【MotoGP第12戦イギリスGP】世界戦に挑む中上貴晶選手、終盤のリアタイヤのグリップに苦戦し13位

2021年8月29日、MotoGP第12戦イギリスGPの決勝レースがシルバーストーン・サーキットで行なわれました。日本人ライダーとして唯一、MotoGPクラスに参戦する中上貴晶選手(ホンダ)は、13位でレースを終えています。

リアタイヤのグリップに苦戦、それでも無事に走り切る

 2020年シーズンは新型コロナウイルス感染症の影響で中止となったため、イギリスGPは2年ぶりの開催となりました。開催地のシルバーストーン・サーキットはこれまでのサーキットよりも気温が低く、イギリスGPが開催された週末は15度から18度ほどの肌寒い気温で、ライダーやチームクルーは長袖を着て過ごしている様子がうかがえました。

ホンダのマシンを駆り、2021年シーズンのMotoGPクラスに参戦する唯一の日本人ライダー、中上貴晶選手(#30 LCR Honda IDEMITSU)

 シルバーストーン・サーキットは全長約6kmのロング・サーキットで、コーナー数が18と多く、平均スピードが高い高速サーキットです。中上選手はこのサーキットで、Moto2クラス時代の2017年には優勝を飾っています。

 しかし、2021年のイギリスGPは中上選手にとって厳しいものとなりました。フリー走行(練習走行)が始まる金曜日から、リアタイヤのグリップに苦戦していたのです。予選では15番手。5列目から決勝レースをスタートすることになりました。

 迎えた決勝レースでは、1周目に9番手に浮上。しかし、レース終盤にペースを落とし、13位でレースを終えました。レース終盤、リアタイヤの右側のグリップがなくなってしまったのです。通常、MotoGPクラスにタイヤを供給するミシュランタイヤは、ソフト、ミディアム、ハードの3種類のタイヤをフロント、リアそれぞれに用意するのですが、中上選手は今回、リアにソフトタイヤを選択していました。

 また、中上選手以外のすべてのホンダライダーもリアにソフトタイヤを選択しており、同じようにレース後半、リアタイヤの右側が「終わってしまった」とコメントしています。

5列目15番グリッドからスタートした中上選手。序盤はポジションを上げたが、後半リアタイヤのグリップ不足に苦戦

 中上選手にこの日のレースについて尋ねると、「タイヤの右側にかなりの振動を感じており、残り6、7周は走るのがすごく難しかったです。タイヤの右側がうまく機能しませんでした」と言葉少なに語りました。

 さらに、中上選手はレース前夜から体調を崩していたと言います。

「レース序盤は体に力を感じられず、走るのが大変な状況でした」

「レース結果には満足です。レース前には、走り切ることができないかもしれない、とも思っていましたから……。13位は良い結果とは言えませんけどね」

イギリスGPで表彰台を獲得した、ファビオ・クアルタラロ選手(ヤマハ/中央)、アレックス・リンス選手(スズキ/左)、アレイシ・エスパルガロ選手(アプリリア/右)

 中上選手にとっては苦しいレースとなりましたが、2020年から苦戦が続くホンダとしては明るい結果もありました。

 ファクトリーチームのライダー、ポル・エスパルガロ選手が予選で1番手を獲得したのです。ホンダとしては、2020年第12戦テルエルGPで中上選手が獲得して以来の予選1番手でした。エスパルガロ選手は、決勝レースでは今季自己ベストリザルトの5位でフィニッシュしています。

予選で1番手を獲得したP.エスパルガロ選手。2021年、ホンダに移籍してきたライダー

 次戦は第13戦アラゴンGP。スペインのモーターランド・アラゴンで2021年9月12日に決勝レースが行なわれます。アラゴンは、上述のテルエルGP開催地であり、中上選手がポールポジションを獲得したサーキットです。エスパルガロ選手に続く、中上選手の活躍に期待したいところです。

【了】

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Writer: 伊藤英里

モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。

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