カワサキ「W800 STREET」は欲張り? 伝統のフォルムと乗り味に現代的要素と運動性能をミックス

1966年にカワサキ「650W1」が登場以来、半世紀以上にわたる「W(ダブル)」ブランドの血脈は「W800シリーズ」として3機種ラインナップされています。そのなかで全身をブラックアウトし、現代的なアレンジを加えたモデルが「W800 STREET」です。

伝統美に現代的なエッセンスを融合させた「STREET」

 長きに渡り、根強いファンに支えられているカワサキ「W(ダブル)」シリーズ。最新進化形の「W800(ダブル800)」シリーズは3モデルがラインナップしています。

カワサキ「W800 STREET」に試乗する筆者(青木タカオ)

 まず、フロントホイールを大径19インチとし、クロームパーツを多用した昔ながらのレトロフォルムとする「W800」が、言うならばスタンダードという位置づけです。東京モーターショー2019で初披露され、最後発での登場となりました。それに先行して登場したのが「W800 STREET(ストリート)」と「W800 CAFE(カフェ)」という2つのバリエーションモデルです。

 今回は「W800 STREET」をクローズアップしつつ、3機種の相違点などを整理してみます。基本的にダブルクレードルフレームやベベルギア駆動のSOHC4バルブ並列2気筒エンジンは共通で、異なるのは外装や細部のフィニッシュです。以下にまとめてみました(左から「W800 STREET」「W800 CAFE」「W800」の順)。

■エンジンカラー
ブラック、ブラック/クローム、シルバー
■ホイールサイズ
前後18インチ、前後18インチ、F19インチ/R18インチ
■リムカラー(アルマイト)
シルバー、ブラック、シルバー
■ハンドルバー
アップライト・ブラック、クラブマンスタイル・ブラック、スタンダード・クローム、
■シート
ロープロファイル、カフェ、タックロール
■前後フェンダー
新デザイン・塗装、新デザイン・塗装、スチール、クロームメッキ

「W」ブランドの始祖カワサキ「650W1」(1966年)

 W800 STREETは、ネオクラシックやレトロモダンなどと呼ばれる、往年の名車の面影を残しつつも現代的なエッセンスを遠慮なく取り込んだ、新ジャンルのバイクです。

 伝統のフォルムを忠実に再現したのではなく、随所に現代的解釈が見られ、懐古主義とは違うことがわかります。

 重要なデザイン要素となっているのが、ふっくらとした曲線美を魅せる燃料タンクでしょう。オーソドックスなエンブレムは取り外され、「W」のロゴがモダンな直線上に描かれました。

高次元な走りを実現しつつ、らしさは失わず

 ライディングフィールは、ゆったりと大らかなハンドリングとなるフロント19インチに比べ、軽快感やクイックさが前後18インチとしたことで際立っています。屈強な50mm角断面のバックボーンを用いて新開発された高剛性フレームとの相性も良く、落ち着きがあって安定志向のステアリングフィールです。

カワサキ「W800 STREET」

 硬めのスプリングと剛性を高めたアンダーブラケットを持つ、インナーチューブ径41mmのフロントフォーク、高剛性スイングアームも相まって、現代的なスポーツネイキッドへと進化しています。ただし、タイヤはバイアスだということを忘れてはなりません。

 走りが現代的になったとはいえ、上半身の起き上がった堂々たる乗車姿勢を生むアップライトなハンドルバーや、乾いたサウンドを放つトラディショナルな2本出しマフラー、360度クランクのバーチカルツインエンジンがもたらす鼓動感あるテイスティな回転フィールなど、“W(ダブル)らしさ”は失われていません。

 ハンドルは「W650」時代のアップハンドル仕様と同形状です。マフラーは心地よいと感じるようサウンドチューニングを入念におこない、2気筒エンジンも低回転域における力強いレスポンスにこだわり、クラシックバイクに乗るのとよく似た喜びを感じさせてくれます。

排気量773ccの空冷並列2気筒SOHC4バルブエンジンは「W800」シリーズ共通

 最大トルクを4800回転で発生する低中速重視のトルクフルなエンジンは、日本の田舎道をノンビリ流すのに最適ですが、アシスト&スリッパークラッチも搭載し、急激なシフトダウンにも対応するので攻め込んだ走りも楽しめます。

 サウンドを耳にゆっくり走るのもいいし、アグレシッブなライディングに夢中になるのも醍醐味と言えるでしょう。

3兄弟となって、それぞれの役割が明確に

 さらに、前傾姿勢でスポーティに乗るCAFEも選べるW800シリーズは、3兄弟としたことで、強力な布陣となったことは言うまでもありません。そのなかで、W800 STREETは次世代の「W」を具現化した中心的存在だと思います。

「W800」シリーズ共通の直径170mm大径LEDヘッドライト内部は6室に分かれている凝ったつくり(4室がロービーム、2室がハイビーム)

 昔ながらの面影やゴージャスさを求める人には「W800」、カフェカスタムで既成概念にとらわれずスポーツライディングを追求したい人には「W800 CAFE」、そしてレトロムードの中で進化した走りや、トレンドも反映した最新スタイルを、という欲張りな人には「W800 STREET」がオススメです。

 各モデルの価格(消費税10%込み)は次の通りです。いずれもETC2.0車載器キット、ヘルメットロックを標準装備します。

「W800 STREET」101万2000円
「W800 CAFE」113万3000円
「W800」110万円

【了】

【画像】カワサキ「W800 STREET」

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Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

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