電動バイクが公道レースで最高275km/hを記録! 挑戦の先にあるものとは?

イギリスとアイルランドの間に位置する島、マン島で開催されている公道レースに、2012年より電動レーサーバイク「神電(しんでん)」で参戦を続けている「チーム無限」が、2019年は6連覇を目指すことを発表しました。その先にあるものとは?

電気の力でどこまでいける? 電動バイクの未来がレース現場で磨かれている

 電動レーサーバイクでマン島TTレース「TTゼロ・チャレンジ・クラス」に挑み続けている「無限」(株式会社M-TEC)は、2018年のレースで最高275km/hを記録し、全長約60kmのマウンテンコース(市街地や住宅地を含む山岳コース)を平均約196km/hで走り抜け、2014年以降5連覇を達成しました。

東京モーターサイクルショー2019でアンベールされた「チーム無限」のマン島TT参戦マシン「神電八(SHINDEN-HACHI)」

 1907年から続くマン島TTレースは、毎年5月最終週から6月にかけて開催される、島の一般公道を利用したロードレースです。1959年にはホンダが参戦し、日本のレース文化のスタートの地としても知られています。コースは200以上のコーナーと400mの高低差があり、滑らかなレーストラックとは異なる路面が特徴です。

 無限の電動レーサーバイク「神電(SHINDEN)」は、2019年型で8代目となり、すべて無限の自社開発、自社製品によるものです。無限は2019年3月に開催された東京モーターサイクルショー2019にブース出展し、最新の電動レーサーバイク「神電八(SHINDEN-HACHI)」をアンベール、2019年のマン島TTレース参戦体制を発表ました。

 レースに向けてさまざまな苦難を乗り越え、2014年以降5連覇を成し遂げ、目標の平均車速120マイル(約193km/h)を超えたことなど、チーム無限EVプロジェクトにかける思いを、初号機からテストライダーを務める宮城光氏は以下のように言います。

「電気は未知への取り組みです。レシプロ(燃料をエネルギーにピストンの往復運動を回転運動として出力する原動機)はすでに技術開発が進み、成熟の域まで達しようとしていますが、電気は違います。いまこうしている間にも、まったく新しい技術が生まれているかもしれないのです。それはこれまで我々が取り組んできたことを覆してしまう可能性も大いにあり得ます。そのような世界で試行錯誤を繰り返し、技術を高め、磨いていく。チーム無限の挑戦には意義があり、やりがいがあるのです」

コンセプトからプロトタイプ、そしてプロダクトへ

 東京モーターサイクルショーへは2度目の出展となる無限ですが、「神電八」の発表につづき、電動モトクロッサー「E.REX PROTOTYPE(イー・レックス・プロトタイプ)」がアンベールされました。2017年の東京モーターサイクルショーで展示されたコンセプトモデル「E.REX」の進化形となり、「神電」からなるEVプロジェクトの次のステップとして掲げられたものです。

東京モーターサイクルショー2019で発表された「無限」の電動モトクロッサー「E.REX PROTOTYPE」

 電動モトクロッサーはホンダ(本田技研工業株式会社)との共同研究で推進され、バッテリー・パワーユニットを無限が担当しています。そして同会場のホンダのブースでも、電動モトクロッサーのプロトタイプ「CR ELECTRIC PROTO(エレクトリック・プロト)」が公開されました。神電に続くプロジェクトに、宮城光氏は以下のように言います。

「電動化によりクラッチワークが不要になります。オフロードコースは深いわだちや起伏が激しい状況で、ライダーは全身でバランスをとりながら左手でクラッチ操作、左足でシフトチェンジをおこなっています。それが電動ではギアの選択をすることもなく、スロットル操作ひとつで最大トルクを引き出せます。ライダーが走りにより集中できるため、これまで経験したことがない、違う次元の走りが生まれようとしているのです」

東京モーターサイクルショー2019で発表されたホンダの電動バイク「CR ELECTRIC PROTO」

 また宮城氏は、マシンの完成度を高めることでコンセプトからプロトタイプへと進化し、そしてプロダクトへと進む兆しが見えてきた、とも言います。現段階では特別な人しか乗ることができない電動レーサーバイクですが、神電の技術が、より現実味を帯びてきたと言えるでしょう。

「無限」の挑戦には文字通り上限がなく、いまも進化を続けていることがうかがえます。2019年マン島TTレースでの活躍にも注目したいところです。

【了】

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