“軽さは正義!?” いまだ高額な「チタン」部品 使われているのはマフラーだけじゃない?
「チタン(チタニウム)」と言えば、高性能マフラーを代表する素材として知られています。超軽量だけでなく独特の素材感や美しい焼け色で見た目も魅力ですが、じつは重要なエンジンパーツにも使われています。
超軽量だけど、けっこう高額……
「チタン(Titan)」は原子番号22番の元素で、ギリシャ神話のタイタン(ティーターン)が語源と言われます。タイタンは巨人を表すので、ネーミングからは大きく重いイメージもありますが、金属のチタン(チタン合金)は猛烈に軽くて強い材料のため、レーシングマシンやバイクにうってつけの素材で、その代表格はなんといってもマフラー(エキゾーストシステム)でしょう。
排気量や気筒数にもよりますが、大型バイクで4気筒の集合マフラーだと、鉄やステンレス製の純正マフラーなら大抵は10kg以上の重量がありますが、チタン製のフルエキゾーストマフラーならおおむね半分の5~6kgしかありません(公道用の市販バイクの場合。レース専用ならさらに軽量)。
マフラー交換はパワーやエンジン特性に影響しますが、チタンマフラーによる軽量化はハンドリング(運動性)の向上に大きく影響するのはもちろん、サイドスタンドからの引き起こしや、取り回しの押し引きでも違いを感じることができます。

こんなメリット山盛りのチタンマフラーですが「価格の高さ」は、数少ないデメリットかもしれません……。
資源としては豊富だけれど……
チタンの元素は1791年に発見されており、地殻の中に存在する鉱物としては量もかなり豊富なので、いわゆるレアアースとは異なります。
ところが採取した鉱物からチタンを精錬し、金属チタンを作るのが難しく、高純度のチタンに分離できたのは発見から100年以上経った1910年でした。
1940年代にはさらに高純度な分離に成功し、1950年代にはアメリカとソ連の軍用ジェット機に用いられるようになりました。
また金属チタンは非常に強度が高く熱伝導率が低いため、切削加工が難しいのも特徴です。そしてチタン合金(64チタンなど)は純チタンよりさらに強度が高いため、より加工が難しいと言われます。
このように歴史的に古く鉱物として豊富でも、精錬や加工の難易度の高さが価格を押し上げるため、いまだ高級素材でありメジャーな金属素材にはなっていないようです。
じつはアルミより重い!?
超軽量素材のチタンの比重は約4.51で、鉄の比重は7.8~7.9くらいなので、同じパーツをチタンで作るとおおむね鉄の6割くらいの重量に収めることができます。
ところがアルミの比重は約2.7なので、意外ですが、チタンはアルミより重いのです。
しかしチタンは重量あたりの強度はアルミの約3倍、鉄の約2倍もあります。ということは、アルミと同じ強度は重量1/3の材料で確保できます。また鉄と同じサイズで部品を作れば、はるかに高強度になるわけです。
そこでバイクのレース用としてチタン製のマフラーが1970年代後半頃から登場し、市販バイク用のアフターパーツとしても1990年代頃から徐々に販売されるようになりました。
そしてエンジンパーツにもチタン合金が使われるようになり、有名なのがホンダの「RC30」こと「VFR750R」(1987年)のチタン製コンロッドでしょう。
燃焼室の爆発力を受けるピストンを支えるコンロッドは、当然ながら高い強度が求められます。これをチタン製にすれば、重量を抑えながら強度を高められるのです。

またスーパースポーツ車は、エンジンの吸気バルブや排気バルブをチタン製とするモデルが増えています(サイズの大きな吸気バルブのみチタン製の場合もアリ)。
パワーを稼ぐために高回転化するのは常套手段ですが、どんどん回転を上げていくと吸排気バルブの開閉するスピードが速まり、ともするとバルブサージングやバルブジャンプ(バルブの開閉が追い付かないトラブル)を起こしてエンジンが破損する危険があります。
そこでバルブをチタンで作って軽量化すれば、バルブの慣性重量が減るためバルブジャンプしにくくなり、より高回転化=ハイパワー化を狙えるからです。

そして2000年代には1000ccスーパースポーツ系が、ノーマルでチタン製マフラー(エキゾーストパイプ)を装備するようになってきました。
他にも、近年ではホンダが「CBR1000RR SP」(2017年)に、公道用量産車で世界初のチタン製の燃料タンクを採用しました。こちらは同形状の鋼板製より1.3kg軽量です。
カスタムするなら「チタンボルト」もアリ
切削や溶接、プレス成型など加工技術が進歩したことで、昔と比べるとチタン製のパーツはかなり増えています。とはいえコンロッドや吸排気バルブをチタン製にカスタムするのは容易ではないですし、チタン製の燃料タンクも普通には販売されていません。
そのため、一般ライダーが入手できるチタン製パーツは、やはりマフラーだけかもしれません。……が、じつは他にもあります。それは「チタンボルト」です。

近年は国内外のブランドからチタンボルトが販売されています。エンジンカバーや外装パーツを固定するボルトから、ブレーキのディスクローターやキャリパーを留める特殊な形状のボルトなど、様々なチタンボルトやチタンナットが揃っています。
プライス的には鉄やステンレスの一般的なボルトより相応に高額ですが、ブランドによってはカラーバリエーションも豊富で、カスタムの訴求力もバッチリです。
もちろんブレーキ関連などバネ下のボルトを軽量なチタン製に交換すれば、ジャイロ効果の軽減や路面追従性も向上します。……が、これは一般ライダーが公道走行で体感できるかは微妙ですが、MotoGPやSBKなどトップカテゴリーのレースでは大切な要素です。
マフラーのような「大物」ではありませんが、チタンを愛でるマニアックなカスタムとして、チタンボルトへの交換はアリではないでしょうか。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。













