して、ライダーだけでなく多くの人々にバイクを通じていろいろなリーチができて、そこからバイクがある文化的な生活だったり考え方だったり交通環境だったり。そういったものをつくっていってくれたらうれしいです。
このCMはそのきっかけになりえます。ビジュアルやメッセージの余白のおかげで100人いれば100人捉え方が違います。今回のこのCMは多くの人に考えるチャンスを与えてくれているのではないかな、と思います」
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バイク王は「バリバリ伝説」の起用を今回のみで終わらせることは考えておらず、次回以降もコラボ施策を検討しているとのこと。ぜひ楽しみにしたいと思います。
Writer: 伊井覚
バイク歴はおよそ20年。ツーリングやサーキット走行を楽しんでいたはずが、突如オフロードにハマり、モトクロス、エンデューロなどレース生活を送る。2018年から全日本ハードエンデューロ選手権G-NETを全戦取材、2022年にはハードエンデューロ世界選手権「ルーマニアクス」を日本人として初めて取材した。






