ツーリングを安全に楽しむには? MotoEライダー大久保光が考える公道を走る際の注意点とは
世界を舞台に戦うレーシングライダーの大久保光選手が、ツーリングなど公道でバイクに乗る際の注意点を教えてくれました。
バイクの乗り方は自転車と同じ?
こんにちは!突然ですが皆さんはツーリングをする際、どのような点に注意して、バイクに乗っていますか?
公道ではサーキットのようなクローズドコースとは違い、様々な危険があると思います。実際に、単独事故やクルマなどを含む複数台での多重事故などが、後を立ちません。そこで今回は、公道でも使えるライディングテクニックを、お伝えしたいと思います。

遅れましたが私、普段はサーキットをメインに走行をしており、Moto GP MotoE World cupというレースに参戦している大久保 光と申します。
そんな私も、公道でバイクに乗ることが多くありますが、サーキット以上に注意を払って走っているのが事実です。サーキットでは対向車は存在しない上に、アスファルトのコンディションも常に良い状態が保たれており、万が一転倒やオーバースピードでコースアウトしたとしても、セーフティーゾーンが用意されています。
しかし公道にはセーフティーゾーンはなく、何かあれば即ガードレールに激突することになるだけでなく、クルマなどの他の乗り物と一緒に走らなければなりません。何より、注意しなくてはならないのは、対向車の存在でしょう。
今回は、この辺りにスポットを当てていきたいと思います。とはいったものの、正直技術面では、サーキットも公道も基本的なバイクを操作するテクニックに変わりはありません。走り方やスピード域など、見た目ではまったく違うように見えますが、実際はそうでもありません。
まず両者ともにいえることが、余裕を持ったバイクコントロールを心がけることです。これはもちろんスピード面でもいえることですが、まずはどのようにバイクを操作しているかを思い出してみてください。

まずひとつ目は、上半身は極力リラックスをして、下半身でバイクをコントロールすることを意識することが大切です。だからといって、下半身に思いっきり力を入れれば良いというものではありません。常にリラックスをした状態で、上半身ではなく下半身でバイクをコントロールするという意味です。
難しく聞こえるかもしれませんが、無意識のうちに多くの人がこの状態を経験しているはずで、それは自転車に乗っている時だと私は思います。
自転車はペダルを漕いで走るので、自ずと下半身に力が入ります。そして上半身、特にハンドルにしがみつくと、なかなかうまく乗れないと思います。また、ペダルを漕ぐ際も、坂道などを除いて変に力を入れると、自転車が真っ直ぐ安定して走らないといった経験はありませんか?
バイクも一緒で、同じように力を入れると同じような動き方をするわけです。なんとなくイメージがしにくいという人は、実際に自転車で試してみると分かると思います。
事故を減らすために大事なのは、周りを疑いながら走ること!?
ふたつ目の注意点は、スピードを出し過ぎないことです。そんなことは誰でも分かっていると、思う人もいると思います。しかし、スピードの出し過ぎが原因で事故に繋がることは多くあるため、あえて書かせていただきます。

それでは何故、スピードを出し過ぎると事故に繋がりやすいのかを、今一度考えてみましょう。まず、スピードを出すと、全ての動作に対して早く反応をしなければなりません。それはブレーキをかけるタイミングやバイクを倒す速度、バランスの取れるポジション作りなどすべてにおいてです。
そしてこれらは、低速時には出来ていたとしても、スピードが上がると難しくなるもの。そうなった場合、パニックに陥りやすく、急激にブレーキをかけたり、バイクのハンドルをこじってしまい、転倒などという事例もあります。実際にライディングスクールなどでも、パイロンを使った低速での練習ではできていたことが、いざサーキットで走るとできなくなるなんてことも、珍しくはありません。
特に公道ではひとつのミスが大きな事故に繋がりやすいので、ミスは可能な限り避けたいものです。そのため、公道では自分が思っている以上にスピードを出さず、余裕も持った速度域で走ることをお勧めします。

では、どんなにスピードが出ていてもマシンのコントロールができるようになれば、スピードを出しても大丈夫なのかというと、そういうものでもありません。私は普段、レースでは250km/h以上の速度でコースを走っていますが、公道では30km/hでも怖いと感じることが多々あります。それはやはり、公道とサーキットでは、走る環境が違うという点が大きいと思います。
さて、それではその環境の違いについても説明していきたいと思います。まずは何度も書いていますが、公道にはセーフティーゾーンがありません。サーキットでは、もしオーバースピードになりコースアウトをしてしまっても、グラベルなどコース(道路)の外側にも広い空間が確保されていますが、公道ではそのような場所は非常に少なく、即ガードレールや対向車線に出てしまう確率が非常に高くなっています。
それから、路面状況です。サーキットでは毎日、毎走行後にサーキットオフィシャルがコースを清掃してくださるので、常に良いコンディションが保たれていますが公道はそうはいきません。砂や落ち葉、路面のひび割れなどにタイヤを取られて転倒なんてことも考えられます。

そういった危険な要因を回避するには、余裕を持った走り、またしっかりとしたマシンコントロールが必要になると思います。
最後になりますが、公道は対向車や自動車、自転車などと一緒に走らなければなりません。そのため、相手が思いがけない動きをする場合も考えられます。これは非情に聞こえるかもしれませんが、そういった周りを走る人たちを疑いながら走ることも事故を避ける大きなポイントだと思います。
サーキット、特にレース中でも危ないライダー(転倒が多いライダーや蛇行走行の多いライダー)と走る際には、相手がどのような動きをするかは想像できないので、いつでも対応できるように構えてレースをすることもあります。実際に目の前で転倒されたり、接触することもありますが、その構えをするとしないとでは成績に大きな差が出てくるのです。

公道でもそれは同様で、どんな理由があったとしても事故が起きてしまえば相手は勿論、自分も大きな怪我を負ってしまうので、自分の身は自分で守るしかありません。教習所でも習ったと思いますが、「かもしれない運転」というものがレースも公道でも大事ということです。
センターラインを跨いでくるクルマがいるかもしれない、駐車しているクルマの陰から人が飛び出してくるかもしれない、工事中でいつもより路面に砂が浮いているかもしれない等。
私はレーサーとしてバイクに乗っている時間帯の方が多く、どうしてもレーサー目線になってしまうことがほとんどだと思いますが、参考程度に読んでいただき、これを機に安全について、もう一度しっかりと考えるきっかけにしてもらえればと思います。







