見どころと主要ライダーを紹介!! 【マン島TTレース2026】サイドカーTT中止 現場では映画の撮影も!?

1周約60kmの公道を使用して行われる、現存する世界最古の公道バイクレース「マン島TTレース(Isle of Man TT Races)」が2026年も開催されました。今年は変化の多い内容となっています。

変化が多く見られる2026年の状況をおまとめ

 1907年に始まった伝統の公道レース、「マン島TTレース(Isle of Man TT Races)」(以下、TTレース)が、2026年も5月26日から6月6日まで開催されます。

 119周年、120年目を迎える2026年大会は、クラス名称変更やスケジュール改定に加え、映画撮影も行われるなど、「変化の年」になっています。

 近年のTTレースでは、コース改修やマシン性能の向上によって高速化が進み、1周37.73マイル(約60km)の現在のレコードラップは、2023年のスーパーストックTTでピーター・ヒックマン選手が記録した、1周16分36秒115、平均速度136.358mph(約219.447km/h)です。

クラシカルなフォルムながら、スポーツバイクTT(去年までの名称はスーパーTT)クラスで常勝を誇ってきたイタリアのパトン「S1-R」。レギュレーションの変更で650cc以上のモデルもホモロゲーションに加わり、排気量的に不利になるが、果たして今年も勝利を得られるのか(写真/小林ゆき)
クラシカルなフォルムながら、スポーツバイクTT(去年までの名称はスーパーTT)クラスで常勝を誇ってきたイタリアのパトン「S1-R」。レギュレーションの変更で650cc以上のモデルもホモロゲーションに加わり、排気量的に不利になるが、果たして今年も勝利を得られるのか(写真/小林ゆき)

 それでは、今年のTTレースの変更点や注目ライダー、見どころを紹介します。

 TTの登竜門的カテゴリーとして創設されたスーパーツインクラスは、2026年から「スポーツバイク」クラスへ名称が変更になりました。

 これまで同クラスはカワサキの650ccツイン勢やパトン「S1-R」が中心でしたが、参戦可能モデルが拡大。ヤマハ「YZF-R7」やアプリリア「RS660」など、多彩なマシンが参戦します。

 また、中国メーカーのCFMOTOが「675SR-R」で参戦。TTレースに中国メーカーが参戦するのは史上初となります。

 サイドカークラスでは最高速度抑制を目的に、吸気リストリクターを導入。安全性向上と戦力均衡化が期待されています。

 スーパースポーツTTは従来の600cc4気筒エンジン中心から、多気筒・異排気量混走に移行しつつあります。

 市販スーパースポーツ市場の変化に合わせて、FIMスーパースポーツ世界選手権(WorldSSP)でも導入されている「Next Generation」規定がTTのスーパースポーツクラスにも反映され、ドゥカティの「パニガーレV2 」、トライアンフの「デイトナ765」、ヤマハ「YZF-R9」、MVアグスタ「F3」、カワサキ「Ninja ZX-6R」など、排気量も気筒数も異なる車両が性能調整込みでエントリーできるようになりました。加えて、スズキ「GSX-R750」も出走可能です。

 また、若干のスケジュール変更がありました。今年は予選ウィークに初めて休息日が導入され、木曜日は走行がありませんでした。その代わり、水曜日と金曜日に日中セッションが追加され、予選は全6回に変更されました。

 決勝日程も見直され、1000ccクラスと600cc/スポーツバイククラスをそれぞれ同日に集約。速度差によるライダーの感覚への影響を抑える狙いがあります。

 さらにニューカマー(初参戦選手)の規定も変更され、国内選手権や国際公道レース、またはマンクスグランプリ(TTレースと同じコースを走る8月実施のレース)の参戦経験が必須となりました。加えて、ニューカマーは、スーパーバイクTTとシニアTTへ参戦できないことになりました。

 続いて注目ライダーについて紹介します。

#1 ジョン・マクギネス(54歳)

 今年でTT参戦30周年を迎え、マイケル・ダンロップに最多勝記録を更新された現在も、トップ10入りを果たす実力派ライダーです。SNSアカウント名の「JM130」は、TTライダーとして初めて平均速度130mphを突破した記録に由来。今年もベテランならではの走りで130mph超えを記録することでしょう。

#3 ディーン・ハリソン(37歳)

 好調ぶりが際立っている、UKホンダのワークスライダーです。2025年にはスーパーストックTTでWウィン達成し、「CBR1000RR-R」で速さを見せつけました。BSB(英国スーパーバイク選手権)でも好調で、今年のTTではこれまで以上に有力な優勝候補の1人と言えます。

