現行250スクーター ホンダ「フォルツァ」2021年型は大幅な改良が加わり走りも変わった?

ホンダの軽二輪スクーター「フォルツァ」は、2000年の初代モデルから2018年のフルモデルチェンジでスポーティなスタイルとなり、2021年型では環境性能に対応しつつ大幅な改良が加えられました。走りにはどのような違いがあるのでしょうか。試乗しました。

パッと見変わらず、中身は大幅に改良が加えられている

 2018年にガラリと趣を変更してからから3シーズン。2021年3月にモデルチェンジとなったホンダ新型「FORZA(フォルツァ)」と先代モデルを並べたら、先代オーナーなら細かな変更にすぐに気が付くはず。

ホンダ「FORZA」(2021年型)に試乗する筆者(松井勉)

 例えば、ヘッドライト下部に左右から伸びるボディパネルがスポイラーリップ風な折り返しとタメが加えられたカタチになっていたり、駆動系のカバーにシルバー風味が付け足されたり、メーターの目盛りや針が自発光式となって高級感が増したり、引き継がれた電動可動式のウインドスクリーンが上下する距離が40mm増えたり等々、目を丸くするはず。しかしそれは従来型のオーナーで無ければ気が付かないほど自然な変更で、「FORZA」ユーザー以外だと新旧を間違い探し的に並べたら、識別は難しいかもしれません。

 じつは新型「FORZA」、脱いだら凄いタイプの進化を遂げていたのです。新しい環境規制に対応するタイミングでエンジンはフルモデルチェンジ級の改良を加えられました。

 まずボア×ストロークの変更。これはよりドライバビリティを上げるためのもので、従来モデルの68.6×68.5mmから新型では67×70.7mmへとロングストローク化。併せて高剛性化されたクランクシャフトは10%ほど重量減にも成功。パワー感を上げるため、インテーク側のバルブタイミングを角度で5度早め、吸排気バルブのリフト量はともに0.3mm拡大されています。

排気量249ccの水冷4ストローク単気筒OHC4バルブエンジン「eSP+」搭載

 そして吸気ポートと排気ポートの形状もリニューアル。吸気側はシリンダーに送り込まれれる混合気に強い吸気渦を作り、効率的な燃焼を促します。排気側は排気経路をストレート化。これらにはエアクリーナーケースからマフラーまでの構造を最適化(つまりリニューアル)しているのです。

 まだ続きます。高温になるピストンの排気側に向け、裏側からエンジンオイルを吹き付けるスーパースポーツモデルのような仕掛けも追加。ピストン温度が上昇し、シリンダー内で異常燃焼が起こらないようにするためです。また、振動低減のためのバランサーも追加され、フリクションロス低減を狙った数々の仕組みも投入されているのです。

 正直、ヨーロッパを含むスクーターユーザーの目の肥え方がハンパないんだ、ということが良くわかります。グローバル市場を戦うモデルだからこその充実のアップデイトなのです。

 さて、日本の道ではどうなのでしょうか。シート高780mmでライディングポジションはアップライトな印象。足元スペースも広く、快適さがあります。上体が後傾していないので、地面への足つき具合もまずまず。

シート高780mmの車体に身長183cmの筆者(松井勉)がまたがった状態

 もっとも下げた位置でも充分に効果ありそうなウインドスクリーンを手元のスイッチで最上部まで上げると、180mmの可動域は大きく、まるで盾のように眼前にそびえます。走行風もゲリラ豪雨の巨大な雨粒も避けてくれそうです。

 エンジンを始動した瞬間、エンジン振動の少なさが解ります。スクーター独特のブルブル感が少なく、発進のためにアクセルを開けてもブルルルゥーと最初の一発目が粒の大きな振動ではなく、トゥルルルルーと小さく柔らかい振動で後輪が蹴り出してくれます。市街地では3000rpm以下からしっかり後輪に力が伝わり動き出す感があって、なおさら快適さが向上した印象です。目に入るメーターパネルも目盛りや針が醸すオシャレな腕時計感があり、キラキラ感を享受できます。

 市街地での乗り心地はしなやかな印象であり、悪くありません。ハンドリングも鋭さより落ち着きを持ったもので、ヨーロッパの荒れた舗装や石畳を綺麗になめてゆく姿が想像できました。もう少しハンドリングにキビキビ感があっても良いかな、とも思います。

 その分、高速道路では安定感ある走りを楽しめます。直進性がよく、ボディマウントのミラーのお陰でハンドルまわりもスッキリ。このミラー、調整するには少し手を伸ばす必要はありますが、スタイル的にもクールなのは間違いナシ。クルマみたいに電動調整ミラーが欲しい、と思ったのは、市街地、高速道路で頻繁に見える画角を変える筆者(松井勉)のクセだからでしょうか。

 里山を抜ける郊外のルートを走ると、安定感と軽快さがバランス良くチューニングされていることがわかります。市街地より移動速度が高い方が、より動きにキビキビ感が出るようです。

ホンダ「FORZA」(2021年型)に試乗する筆者(松井勉)

 ワインディングで右から左へと早めに切り返しをしてみると、タイヤのグリップ感を持ちながらライダーの意図に忠実に応えてくれるのです。低速でゆったり方向を変えるときの落ち着きと、スパッと行きたい時の良いトコ取りなこの特性、ホンダのお家芸的な剛性バランスのチューニングです。

 結論を言えば、新型「FORZA」はスムーズなエンジンが魅せる上質感、実用的にも48リットルものシート下スペースを持ち、乗り手の発想次第で様々な拡張性を持つスクーターです。そのくせ、外観デザインはスリムでシュッとした印象を与え、市街地での軽快さを予感させます。

 コミューターとして、ツーリング用バイクとしてシームレスな加速をする「FORZA」は、CVTミッションの出来映えといい、250ccクラスの中でもあらためて選択の視野に入れたい1台だな、と思ったのでした。

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 ホンダ「FORZA」(2021年型)の価格(消費税10%込み)は65万8900円です。

【了】

【画像】ホンダ「FORZA」(2021年型)の詳細を見る(16枚)

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Writer: 松井勉

モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

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