「スモールブロック」なのに主張の強さは「ビッグブロック」並み!? まさかの変貌を遂げたモトグッツィ「V7スポルト」に感心しきり
排気量853ccの空冷縦置き90度VツインOHV2バルブエンジンを搭載するモトグッツィ「V7 SPORT」は、2025年型で排ガス規制「ユーロ5+」に適合し、各部がアップグレードされました。いったいどんな乗り味なのか、試乗しました。
「V7」シリーズ第3のモデル
近年のモトグッツィは、スチール製ダブルクレードルフレームに空冷縦置き90度VツインOHV2バルブエンジンを搭載するネオクラシックシリーズとして、ベーシックモデルの「V7ストーン」と、旧車的な資質を強調した「V7スペシャル」をラインナップしています。
そして2025年から新たに加わった第3のモデルが、ほぼ半世紀ぶりとなる伝統の車名を冠した「V7スポルト」です。
ちなみに、1972~1974年にモトグッツィが販売した同名車が、既存のV7系をベースにしながら、プロダクションレースでの勝利を前提にして、シャシー関連部品を全面新設計し、パワーユニットにも数多くの新作パーツを投入していたのに対して、現代の「V7スポルト」はそこまで気合いが入ったモデルではありません。
とはいえ、シリーズ初の倒立式フロントフォークやダブルディスクのフロントブレーキ、他の兄弟車+1のエンジンモード(ROAD/RAIN+SPORT。2025年以降のV7シリーズは全車が電子制御式スロットルを採用している)、6軸IMUの導入で精度を高めたABSとトラクションコントロール、赤いステッチを施したシート表皮などに、心を惹かれる人は少なくないでしょう。

そんなV7スポルトの2026年型の価格(消費税10%込み)は168万3000円です。兄弟車の「V7ストーン」が152万9000円、「V7スペシャル」が159万5000円という事実を考えれば妥当な設定ではないかと思いますが、現代のミドルクラスのネオクラシックモデルの基準では、V7シリーズの価格はやや高めの部類に入ります。
兄弟車とは一線を画する運動性能
冒頭からこんなことを言うのもナンですが、現代の「V7スポルト」が導入した新機軸に対して、試乗前の私(筆者:中村友彦)は疑問を抱いていました。
と言うのも、既存のV7シリーズに好感を抱いていた身としては、倒立式フロントフォークやダブルディスクのフロントブレーキ、電子デバイスの充実化などに必然性を感じていなかったのです。

とはいえこのモデルで峠道を走った私は、予想外の運動性能に感心することになりました。既存のV7シリーズで峠道をムキになって走ると、「そろそろやめておこうかな……」という自制心が働くことが少なくないのですが、「V7スポルト」はコーナリングの限界が高く、1ランク上のスポーツライディングが堪能できるのです。
具体的な話をするなら、コーナーへの進入は他2モデルより融通が利きますし、コーナーの立ち上がりでは頭のいいトラクションコントールを信用して、深くバンクした状態から思い切ってアクセルが開けられます。
また、SPORTモードでスロットルを開けた際のエンジンのシャープで軽快な吹け上がりも、おそらく他2モデルでは味わえないものでしょう。
もっとも、絶対的な速さは前後17インチのラジアルタイヤを履く現代的なミドルスポーツネイキッドには及びません(V7シリーズの前後タイヤはバイアスでサイズはフロント18/リア17インチ)。
ただし、今回の試乗でさまざまなタイプの峠道を走った私は、サーキットのような見通しがいい良路でない限り、「V7スポルト」が現代的なミドルスポーツネイキッドに遅れを取ることはないんじゃないか……と感じました。
そういった事実を考えると、このモデルの登場でV7シリーズの間口は広がったのです。
既存のモデルにも捨て難い魅力はあるのですが、「そろそろやめておこうかな」という自制心は、決して悪いことではなく、運動性能に物足りなさを感じていたライダーにとって、「V7スポルト」は最適解になり得るでしょう。
往年の「ビッグブロック」を思わせるフィーリング
さて、まずは「V7スポルト」ならではの特徴を記してみましたが、今回の試乗で私が最も感心、いや、感心を通り越して大きな驚きを感じたのは、2025年型で行われたシリーズ全車に共通するパワーユニットの刷新です。

と言っても、2025年型で行われたパワーユニットの刷新の主な目的は、新しい排出ガス規制である「ユーロ5+」への適合です。なので最高出力が65psから67.2psに、最大トルクが7.4kg-mから8.0kg-mに向上し、最大トルクの95%を3500rpmで発揮するという広報資料を読んでも、私は特に期待はしていませんでした。
ところが実際のパワーユニットは、853ccの排気量や84×77mmのボア×ストロークが変わっていないにも関わらず、一発一発の燃焼感が強くなり、排気音の重厚さが増し、往年の「ビッグブロック」に通じる鼓動感を獲得していたのです
念のために記しておくと、現代のV7シリーズのパワーユニットは、1977年型「V50」に端を発する「スモールブロック」の発展型です。
ただしその結果として、縦置きクランク特有のトルクリアクション(V7シリーズの場合はスロットル・オンで車体が右に傾こうとする)は大きくなった気がしますが、だからと言ってライディング中に気になるほどではありません。
いずれにしても、往年のビッグブロックを思わせるフィーリングの復活は、昔ながらの味わいを欲するライダーにとっては歓迎するべき要素でしょう。

厳しい排出ガス規制に適合しながら、どうしてこんな特性が実現できたのか? モトグッツィはその詳細を公表していません。
とはいえ、今回の試乗で「V7スポルト」を体験した私は、やっぱり同社の開発陣には、伝統のOHV2バルブ縦置きVツインの魅力をちゃんとわかっている人がいるんだな……と感じました。
Writer: 中村友彦
二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。




















