我が家のモンキー50君の役割は、人々の命を救う事!! ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.15~
災害に直面した時に購入を決めたホンダ「モンキー」。燃費も良く機動力のあるモンキー君がいれば何とか命だけは救ってくれる。
災害をキッカケにモンキー50の購入を決めた理由とは?
僕が丘の上の家に越してきて15年。そのあいだに経験した災害は、2011年の東日本大震災と9月9日に関東を直撃した台風15号である。実は、災害とわがモンキー50君は深く関わりがある。

東日本を津波が襲ったその日、震源地から遠く離れているはずの自宅も電気が落ちた。街は真っ暗闇に包まれた。東電と政府はメルトダウンをひた隠しにしつつも放射能を放出しつづけていた。
災害から数日すると、東日本各地の甚大な被害が報道され始めた。水を求めて給水車に並ぶ人々や、非難所に身を寄せる人々、あるいは小さな菓子パンを求めて配給の列に立ち尽くす人々の姿が、テレビを通じて僕の元に届けられた。

ある一人の男性に僕の目がとまった。一人のスーパーカプに乗る老人が、被災した家屋や給水所を忙しく駆けまわり、安否を気遣っていたのだ。その老人の正義感が輝いてみえたし、スーパーカブの機動力も頼もしかったのである。
「バイクを買おう」
迷う必要はなかった。
僕の自宅は丘の上にある。そんな袋小路に自衛隊の給水車がやってくるわけがない。たいがい麓の小学校や公園である。つまり、腹が減り、喉が乾いたら、飢えを凌ぐために下りで10分、上りで20分のこの坂を往復しなければならないのである。水の比重はほぼ1g/cm3だから、20リッターのポリタンクに満たしたい水は20kgの重みがある。それを背負って往復するのはつまり、地獄坂を意味する。心の臓がやられるか、足腰が弱って転げ落ちるか、その両方になる危険性がある。そんな立地にあるわが家には、原付きバイクは不可欠なのである。
「そうね、そんな時には便利かもね」
バイク購入に反対していた妻も納得した。
電気が遮断されても、水道管が破裂しても、あるいは備蓄の食料が空になっても、モンキー君がいれば何とか命だけは救ってくれるはずなのである。

「でも、モンキーでなければならない理由は何かしら・・・。スクーターであれば煩雑なクラッチ操作もないんでしょ・・・」
いつまでモンキー君をかばいきれるか・・・。
【了】
Writer: 木下隆之
1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。