「E10」は世界の常識!? コーヒー屋も救う次世代ガソリンとは? デイドリップ通信Vol.49
バイク乗りのコーヒー店主、黒田悟志さんによる連載コラム。今回は「E10」と呼ばれるバイオエタノール混合ガソリンと、コーヒー生産を取り巻く地球温暖化のお話です。
地球温暖化対策が進むのはありがたい
こんにちは、『Day Drip Coffee』のクロダです。都内のとある住宅街で小さなロースターカフェをやっている、バイク好きの店主です。このコラムは「バイクとコーヒー」をテーマに、2つの世界を行き来して感じる様々なトピックをお届けしています。
今回は「E10ガソリン」とコーヒーについてです。2026年春にスズキから「V-STROM800/DE」と「GSX-8S/8R」の4車種が、スズキ二輪初となる国内向けのE10ガソリン対応車として発売されました。
このE10ガソリンとは何なのか? それを取り巻く背景とコーヒーとの関連性について取り上げたいと思います。

E10とは「バイオエタノールを10%添加したガソリン」という意味です。エタノールはエチルアルコールのこと。そこにバイオと付くのは原料が植物由来という意味で、主にトウモロコシやサトウキビから作られています。
植物は大気中の二酸化炭素を吸収して成長しますよね。だからそれを燃やして発生した二酸化炭素は、大気中に循環するだけで増えることはない、という考え方です。
つまり化石燃料に10%バイオ燃料を混ぜれば、その分カーボンニュートラルに寄与する訳です。
とても画期的な燃料なのですが、ちょっと弱みもあります。エタノールにはアルミなどの金属を腐食させたり、一部のゴムにダメージを与える性質があり、エンジンに悪影響を与える場合があるのです。古いバイクやクルマなどはトラブルが起きる危険性を孕んでいると言えます。
スズキのE10対応バイクとは、エンジンがその対策品で出来ていていることを表します。でも現在、国内でE10は流通しておらず(※E3とE7は東海地区にガソリンスタンドがある)、E10対応仕様には特にメリットがない状態です。「なのに何故?」と思いますよね。
実は、政府は2030年までにE10ガソリンの供給開始を目指すと宣言しているんです。日本の温室効果ガス排出量を低減する目的で、バイオエタノールの輸入、E10製造のプラントや供給体制、末端のスタンドに至るまで、社会インフラを根底から設計した大改革のようなことをやろうとしているんですね。
この話を初めて聞いた時、「へぇ~、日本もなかなか進んだことをしようとしてるじゃない!」と感心しました。ところが実態は全く逆の状況だったと後から知り、自分の無知さ加減にガックリしました。

世界ではすでに多くの国でバイオ燃料が実用化されています。特にアメリカ、ブラジルは広く普及しており、EU(欧州)はもちろん、中国、インド、東南アジアの各国、アフリカ諸国に至るまで、65カ国以上で導入されています。
日本は現時点だとずいぶん遅れているのが正直なところです。ただ、世界のマーケットはそんな状況ですから、日本のクルマ・バイクメーカーが作る輸出用の自動車や、海外拠点で生産されている現地向けバイクなどは、ずいぶん前からE10対応品で作られています。そして自動車は既に国内向けもトヨタやホンダなどでE10対応へと変わっています。
こんなふうに温暖化対策が進むことは、コーヒー屋の自分にとって大変ありがたいことです。なぜなら、地球温暖化はコーヒーの生産量減少と直結した大変重い話だからです。
ワールドコーヒーリサーチというコーヒーの研究機関が2015年に発表した論文では、2050年にコーヒーの生産に適した地域が現在の約半分になると報告されています。
その発表後、他の研究者たちも調査しましたが、結論は変わらないそうです。生産量が大きく減少するとコーヒーの価格高騰はもちろん、そもそも僕のような街の焙煎店では生豆自体の入手が困難になるかも知れません。
でもあと数年で日本全国にE10を給油出来るガソリンスタンドが出始めるはずです。幸い僕のバイクはタイ・ヤマハ製「XSR155」の並行輸入車です。タイはE10の国なので当然E10対応エンジンだから、わざわざ乗り換えなくてもE10をすぐに利用出来ます。
バイクライフもコーヒー生活も、どちらも末長く続けられるような、今どきの言い方でサスティナブルな在り方として、早くE10ガソリンを利用したいと思っています。
Writer: 黒田悟志
世田谷の自家焙煎カフェDay Drip Coffee店主。自転車ロードバイクに20年ほど乗ってきたが、2年前オートバイに目覚めて自動二輪免許取得。両足2気筒から4スト単気筒へ。昨年はSSTRにも初参加しバイクライフを堪能中。








