いったいどうして? 暑くてつらくて、大忙しの鈴鹿8耐に監督・メカニックが参戦する理由

2019年7月26日から28日の3日間にかけて、鈴鹿サーキットで鈴鹿8時間耐久レースが開催されました。この8時間という長丁場の1戦を戦うために、チーム監督やメカニックはかなりの期間をかけて準備を行い、レース当日のピット作業では小さなミスも許されません。

マシンをさわるピットクルーは耐火または綿スーツを着用。ピットロードではヘルメットも

 カワサキ・ホンダ・ヤマハと3大バイクメーカーのワークスチームが、8時間休むことなく接戦を繰り広げた「2018-2019 FIM世界耐久選手権最終戦 鈴鹿8時間耐久ロードレース」(以降 8耐)。

 トップを快走していたカワサキのジョナサン・レイ選手がラストラップで転倒し、赤旗終了という展開を迎え、見ていた全ての人を驚かせる衝撃のラストとなりましたが、この8耐で結果を残すためにはライダーのスキルだけでなく、ピット作業の早さや正確さも重要です。

 そして、そのピット作業を担当するメカニックには、耐火または綿スーツとヘルメットの着用が義務付けられているので、真夏の鈴鹿では拷問と言える暑さとなります。

耐火スーツとヘルメットを着用したピットクルー

 また、転倒やマシントラブルなど、いつ何が起こるか分からない状況に迅速に対応するためには監督・メカニック共に、8時間フルで気を抜く事はできません。

 真夏の鈴鹿サーキットで耐火スーツを着用し、8時間ほとんど無休で気を張り続ける8耐に、彼らは何故参戦するのでしょうか。

●Honda Asia-Dream Racing with SHOWA 監督:玉田 誠 氏

Honda Asia-Dream Racing with SHOWA 監督:玉田 誠 氏

 ライダーとしても9回の8耐参戦経験を持つ玉田氏は、監督としても今年で6回目。合計で15回参戦という、8耐マスターです。そんな玉田氏が、立場を変えてまで8耐に参戦し続ける理由は、どこにあるのでしょうか。

「ライダーの時は勝ったことが無かったので、最高位が2位なんですよ。だから1回勝っておきたくて、しつこく爺さんになるまで出続けたけど……。

 8耐って他の耐久レースと比べても、特別なレースだし。8時間の耐久と言うより8時間のスプリントレースなので、僕の中に耐久レースというイメージは無いんですよ。8時間ぶっ続けのスプリントレース。なかなかこういうレースは無いし、魅力がすごくあるんですよね。

 監督になってからの8耐はライダーの時の数十倍大変で、スタッフの人数も多いからチームをしっかりまとめなきゃいけないし、このために何か月も、ずっと前から準備をしてきたけど、それが1つの判断ミスで一瞬にしてパーになるレースだし、そのプレッシャーもあるし。だからライダーの時より緊張するし。だって、ダメだったら全責任は俺にあるしね。

 しかもこのチームは結果ももちろん求めるけど、ライダーとメカニックを育てるための育成チームでもあるから。

 だから、この8耐など世界のライダーが走るレースに参戦することで、今の自分たちのレベルはどこにあるのかということを確認しながら次の方向性を決める意味もあります」。

●Honda Asia-Dream Racing with SHOWA チーフメカニック: モハマド・レズアン・ビン・カミス氏

Honda Asia-Dream Racing with SHOWA チーフメカニック: モハマド・レズアン・ビン・カミス氏

 メカニックとしては2回、データ担当として1回、チーフメカニックになって2回と、通算5度目の8耐参戦となるカミス氏。普段はアジアロードレース選手権でメカニックを担当しているそうなのですが、8耐に参戦し続ける理由について次のように話します。

「8耐は、3人のライダーが1台のマシンで走るので、ライダー3人のそれぞれのセッティングを考慮して、3人に一番いいセッティングを見つけなくてはいけません。

 それはとても難しいことですが、私にとってはとてもいいチャレンジです。だから、ずっと参戦し続けたいと思っています」。

●TONE RT SYNCEDGE4413 監督:山下祐 氏

TONE RT SYNCEDGE4413 監督:山下祐 氏

 純粋なプライベーターとしてチームを立ち上げ、監督として8耐に参戦したのは今年で5回目。全日本ロードレース選手権 GP-MONOクラス チャンピオンという経歴も持つ山下氏が、チームとして8耐に参戦し続ける理由をこう話します。

「1つには、今の日本のバイクのレースでスポンサーにとって最も魅力的なのが8耐だから。全日本をやっているだけだと、アピールが足りません。

 そのため、うちのチームは8耐で結果を残すためには、全日本のJSB1000に参戦していた方が有利であるというパッケージで、企業からスポンサードを得ています。

 今の日本のレースは間違いなく8耐を軸に動いているから、チームとして存続していくためには8耐をやらないのは厳しいかな。

 あと、チームとして注目を集めるとか、なんらかのリザルトを残していかないと、競争だから埋もれていくでしょ? そうなると、どんどんどんどん苦しくなって行っちゃう。

 もちろんやることも苦しいんだけど、引くも地獄進むも地獄という感じですよね。じゃあどっちを選ぶかというと、目立ってやろうと思う。

 そのために企画をいろいろと立てて、うちはTONEというバイクと全く関係はないけどすごく親和性の高い“工具”のメーカーがメインスポンサーで、ピレリタイヤを履かせたBMWのマシンを走らせている。他のメーカー系列のチームからすると、考えられない組み合わせじゃないですか? そういった、独自のことをやりたいんです。

 チームを立ち上げたコンセプトが、組織運営だったり、メカニックとしての技術向上と証明だったり、みんなそれぞれの力試しの場として始めたので、みんながそれぞれ独自の活動ができているということがやり甲斐ですね」。

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 経験やチャレンジ、力試しやチーム存続のためなど、さまざまな理由で8耐に参戦し続ける監督やメカニックたち。

 彼らが参戦し続ける理由を聞いていると、立場や見ている方向性は違っても、鈴鹿8耐が特別なレースであることは共通しています。

 現在の日本のバイクレースの中心と言っても過言ではない鈴鹿8耐。来年は、いったいどんなドラマを見せてくれるのでしょうか。

【了】

鈴鹿8耐に参戦するチーム監督やメカニックを画像でチェック

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