ツーリングモデルのイメージを一新する ハーレーダビッドソンの巧みなプロモーション戦略

ハーレーダビッドソンは2022年1月27日にYouTube配信動画『FURTHER、FASTER、さらなる高みへ。』で新型モデルを公開しました。なかでも新型のツアラーモデル「ロードグライドST」「ストリートグライド ST」ではこれまでと異なる印象のプロモーションが用いられています。

新境地を開いたハーレーダビッドソンのツアラーモデル

 去る2022年1月27日午前1時(日本時間)にYouTubeにて『FURTHER、FASTER、さらなる高みへ。』と題された動画を世界同時配信し、2020年ニューモデルを発表したハーレーダビッドソン社(以下:H-D)ですが、今のような『Withコロナ』の時代、筆者(渡辺まこと)が改めて感心させられたのが同社のプロモーションの巧さです。

発表と共に話題を集めたハーレーダビッドソンの「ST」モデル。手前からクルーザーの「ローライダーST」、ツアラーの「ロードグライドST」、「ストリートグライドST」。新たなユーザー層へのアプローチを感じるモデルに仕上げられています
発表と共に話題を集めたハーレーダビッドソンの「ST」モデル。手前からクルーザーの「ローライダーST」、ツアラーの「ロードグライドST」、「ストリートグライドST」。新たなユーザー層へのアプローチを感じるモデルに仕上げられています

 たとえば今回の動画の中では冒頭の5分間で2021年の出来事を振り返り、そこからニューモデルの発表へ繋げた構成となっているのですが、“パンアメリカ”や“スポーツスターS”、“エレクトラグライド・リバイバル”といった2021年に話題となったモデルを紹介した後にH-Dワークスライダーのカイル・ワイマン選手が念願の年間チャンピオンを獲得したレース、“キング・オブ・バガーズ”のハイライトシーンを配信。

 その後に2022年モデルの目玉のひとつである“グランドアメリカンツーリング”シリーズの“ストリートグライドST”と“ロードグライドST”が紹介されているのですが、このプロモーションは、これまでの“ツアラーモデル”や“バガー”のイメージを一新したように感じ取れます。

一見するとノーマル然としたスタイルながら、あらゆる箇所がワークスの威信をかけ、モデファイされるスクリーミンイーグル・ロードグライド。前後サスやフレームはもとより外装もカーボン製で軽量化が果たされています
一見するとノーマル然としたスタイルながら、あらゆる箇所がワークスの威信をかけ、モデファイされるスクリーミンイーグル・ロードグライド。前後サスやフレームはもとより外装もカーボン製で軽量化が果たされています

 利便性の高いサイドバッグや巨大なフェアリングを備えたH-Dのツアラーモデルといえば、どちらかといえば“威風堂々とノンビリ走るバイク”というイメージを持つ方がほとんどだと思いますが、しかし、今回の『FURTHER、FASTER、さらなる高みへ。』の映像内では、激しいレーシングシーンを展開。ツアラーモデルがH-Dのフラッグシップであり、ハイパフォーマンスなマシンであることが見事に示されています。

 もちろん、今回のニューモデルは実際の性能もプロモーション映像に恥じないものとなっており、4バルブのミルウォーキーエイト・エンジンは、歴代ハーレー標準搭載の中で最大となる117cu-in(1923cc)の排気量を獲得。さらに米国で展開されるH-Dのパフォーマンス・ブランド “スクリーミンイーグル”のステージⅣキットを組み込めば131cu-in(2147cc)もの排気量を得ることも可能です。

プロモーション写真もワインディングを中心に構成され、軽快さをアピールする演出が成された“ストリートグライドST”。実際の走りが如何なるものかデリバリー後に体感したいところです
プロモーション写真もワインディングを中心に構成され、軽快さをアピールする演出が成された“ストリートグライドST”。実際の走りが如何なるものかデリバリー後に体感したいところです

 また、スタイルにしてもレース団体の“モト・アメリカ”でライバルのインディアン・モーターサイクルと死闘を展開したマシンの姿を踏襲したものとなっており、“ストリートグライドST”にしても“ロードグライドST”にしても、かなりクール。

 落ち着いた雰囲気のビビッドブラックとガンシップグレーというカラーラインナップはもとより、コンパクト化されたスポーティーなフロントフェンダーや高さを抑えたダークウィンドシールド、エクステンド・タイプに変更されたサドルバッグなど、かなりソソられるスタイルとなっています。さらに、オプションでオーリンズ製リアサスペンションが用意されている点も巧いプロモーション戦略です。

ワインディングでの軽快さと共に街中のライディング・ショットで都会的なムードを演出する“ロードグライドST”のプロモーション・カット。落ち着いたガンシップグレーのカラーリングは高い人気を呼びそうです
ワインディングでの軽快さと共に街中のライディング・ショットで都会的なムードを演出する“ロードグライドST”のプロモーション・カット。落ち着いたガンシップグレーのカラーリングは高い人気を呼びそうです

 これまでハーレーのツアラーモデルといえば、豪華装備が与えられたラグジュアリーなクルージングバイクというイメージが強かったのですが、その印象を一新させるプロモーションの手法は、まさに今の時代に沿ったもの。今回のようにスポーティーなイメージとなった“ストリートグライドST”と“ロードグライドST”は新たなファン層を開拓しそうです。

 ちなみにハーレーらしさ溢れるバットウィングフェアリングが装着された“ストリートグライドST”はビビッドブラックが393万5800円、ガンシップグレーが398万6400円、カイル・ワイマン選手が駆るレーシングマシンを彷彿とさせる“ロードグライドST”はビビッドブラックが393万5800円、ガンシップグレーが398万6400円(いずれも消費税込み)となっています。動画配信が開始された2022年1月27日より全国のハーレーダビッドソン・正規ディーラーで予約販売が開始されていますので、気になる方はまず問い合わせてみてはいかがでしょうか。

■ハーレーダビッドソン「ストリートグライド ST」

ハーレーダビッドソン「ストリートグライド ST」
ハーレーダビッドソン「ストリートグライド ST」

・車両本体価格(消費税込)とカラー:393万5800円(ビビッドブラック)/398万6400円(ガンシップグレー)
・全長:2400mm
・ホイールベース:1625mm
・シート高(無負荷状態):710mm
・車両重量:369kg
・レーク・トレール:26°170mm
・フューエルタンク容量:22.7L
・フロントタイヤ:130/0B19 61H
・リアタイヤ:BW 180/5B18 80H
・エンジン:Milwaukee-Eight 117 (排気量:1,923cc)

■ハーレーダビッドソン「ロードグライド ST」

ハーレーダビッドソン「ロードグライド ST」
ハーレーダビッドソン「ロードグライド ST」

・車両本体価格(消費税込)とカラー:393万5800円(ビビッドブラック)/398万6400円(ガンシップグレー)
・全長:2405mm
・ホイールベース:1625mm
・シート高(無負荷状態):715mm
・車両重量:382kg
・レーク・トレール:26°170mm
・フューエルタンク容量:22.7L
・フロントタイヤ:130/60B19 61H
・リアタイヤ: BW 180/55B18 80H
・エンジン/Milwaukee-Eight 117 (排気量:1,923cc)

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Writer: 渡辺まこと(チョッパージャーナル編集長)

ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。

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