オーセンティックで万能で、カッコも良くて、乗ったら満点!? ヤマハ「XSR700」にあらためて乗る

ヤマハ「XSR700」は、レトロな外観に現代的な技術でロードスポーツを楽しめる性能を持ち、まるでカスタムバイクのようなディテールが特徴の大型ネイキッドバイクです。その走りを確かめてみました。

オーセンティックで万能で、カッコも良くて、乗ったら満点

 ヤマハのホームページで「XSR700」を探すと“スポーツヘリテイジ”というくくりになっています。そこには「SR400」(生産終了)や「BOLT」が属することから「ああ、XSR700ってレトロモダンね」と思ってしまった自分(筆者:松井勉)です。

ヤマハ「XSR700」に試乗する筆者(松井勉)

 しかし、開発ストーリーを見れば昔を懐かしむモデルではなく、必要なパーツがあるべき姿でデザインされていること、それをオーセンティック(正統派の、本格的な、などの意)としてデザインされたモデルであり、レトロモダンという時代的な感情は介入させていない、とキッパリ表現されています。カラーリングが往年のロードレースのヤマハファクトリーマシンに採用されていた赤/白/ゴールドだからといって時代もの、ではないのです。

「XSR700」はヤマハのスポーツネイキッド「MT-07」をベースに仕立てられています。シート高もわずかに上げたことでオーソドックスなロードバイク的なポジションを造り、そのポジション変更でライダーが感じる印象を重視して、アルミのハンドルバーをトップブリッジに固定するためのマウントブッシュラバーの硬さも「MT-07」から変更するなど、細かなチューニングが施されているのが解ります。

 タンクサイドのカバーやヘッドライトステーなど、各部に使われたアルミ製パーツも、ユーザーの心をときめかせるように仕上げつつ、周囲への馴染ませ方にもこれ見よがしではなく、その使い方が上手い! 91万6300円という価格(消費税10%込み)に所有感をしっかり満たします。

 また、ヘッドライト、テールライト、メーター、マフラーエンドなど印象的な丸モチーフを使うことで、ソコハカとなく70年代を香らせておいて、デジタル表示のメーターパネルやテールランプにLED光源を使うなど、表現される時代性はまさに今です。

排気量688ccの水冷直列2気筒DOHC4バルブエンジンを搭載

 搭載されるエンジンは「MT-07」と共用する排気量688ccの水冷直列2気筒です。90度位相のクランクを持ち、不等間隔爆発は鼓動を引き出すというよりもヤマハが唱えるクロスプレーンコンセプトに相応しいものとして設計されました。燃焼室で生まれる爆発から発生するトルクを、ライダーがダイレクトに取り出せるようなエンジンであること、往復運動や回転運動で生まれる慣性質量による変動が少ないもの、とされています。

 車重186kgという数値は、今や400ccクラスとイーブン。いや、250ccクラスとも同等かもしれません。しかしエンジンが持つ存在感はさすがに700ccクラス。アイドリングの音や鼓動感もクラスの違いを感じます。サバババっと乾いたサウンドで回転が上昇するエンジンは、発進から充実のトルクを生み出し、扱いやすさ抜群。充分な力なのに、分厚いとかドンとくるような過剰さは無く、あくまでスムーズです。

 コンパクトなポジションの「MT-07」と比較すると、着座位置が少し後方へ移動した分、ステップ位置を前に感じますが、バイクをしっかりと感じられる位置にライダーが座っている印象です。エンジンの特性と相まって、走り出せば自然と一体感が生まれました。

 市街地での走りは適度な安定感と持ち前の身軽さが良いバランスを乗り手に伝え、250ccクラス的なヒラリ感ではなく、ライダーのアクションとエンジン出力をバランスさせることでバイクの動きを引き出す乗り味で、軽快にも安定方向にも乗り手次第で引き出せるのが魅力でした。基本的には緩やかなハンドリングで、バイクが機敏で知らぬ間に乗り手がやる気モードスイッチを押される、というような刺激成分は低めです。

 ブレーキに関しても、制動力は高いのに初期入力のタッチもマイルド。握り込む、踏み込む力と量でコントロールが出来るタイプです。いずれにしても決定権を持つのはライダー、というトーンはここでも変わりません。

高速道路では風圧は感じるものの、一定速度でクルーズしやすい

 高速道路では、その排気量から余裕のクルーズができます。乗り心地もマイルド。ネイキッドバイクゆえ速度を上げると風圧がしんどいですが、それを圧して飛ばしたい! とまではエンジンも誘惑してきません。一定速でクルーズしやすいキャラクターです。もちろん、シフトダウンして加速したら追い越しなど瞬殺。奥ゆかしい高性能、とでも言いましょうか。

 ワインディングでは軽快さの中に安定感があり、適度な手応えを持った曲がり方をしてくれます。車体が軽いのに軽々しい素振りは見せません。それが走りの満足度にもつながります。たとえば、スポーツ性が高いモデルでは一般道の速度では逆にストレスが溜まりますが、それがないのです。

 ワインディングでライダーの気持ちが熱くなったとしても、期待に応えるハンドリングとブレーキ、そしてタイヤのグリップは持ち合わせていますし、伸び感のよいエンジンは、そうした場面で良質なスポーツライドを愉しませてくれます。

ゴールドの前後ホイールが印象的なヤマハ「XSR700」カラー:ラジカルホワイト

 結論を言えば、「XSR700」はどの場面でもバランスが取れた走りをしてくれるバイクです。優等生でありながらそれを自慢せず、物静かな印象。このほど良さはこれから大型モデルに乗ろうというライダーにはもちろん、排気量を極めたけどプリミティブなバイクを探している、というライダーに自信をもってオススメできる1台です。

【了】

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Writer: 松井勉

モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

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