レーシングドライバーかライダーか? 「クレイジー」トークは止まらない ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.51~

レーシングドライバーの筆者(木下隆之)から見ると、生身の身体でサーキットを疾走するライダーは“クレイジー”だと言います。お互いレースの世界に身を置く者同士、どのような違いがあるのでしょうか?

レーサー同士でも、クルマとバイクでは何かがズレている……

 レーシングドライバーの僕(筆者:木下隆之)が、全日本ロードレース選手権に参戦するライダーは“狂っている”という話をしていたら、かつて全日本で活躍していたY氏とのトークを思い出した。

生身の身体がレーシングスピードでクラッシュしたら、ただでは済まないことは容易に想像できる ※画像はイメージです

筆者(木下隆之)「ライダーって、骨折は日常ですよね」

Y氏「あぁ、ハイサイドを喰らったら、ただじゃ済まないからね」

木下「即、入院ですね」

Y氏「整形外科のドクターとはもう顔見知りだよ」

 ……頻繁に入退院を繰り返しているというのだ……。

木下「入院すると、レース復帰まで時間がかかりますね」

Y氏「そうなんだよ、だから僕はあらかじめ、骨をプレートで補強しておくんだ」

木下「骨を補強?」

 聞けばこういうことらしい。当時のY選手は、レース中の事故で左の鎖骨を折った。病院に担ぎ込まれて緊急手術、プレートで補強した。だがそれだけでは済まなかった。右側の鎖骨も補強したのだ。

レーシングドライバー(筆者:木下隆之)からすると、レーシングライダーの感覚にはついていけないことがある

 いずれレースで右側の鎖骨も骨折するだろうからと、あらかじめプレートを組み込んだというのである。骨折する前に、である。これがクレイジーでなくて、何が正常だというのか……。

Y氏「いやいや、鎖骨が折れると痛いんだよ」

木下「そりゃそうでしょ」

Y氏「もともと鎖骨はS字に湾曲している特殊な骨なんだ」

木下「それは知ってますよ。胸骨と肩関節をつないでいる骨ですから。胸の曲面に沿っていますね」

Y氏「だから、一度骨折すると回復に時間がかかる」

木下「僕は医者じゃないけれど、想像はできますよ」

Y氏「だから折りたくない」

木下「誰しもそうです」

Y氏「次のレースに間に合わなくなっちゃうから」

木下「だから?」

Y氏「あらかじめ補強しておくのだ」

木下「だったらレースを辞めれば?」

Y氏「せっかく補強したのに?」

木下「そういう意味じゃなくて……」

 まったく、(この)ライダーは狂っている……。

【了】

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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