踏切の棒が紅白って? 「開かずの紅白踏切」を山梨で発見 その謎に迫ってみた
踏切と言えば、黄色と黒の遮断棒が電車や列車が通る時だけ閉まるのが一般的です。ところが、踏切遮断機の棒がずっと閉まっていて、しかも棒が「紅白」という珍しい踏切を発見しました。どういう踏切なのでしょうか?
バイクは通行可? えらく手間と時間のかかる「手動踏切」を渡ってみた
踏切といえば、黄色と黒の縞々の棒が、ふだんは遮断機が上がっていて、電車や列車が通る時だけ閉まるのが一般的です。ところが、中央自動車道の河口湖線をバイクで走っていると、のどかな風景の中を貫く線路の踏切遮断機の棒がずっと閉まっていて、しかも棒が「紅白」という珍しい踏切を発見しました。

単線のローカル線なのに開かずの踏切? 何かをお祝いするため? いったいこれはどんな踏切なんでしょうか。気になったのであらためて現地を訪れ、調査してみました。
中央自動車道河口湖線に沿うように走っている富士急行線は、JR中央本線の大月駅から富士山駅、さらに河口湖駅を結んでいる鉄道です。都留インターチェンジの前後から河口湖方面に向けて、何ヵ所か赤白の踏切が見えていたので、都留インターチェンジを降り、とりあえず線路沿いを走れる道を探します。
高速道路の脇の道を大月方面に戻り、赤坂駅を目指して走ると……田んぼの間を通る、まるで舗装されたあぜ道のような細い道が線路を横切り、そこには紅白の遮断棒が下りたままの小さな踏切が設置されていました。
広めの道にバイクを停めて近づくと、人がどうにかすれ違えるぐらいの細い道幅の踏切でした。おそらく、もともとは地元の人が農作業をするために歩いて渡っていた道に踏切を設置したのでしょう。遮断棒はありますが、カンカンと鳴る警報器はありません。
周囲にはやたらと「止まれ」「左右確認」「あぶない」など注意書きの看板が目立ちます。その中の1枚を見ると「遮断棒を手で持ち上げて通行して下さい」という文字がありました。
つまりこの踏切、ずっと遮断棒が下りているのは、人が渡る時だけ手で棒を持ち上げて渡る仕組み……いわば手動踏切ですね。こんなシステム、見たことないので新鮮です。

そしてなんと、4輪は通行禁止ですが2輪と小型特殊は除外の標識、つまりバイクは通っても良いのです。これはぜひとも渡らねば、とチャレンジすることにしました。
今回はフルカウルの大型バイクということもあり、実際にバイクで渡ろうとすると道幅がとてつもなく狭く感じます。そしてもうひとつ問題が……自転車やスーパーカブ、原付スクーターぐらいなら、遮断棒をヒョイと持ち上げても何とか抜けられそうですが、大型バイクだとそうはいきません。
では一体どうすれば? 戸惑いながら注意書きをよく読んでみると、自転車やバイクなどは「遮断棒をフックに引っ掛けて上げたままの状態にして通り、渡り終わったら元の状態に戻して」とありました。
なるほど、と納得して渡り始めたものの、踏切の手前で一旦バイクを降り、左右を確認して遮断棒を2本ともフックに掛けて上げた状態にしてから、バイクに跨って左右を確認して線路を渡り、そこでまたバイクを降り、踏切に戻って左右を確認しつつ2本の遮断棒を元に戻すという……とんでもなく手間と時間のかかる作業でした。
しかも警報機がないので、いつ電車が近づいてくるかと警戒しながらの作業はドキドキして心臓に悪いのです。
富士急行線は新型コロナの影響で減便運転をしており、平日の昼間は1時間に上下計2本から4本程度しか運行していませんが、過去にも取材中にいつの間にか電車が近づいて来てあっという間に通り過ぎた、という経験をしたので、油断はできません。
バイクは渡って良いとはいえ、効率と安全を考えたら少し遠回りをしてでも、普通の踏切を渡ったほうがいいかもしれませんね。

この手動踏切について、富士急行の広報に聞いてみたところ、踏切警標(踏切を示す黄色と黒のクロスマーク)だけで列車の接近を知らせる装置がないものを『第4種踏切』と言い、それに手動の遮断棒を設置しているのは全国的にも珍しいのだとか。
富士急行の管内には28ヵ所存在し、道の幅に応じて遮断棒の長さが違ったり、赤色灯を装備している場所もあるそうです。
ちなみに、自動遮断機が設置されている、または踏切保安係が配置されているのを『第1種踏切』、一定時間に限り踏切保安係が遮断機を操作するのを『第2種踏切』、踏切警標と踏切警報機のあるものを『第3種踏切』といいます。
もともと富士急行の第4種踏切に遮断棒はありませんでしたが、事故防止の観点から横断前に一旦立ち止まり、安全を確認してもらうために2015年から設置が開始されたそうです。
当初、遮断棒はよくある黄色と黒のタイプでしたが、運転士からの視認性を高めるため、紅白に変更されたとのこと。当たり前ですが、何かのお祝いというわけではありませんでした。

遮断棒が上がったままだと安全確認のために電車が緊急停止を余儀なくされるそうで「バイクで渡ったら必ず遮断棒を元のように下げてください」とのことです。
全国的にもレアな存在の「手動紅白遮断棒付き第4種踏切」、富士山ツーリングの際に、ちょっと寄り道して探してみてはいかがでしょうか(くれぐれも眺める程度に)。
【了】
Writer: 野岸“ねぎ”泰之(ライター)
30年以上バイク雑誌等に執筆しているフリーライター。ツーリング記事を中心に、近年はWebメディアで新車インプレッションやアイテムレビューも多数執筆。バイクツーリング&アウトドアを楽しむ『HUB倶楽部』運営メンバーの1人。全都道府県をバイクで走破しており、オーストラリア、タイ、中国など海外でのツーリング経験も持つ。バイクはスペックよりも実際の使い勝手や公道での走りが気になるキャンプツーリング好き。









