“ナナハン”でひたすた走りを追求!? ヤマハ「XJ750E」は“空冷直4”のスーパーネイキッドだった!!

ヤマハは1980年に国内へ並列4気筒エンジンを搭載する「XJ」シリーズを投入し、翌1981年に登場した「XJ750E」はクラス最高となる70PSのパワーと215kgの軽量な車重で走りを追求し、「ナナハン新時代」への幕開けとなりました。

スリムでコンパクトな並列4気筒エンジン搭載

 1970年代は、国産4メーカーが4気筒エンジンの大型バイクを開発し、世界トップのバイク生産企業へと成長した時代でした。

 その中で、ヤマハは1955年の創業から15年ほどは2ストロークエンジン車だけをラインナップしてきました。

 最初の4ストロークエンジン車は1970年の「XS1」です。エンジンはそれまでの英国車に倣った2気筒でした。

 1975年からは3気筒の「GX750」、単気筒の「XT500」、4気筒の「XS1100」といった第2世代を次々と発売し、開発力と生産経験を積み重ねてきました。

 ヤマハ創立25周年となる1980年に、4ストローク車の第3世代となる「XJ」シリーズが投下されます。国内の「XJ400」や「XJ650スペシャル」の他にも、同時期に欧州でスポーツモデルの「XJ650」が投入されていました。

 その「XJ650」の排気量を拡大し、1981年に国内発売されたのが「XJ750E」です。当時、国内で販売できるバイクの最大排気量が750ccなので、「XJ750E」はヤマハ国内のフラッグシップ的なモデルでした。

1981年に登場したヤマハ「XJ750E」は、排気量750ccクラスの「軽量、コンパクト、高性能」を追求した並列4気筒エンジンを搭載
1981年に登場したヤマハ「XJ750E」は、排気量750ccクラスの「軽量、コンパクト、高性能」を追求した並列4気筒エンジンを搭載

 ヤマハのエンジニアは「XJ750E」のベースとなる「XJ650」開発の際に、1000ccを超えて大型化していくビッグバイクの潮流の中で「人間がコントロールするのにちょうどよい性能のバランス」があると考え、「軽量・コンパクト・高性能」という開発思想を再確認します。

 新設計された「XJ650」の4気筒DOHCエンジンは、スリムでコンパクトなものでした。キーポイントは、それまでエンジン横に張り出していた、重くかさばる発電機を小型化し、シリンダー後部にレイアウトしたことです。

 それ以外にも、ヤマハ開発陣のアイディアをフルに投入し、新しい内部構造やタイトな部品で設計されたエンジンは2気筒並みの幅に収まるほどスリムでした。

 ユニット全体の重量が中心部に近くに集中し、走行時の安定性が向上。また発電機の張り出し分の幅を詰めたエンジンは深いバンク角も確保しています。

 コンパクトなエンジンはフレームへの搭載も自由度を増し、最適な重量配分となって低いシート高(780mm)のままキャブレターや容量十分ななエアクリーナーを配置できました。

 順調に仕上がった「XJ650」でしたが、国内向けの「XJ750E」は、開発初期はパワーバンドが狭くなってしまいました。そこで排気管の集合部分を工夫することで高回転伸びを獲得しています。

「XJ」シリーズに採用された注目すべき新技術に、「Y.I.C.S.(ヤマハ・インダクション・コントロール・システム)」があります。エンジンの燃焼室直前の吸気通路に並行して設けた副吸気通路が、「Y.I.C.S.」で4気筒の各吸気通路と繋がっています。

 それぞれの気筒の圧力を利用して副吸気通路からジェット噴流が飛び出し、燃焼室に混合気の渦巻きを発生させ、燃焼効率を高めるというものでした。

 シンプルな構造ですが特に中低回転域での効果は大きく、また20%以上の燃費性能向上がありました。

比較的オーソドックスなメーターまわり。タコメーターは電気式で9500rpmからレッドゾーン
比較的オーソドックスなメーターまわり。タコメーターは電気式で9500rpmからレッドゾーン

 当時は新しいメカニズムは、ユーザー達の注目の的でした。「Y.P.V.S.」や「Y.E.I.S.」のように、アルファベット4文字が車体のどこかに表記されていました。「XJ750E」の場合はエンジンのシリンダーヘッドやクランクケースカバーに、「Y.I.C.S.」と明記されています。

 新メカニズムのアルファベット4文字は、日本でも海外でも覚えやすく、ブランディングもしやすいためヤマハに限らずどのメーカーでも(あるいは4輪車も)一般的でした。

 車体のデザインは1970年代までのクラシックフォルムから、1980年代のモダンスタイルへ変わっていく過渡期で、ヤマハの名車「RZ250」と共通した個性が感じられます。

 ワインディングロードを軽い身のこなしで疾走する「XJ750E」は、従来の「迫力ある車体で威風堂々」から、「精悍なスタイルで軽快に」と、ナナハン(排気量750ccクラスの大型バイク)のイメージを変えたモデルでもありました。

 その後、「XJ650ターボ」や燃料噴射+フルカウルの「XJ750D」などの兄弟車を生み出し、1984年に第4世代の「FZ750」へとバトンタッチします。

 ヤマハ「XJ750E」(1981年型)の当時の販売価格は56万円です。

■ヤマハ「XJ750E」(1981年型)主要諸元
エンジン形式:水冷4ストローク並列4気筒DOHC2バルブ
総排気量:748cc
最高出力:70.0ps/9000rpm
最大トルク:6.2kgf・m/7000rpm
全長×全幅×全高:2175×725×1135mm
シート高:780mm
始動方式:セルフ式
燃料タンク容量:19L
車両重量:214kg
フレーム形式:ダブルクレードル
タイヤサイズ(前):3.25H19-4PR
タイヤサイズ(後):120/90-18

【取材協力】
ヤマハ・コミュニケーションプラザ(静岡県磐田市/ヤマハ発動機本社隣接)
※本記事中の写真は許可を得て撮影しています

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Writer: 柴田直行

カメラマン。80年代のブームに乗じてバイク雑誌業界へ。前半の20年はモトクロス専門誌「ダートクール」を立ち上げアメリカでレースを撮影。後半の20年は多数のバイクメディアでインプレからツーリング、カスタムまでバイクライフ全般を撮影。休日は愛車のホンダ「GB350」でのんびりライディングを楽しむ。日本レース写真家協会会員

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