ダンロップの新型ツーリングタイヤ「ROADSMART IV(ロードスマート・フォー)」とは?

ダンロップのツーリングタイヤ「ロードスマート」シリーズが5年ぶりに刷新、2020年春にデビューします。新型「ROADSMART IV(ロードスマート・フォー)」はどのようなタイヤなのでしょうか。

人気のツーリングタイヤが5年ぶりに刷新

 2輪タイヤの専門店で、スタッフの方に聞いたことがあります。ツーリングタイヤを選ぶ人は「タイヤにうるさい」と。大切なバイク、休日の大切な時間を走ることで楽しむ趣味ですから、うなずけます。

2007年の登場以来4世代目となる新型「ROADSMART IV(ロードスマート・フォー)」(写真は前輪用)

 そんなツーリングライダーに人気が高いダンロップの「ロードスマート」シリーズは、前後17インチのプレミアムラジアルセグメントに加え、一部18インチもカバーするサイズをラインナップします。

 もちろん、国産、輸入モデルで250kg超級モデルに向けた「GT」スペックも用意し、ファンの心を掴んで離しません。そのロードスマートシリーズが2020年春、生まれ変わります。

 2007年の登場以来、4世代目となる新型「ROADSMART IV(ロードスマート・フォー)」は「ツーリングタイヤの理想を追求したニュースタンダード」を目指し、鍛え直されています。

先代(ロードスマート・スリー)よりもさらに総合性能を上げてきた「ROADSMART IV(ロードスマート・フォー)」

 開発陣は「なぜライダーはツーリングに出るのか? 冬には寒く、夏には暑い。雨が降れば濡れ、ツーリングは時に苦行のようなのに……」と自問し、それでも走る理由はたったひとつ「モーターサイクルが楽しいから」と結論付けします。

 ならば「ツーリングの悦びが得られるタイヤを開発しよう」となり、その要素を4つに分けました。

・タイヤがもたらすハンドリングの最適化で走りの「興奮が、続く」。
・天候や季節の変化、摩耗に負けないタイヤをで「走りが、続く」。
・タイヤの快適性を高め、長いツーリングで疲労を低減。走り続ける「気持ちが、続く」。
・ライフの中で現れる前輪の偏摩耗や、ライフの進行とともに起こる後輪のグリップダウンを抑制する技術を盛り込んだ「性能が、続く」。

 当たり前のことをさらに高いレベルに引き上げる開発が始まります。

興奮が、続く。

 このパートでは2輪タイヤが持つ特徴のひとつ、ラウンドした形状を見直します。前後輪のタイヤ断面形状を見直しや、トレッド面の溝の深さ、形状などの最適化で、直進時からコーナリングを開始する付近の軽快さを出しています。その軽快さの指標である操舵力の重さは、バイクのバンク角40度付近まで軽くなるように仕立てられました。

気持ちが、続く。

 さらに乗り心地をよくすることで疲労の低減を狙います。前輪では路面に接地するトレッド面の下にある基礎の部分を、スチールメッシュからアラミド繊維で作られたものに変更しました。タイヤの接地面が突起を乗り越えたとき、たわむ面積を増やして吸収する構造です。

前後ともに路面からの衝撃吸収力をアップ

 リアタイヤでは、タイヤがホイールにはまる部分、ビードからサイドウォール周辺の吸収力を増した内部構造とし、タイヤ全体が上下方向にたわむことで路面からの入力を吸収します。

 サンスペンションに例えると、ストロークを伸ばしたイメージです。ドンとライダーに衝撃を伝えないようにする手法で、「疲労科学研究所」が調査した比較(ロードスマートIIIとIV)では、一般道、テストコースとも疲労ストレスの軽減がデータに表れています。

性能が、続く。

 新品時の性能をできるだけ長く、という意図も含まれます。バイクのタイヤはどうしても偏摩耗が起こります。そのメカニズムは、タイヤ接地面の中央が一番外径が大きく、タイヤのサイドに向かって外径が小さくなります。

 つまり、直進時でも中央とその隣では外径差が発生していて、それが長い距離を走るうちに偏摩耗として現れる、ということなのです。偏摩耗の進行はフロントタイヤの曲がり出す動きをダルにし、ハンドリングが悪くなります。

 偏摩耗対策としては、タイヤの溝の形状の変更など雨天時、排水性を落とさず見直されています。また、後輪には「PCL(パフォーマンス・コンパウンド・レイヤー)」という手法を用い、接地面のトレッドゴムの下に発熱性の良いゴムを配置し、摩耗しても暖まりをよくすることでタイヤのグリップを補助し、高い性能を維持するメカニズムとしています(タイヤの回転時に生じる変形エネルギーとして発熱)。

走りが、続く。

 最後の要は、タイヤとの接地面であるトレッドのゴムです。その配合を刷新することで、雨天時のグリップ向上、そしてライフの向上をも果たしています。

偏摩耗を抑制しつつ排水性も維持する新型「ROADSMART IV(ロードスマート・フォー)」のパターン(前/後)

 発表されたテストコースでのデータを引用すると、ウエットブレーキ(50km/hから減速。40km/hから20km/hまでの制動距離を計測したデータ)テストでは、制動距離が10%短縮しています。また乗り手、車両の組み合わせなどをシャッフルしながら行った5000kmのロングランテストでは、フロントが23%、リアが26%も従来モデルより向上したとあります。

※ ※ ※

 4つの「続く性能」を開発コンセプトに掲げ、5年ぶりのモデルチェンジで登場した新型「ROADSMART IV」が、実際の走行ではどのような感触を示してくれるのでしょうか。期待が高まります。

【了】

ダンロップの新型ツーリングタイヤ「ロードスマートIV」とは?

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Writer: 松井勉

モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

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