ラリーストとレーサー、どっちの方が「イッてる」!? ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.47~

レーシングドライバーとラリードライバー、どちらも命がけでレースに挑むアスリートですが、ドライバーから見ると、生身の体でサーキットを走るライダーの挑戦には信じられないものがあるようです。

結局、ドライバーよりライダーの頭のネジの方が……?

 先日、懇意にしているラリーストと“頭のネジが狂っている度”の議論になった。「レーサーの方がクレイジーでしょ」「いやいや、ラリーストの方が狂ってる」と……。

峠の狭いワインディングを激走するラリーストはクレイジーなのか?

 僕(筆者:木下隆之)はラリーストこそイカれていると信じて疑わないでいる。海外のラリーを見れはそれは明らかだ。とくに、氷上ラリーのモンテカルロなど、命知らずでなければ、公道をあんな速度で攻められるわけがない。沿道が人だかりの中、カウンタージャンプするのだから、あれが人間であることが不自然である。

 友人「いや、水煙で視界が閉ざされているサーキットを、300km/hで接近戦するなんて、アホちゃう?」

 友人のラリーストは譲らないのだ。

 木下「いやいや僕ら(レーサー)は、自分の判断でアクセルを踏み込んでいる。自己責任でギリギリの走りをしているんだ。その点ラリーストは、助手席のコドラの読み上げたペースノートの指示に従ってブラインドコーナーに飛び込む。あれは信じられないね」

 僕にも反論があるのだ。

 やはりどう考えても、ラリーストは狂っていると思う。「この先右に曲がっているはずだから、アクセル全開でドウゾ……」なんて言われても、「間違っていたらコロスからな」って言い返してスロットル緩める。他人など信じられないのである。己の腕ですら信じられないのだから。

2020年シーズンも『BMW Team Studie』のレーシングドライバーを務める筆者(木下隆之、右から3人目)

 それでもラリーストは反論をやめようとしない。

 友人「あの速度でクラッシュしたら命が危ない。その点でラリーは、林道は木立に包まれているから、飛び込んだとしてもそれがクッションになるんだよ」

 そう言われても納得できるわけないのに、シャアシャアとそう言うのだ。 

 友人「ロールケージで守られているからね……」

 そうも付け加えた。ところが、そんな議論が口論になりかけた時、友人のラリーストがこう小さく呟いた。

 友人「でもね……」

 木下「なんだよ」

 友人「やっぱりライダーの方がアホだと思う」

 木下「……」

 友人「だって奴ら、生身の体だよ!? ハイサイドで路面に叩きつけられる。それでも挑むんだからね!」

 木下「ライダーって、鎖骨折りながらレースを続けるんだってさ」

 友人「……!!! バカじゃない?」

【了】

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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