市販車世界初はホンダ!? 高性能な「DOHC」っていつ頃登場したの? 「DOHC+4バルブ」が高性能エンジンの基準に
バイクのエンジンには様々な形式がありますが、現在はほぼ4ストロークのみ。そしてスポーツ性やハイパワーを謳うバイクは、総じて「DOHC」エンジンを搭載していますが、これは一体いつ頃登場したのでしょうか?
シリンダーの上にカムシャフトが2本あるから「DOHC」
バイクやクルマのガソリンエンジン車は、ガソリンと空気を混ぜた混合ガスを爆発(燃焼)させてエネルギーを生み出しており、現在主流の4ストロークエンジンは、エンジンが回転するための「吸気→圧縮→爆発(燃焼)→排気」の行程を、吸気バルブと排気バルブが開閉するタイミングで定めています。
その吸排気バルブの開閉は「カムシャフト」によって行いますが、1本のカムシャフトでシーソー状のロッカーアームを介して吸気バルブと排気バルブの両方を開け閉めするのが「SOHC(シングル・オーバー・ヘッド・カムシャフト)」方式で、シンプルにOHCと呼ぶ場合もあります。
それに対して、吸気バルブと排気バルブをそれぞれ専用のカムシャフト(吸気カムシャフト、排気カムシャフト)で開閉するのが「DOHC(ダブル・オーバー・ヘッド・カムシャフト)」方式になります。

ちなみに「オーバー・ヘッド」は、「シリンダーの上にある」という意味です。現在の4ストロークエンジンはSOHCとDOHCが主流ですが、カムシャフトをクランクシャフトの付近に配置して、プッシュロッド(棒)を介してバルブを開閉する「OHV(オーバー・ヘッド・バルブ)」方式のエンジンもあります。
OHVエンジンはハーレーダビッドソンで有名ですが、他にも採用しているのはBMW Motorradの「R 18」シリーズくらいで、現代では少数派と言えます。
市販車世界初DOHCはホンダ「ドリームCB450」
DOHC方式は、じつは高性能化を狙ってレースの世界で登場したメカニズムです。バイク用のエンジンでは、フランスのプジョーが1913年に排気量498ccの直立並列2気筒ギア駆動DOHCエンジンを、ワークスマシン用に開発したのが最初と言われています。
日本では、1957年に開催された浅間高原レースの500ccクラスで1位・2位になったメグロのワークスマシンが初DOHCでした。またホンダは1959年からマン島TTレースをはじめ、世界GPにワークスマシンの「RC」シリーズで参戦しますが、これらのレーシングマシンのエンジンもDOHCを採用していました。
SOHCが1本のカムシャフトで吸気と排気をコントロールするのに対し、DOHCはそれぞれが独立しているため、緻密な吸排気タイミングを設定できます。
またバルブの開閉にロッカーアームを介さないため摩擦ロスなども抑制でき、結果としてエンジンを高回転化できる=ハイパワー化が実現できたわけです。

このレースで培ったDOHC機構を最初に市販車に投入したのが、ホンダの「ドリームCB450」(1965年)で、排気量444ccの空冷4ストローク並列2気筒DOHC2バルブエンジンは43PSを発揮しました。
またバルブを閉じるためのスプリングが、メジャーなコイルスプリングではなく、金属棒のねじれの反発力を利用したトーションバースプリングの採用も特徴的でした。
DOHCの威力を多気筒・多バルブ化で発揮
ホンダは1969年に量産バイク世界初の4気筒エンジンを搭載した「ドリームCB750FOUR」を発売します。……が、この4気筒エンジンはDOHCを採用しませんでした。
そこでカワサキが1972年以発売した通称「Z1」こと「900Super4」が、量産車の4気筒エンジンで世界初のDOHC搭載車になりました。「Z1」は輸出専用車でしたが、翌1973年には国内モデルの通称「Z2」こと「750RS」が発売され、大人気を博しました。

ホンダ「ドリームCB450」やカワサキ「Z1/Z2」は1気筒当たり2バルブ(吸気バルブ×1、排気バルブ×1)でしたが、1973年にヤマハが発売した「TX500」は、DOHC2気筒エンジンに1気筒当たり4バルブ(吸気バルブ×2、排気バルブ×2)を採用しました。「TX500」はヤマハ初のDOHCエンジンだっただけに、高性能化と先行メーカーとの差別化を狙ったと思われます。
そしてホンダが1978年に発売した「CBX1000」は、6気筒DOHC4バルブエンジンを搭載し、エンジン一基で24本ものバルブを装備していました。とはいえ「CBX1000」は輸出専用モデルで、国内の一般ライダーには縁遠い存在でした。
そして翌1979年には輸出モデルの「CB900F」と国内モデルの「CB750F」が登場し、こちらは空冷4気筒DOHC4バルブエンジンを搭載しました。この「4気筒DOHC4バルブ」が、中排気量以上の高性能エンジンの基本レイアウトとなり、後に水冷化や様々な進化・熟成を経て現在に至っています。
「DOHC+4バルブ」が高性能エンジンンの基準に
現在、「4気筒DOHC4バルブ」エンジンを搭載するのは、本格レースにも使われる1000ccスーパースポーツや、そのエンジンを転用したスポーツモデルが主体となり、カワサキの「Ninja ZX-25R/4R」のような中型モデルは希少です。
そのため250ccからアッパーミドルと呼ばれる800ccクラスのスポーツ車は、「2気筒DOHC4バルブ」が主流のように思われます。
また、ホンダ「CB125R」やスズキ「GSX-R125/S125」(生産終了モデル)は、125ccクラスの単気筒DOHC4バルブエンジンを搭載しています。なので排気量や気筒数に関わらず、「DOHC+1気筒当たり4バルブ」が現在の高性能エンジンンの基準になった感があります。
そこで小排気量DOHCと言えば、ホンダが1997年に発売した「ドリーム50」も忘れられません。1962年に発売された市販レーサー「CR110カブレーシング」を彷彿させるスタイルに、排気量49ccの4ストローク単気筒エンジンはチェーンとギアで2本のカムシャフトを駆動するDOHCを採用し、極細の吸気バルブ×2と排気バルブ×2の4バルブを装備しました。

そして最高出力5.6PSを1万500回転で発揮し、当時は32万9000円の車両価格が高額と言われ販売数は伸びませんでしたが、現在は中古車市場で新車価格を大きく超えるレアアイテムとして扱われています。
DOHCが高回転・高出力向きの機構なのは事実ですが、現在もSOHC方式のエンジンも数多く存在します。これはバイクのカテゴリーや使い方、乗り方に合わせた選択であり、機構が複雑なDOHCは車両価格にも影響するので、どちらがエライということではありません。
とはいえスポーツバイク黎明期やバイクブームに育ったライダー(いまや熟年ライダー?)にとって、「DOHC」には何か特別な響きを感じる……かもしれません。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。
















