モンキーやダックスが開拓したホンダ伝統のレジャー系進化版「グロム」が新型に!
乗り手の経験やライディングスキルなどを過度に問わない取り回し性のよい車体サイズで、モーターサイクルを操る楽しさを多くの人に提案してきたホンダの原付二種スポーツモデル『グロム』がモデルチェンジ。バイクジャーナリストの青木タカオさんが実車を見て跨って、進化ポイントを解説します。
ルーツをモンキーとするホンダ“レジャーバイク”の伝統
手軽に遊べる4ミニスポーツ『グロム』がモデルチェンジされ、新発売となります。12インチタイヤの足まわりをちっちゃな車体にセットし、エンジンは空冷4スト単気筒125cc。2013年に発売して以来、ビギナーや若者など幅広い層に支持され、サーキットに持ち込まれてワンメイクレースも開催されるほどに根強い人気のあるモデルです。

“レジャー系”と呼ぶに相応しい『グロム』。ホンダはオートバイに触れるキッカケとして、このジャンルを早くから開拓してきました。国内では1967年に発売した『モンキーZ50M』がその元祖でしょう。
前後ともサスペンションのないリジッドフレームに、5インチホイールの足まわりを組み合わせ、簡単に自動車のトランクへ搭載できるようハンドルはダイヤルを緩めて折りたためる構造に。横倒しを想定し、燃料排出コックなども備えていました。69年デビューの『ダックスホンダST50』や80年代前半の『モトコンポ』や『モトラ』もバイクファンには広く知られています。

2001年に登場し、4ミニカスタム界を牽引した『エイプ』を含め、いつの時代も若者たちのライフスタイルとともにある“遊び心”を小排気量バイクで提案してきたホンダ。2013年に登場して以来『グロム』もまた、その役割を担っているのです。
新作ロングストロークエンジンでパワーアップ!
かつてはクルマのトランクに収まるほど小さかったレジャーバイクですが、現代版ではハイスピード化された道路事情に合わせ大きくなり、あらゆる面でアップデートされています。

新型『グロム』ではまずエンジンが新作に。従来型ではボア52.4mm×ストローク57.9mmで排気量を124ccとしてきましたが、50×63.1mmのロングストローク設計とし、排気量は123ccとなりました。
フリクションロスを低減するオフセットシリンダーやローラーロッカーアームなどが採用され、圧縮比を9.3→10.0に向上。最高出力を9.8→10PSにアップし、WMTCモードも67.1→68.5km/Lと燃費もより優れ、トランスミッションは4→5速化されています。ロングストロークエンジンでより低中速のトルクが増し、街乗りでの走りがさらにキビキビしたものとなるのは間違いないでしょう。

フロントに120mm、リヤに130mmの極太タイヤを履く足まわりは、Y字スポークだったアルミ製キャストホイールを、5本スポークのニューデザインに変更。インナーチューブ径31mmの倒立式フロントフォークにシンプルかつ軽量なモノショック式のリヤサスペンション、角断面鋼管パイプのスイングアームが組み合わされ、ブレーキはフロントに220mm、リヤに190mmのシングルディスクを装着。1チャンネルABSが標準装備され、制動時の安心感を高めました。
“遊び心”あふれる塊感のあるスタイリングに
プロジェクター式だったヘッドライトはLED化され、カウル取付けボルト周辺には円形のガーニッシュを採用。ストリートでの存在感をより一いっそう際立たせたエクステリアとしています。きっと、都会の風景にも溶け込むでしょう。
コンパクトながら大型モデル同等に豊富な情報をライダーに提供するデジタルメーターは、新たにギアポジションやREVインジケーターを追加表示。中央で大きく速度を示し、タコメーターは左から横へ流れるバーグラフ式。燃料計や走行距離/平均燃費/時計なども見やすくディスプレイされます。

フューエルタンクは容量6.0Lを確保し、エアプレーンタイプのヒンジ付きタンクキャップを採用。脱着が簡単なボルトオンタイプのシュラウドが左右に備わるのも従来と変わりません。
意外とゆったりしたライポジで、しっかり操れる!
シート高761mmで、足つき性を不安視する必要はまったくなし。その一方でライディングポジションは意外とゆったりとしていて、身長175cmの筆者(青木タカオ)が乗っても窮屈ではありません。ニーグリップもしっかりでき、サスペンションもしっかりとコシがあって踏ん張ります。これまで何度も試乗してきましたが、侮れない運動性能があるからこそ多くのライダーを夢中にさせているのです。

他にないカタチで、どんなファッションやシーンにもよく似合うシンプルなデザイン。心が通じ合ったトモダチみたいに、新型もつき合えること間違いありません。今回は叶いませんでしたが、新型を試乗する機会が楽しみです!!
【了】
Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。