#6 マイケル・ダンロップ(36歳)

 TTレース最多の33勝をあげており、スーパーバイクTTでドゥカティ「パニガーレV4」投入を示唆していましたが、実戦では乗りなれたホンダ「CBR1000RR-R」に戻し、大排気量クラスでの勝利を得られるかが注目です。中排気量クラスでは圧倒的に強く、2024年と2025年のスーパーツインTTは完全制覇。さらに、コロナ禍以降のスーパースポーツTTでは無敗を続けています。

#7 ジョシュ・ブルックス(43歳)

 BSB(ブリティッシュスーパーバイク選手権)で2度のチャンピオンを獲得し、今季からタイ出身の女性でマン島の実業家ソンマイ・ナンタクーン氏率いる「DAO Racing」へ移籍。ホンダ「CBR1000RR-R」で1000ccクラスの表彰台を狙います。また、スーパースポーツTTでは、新たに結成されたアパレルブランド系チーム「Uggly & Co. Racing」からスズキ「GSX-R750」で参戦。スポーツバイクTTには出場せず、スーパースポーツTTへ注力する体制となっています。

#8 デイビー・トッド(30歳)

 その甘いマスクでアイドル的人気も去ることながら、実力十分。昨年はピーター・ヒックマンとの新たなチーム「8TEN RACING」を結成し、BMWからワークスレベルのマシンの供与を受けて磐石な体制を築きました。今年もこの2人がトップ争いの一角を担うと思われましたが、3月に参戦したアメリカのデイトナ200の予選で負傷、残念ながら今年のTTは参戦しないことになりました。

#10 ピーター・ヒックマン(38歳)

 TTレース14勝を誇り、昨年デイビー・トッドと新チーム「8TEN RACING」を結成し、BMWワークスレベルのマシンを投入。得意とする大排気量クラスで存在感を示しました。しかし、今季は怪我からの復帰途上という状況。一方、スポーツバイククラスではトライアンフの「ストリートトリプル765 RS」で上位を狙います。

#1 ライアン・クロウ(30歳)/カラム・クロウ(27歳)

 サイドカーのトップエントラントだった父ニック・クロウの息子たちで構成される兄弟チーム。鮮烈なデビューを飾り、目下快勝を続けている。連勝記録をどこまで伸ばせるかが注目です。

サイドカーTTに出場の#1クロウ兄弟チームのマシン。レギュレーションの範囲内で空力特性とフレームの見直しが施されていると思われる(写真/小林ゆき)
サイドカーTTに出場の#1クロウ兄弟チームのマシン。レギュレーションの範囲内で空力特性とフレームの見直しが施されていると思われる(写真/小林ゆき)

ハリウッド映画の制作も同時進行中

 今年のマン島TTレースでは、ハリウッドスターのブラッド・ピットが関わるフィクション映画の制作が進められています。Amazon MGM Studios製作による本作は、ブラッド・ピット率いるPlan B Entertainmentと、チャニング・テイタムの制作会社Free Associationが共同プロデュースを務める大規模プロジェクトで、映画『F1』と同様にハリウッドとストリーミング大手が組む形で企画されています。

 これと並行して、TTレースを題材にしたドキュメンタリー作品の制作も進行しており、レースの舞台裏やライダーの視点をよりリアルに描く試みとして注目されています。

 なお、マン島TTと映画の関係は長く、1935年に公開された『No Limit』(フィクション作品)は、モータースポーツを映画でプロモーションした最初の作品として知られています。2011年にはノンフィクション映画の『TT3D Closer to the Edge』も公開されています。

※ ※ ※

 変化を重ねながらも、マン島TTレースは今なお唯一無二の公道レースとして存在感を放ち続けています。

※原稿執筆後の5月28日に、TT主催者から今年のサイドカーTTレースは中止との発表がありました。

【現地画像】レースと並行して映画の撮影も!? 「マン島TTレース2026」の模様を画像で見る(15枚)

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Writer: 小林ゆき(モーターサイクルジャーナリスト)

モーターサイクルジャーナリスト・ライダーとして、メディアへの出演や寄稿など精力的に活動中。バイクで日本一周、海外ツーリング経験も豊富。二輪専門誌「クラブマン」元編集部員。レースはライダーのほか、鈴鹿8耐ではチーム監督として参戦経験も。世界最古の公道バイクレース・マン島TTレースへは1996年から通い続けている。

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