最新版でラストチャンス!? 2021年モデルのBMWスクーター「C400X」 400cc未満で高い満足感が得られる貴重な存在
BMW Motorrad「C 400 X」は、2019年に新登場となった排気量349ccの水冷単気筒エンジンを搭載するミドルサイズ・スクーターです。最新の2021年型はどのようにアップデートしているのでしょうか。
伝わるダイレクト感、走りの一体感がスゴイ
先代モデルより細かなアップデートが加えられ、2021年7月に発売されたBMW Motorradのスクーター「C400X」は、走りも個性的なスタイルも、そして装備も満足感高し! という1台でした。「BMWなんてあまり馴染みなし」という方に少し解説します。400とは言いつつも搭載されるエンジンは349ccです。それでいて400ccエンジンを搭載するスズキの「バーグマン400」よりも最高出力が1kW高い25kW(5PSアップです)を発揮、最大トルクは35N.mで同値という性能を持っています。燃料はハイオク指定なので、このガソリン高騰のご時世、気になるところではありますが、その魅力はガソリン代を上回ると思いました。

もう一点、2021年モデルでは、いわゆる環境規制ユーロ5に適合しています。先代モデルよりもその点で価格が上昇していますが、電子制御スロットル、フライ・バイ・ワイヤー式(ライド・バイ・ワイヤ)のアクセルを採用するなど細かなアップデートが見られます。
そして気になる先代モデルとの走りの差ですが、厳しくなった環境規制の分、多少は減衰するのかな、と想像しながら乗ったところ、そんな心配まったく必要ナシでした。「C400X」の走りがとっても良いからです。
まず、スタートダッシュが気持ちいい。これが速いんです。開けたアクセルに対する駆動力が後輪に伝わる滑らかなレスポンス、クラッチのつながり方が絶妙。そしてバリアブルにギア比を自動で変更するCVTが、加速度とエンジン音の高まりを上手くリンクさせていきます。CVTのスクーターにありがちな、エンジンだけ回っているのに加速力が着いてこない……! という不満がありません。
また発進時、これもビッグスクーターにありがちな、エンジンと駆動まわりに発生する“ブルン”という振動も低く抑えています。ここまでは先代モデルも同様です。そこに新型はエンジンの振動がさらに低くなり、結果的に速さと「質感あるな」というプレミアム感まで味わえるのです。

もちろん、グっと力を捻った瞬間の加速感だけではありません。渋滞路で発進する、止まる、を繰り返すような場面でも、アクセル操作と一体感がある動きなので、車体の大きさ、重さを感じません。これはライディングポジションとも相関があるように思います。「C400X」のそれは、ハンドルバーがやや広めに感じるものの、775mmというシート高に座ったライダーは、肩から下に腕を伸ばすスポーツバイク風なポジションを取れるのです。
車体まわりを見ると、前輪に15インチ、後輪に14インチと、スクーターとしては大きめのサイズでラジアルタイヤを履いていることも特徴です。また、市街地を小気味よく走っても車体のしっかり感があり、スポーツバイクのような、と言ったら大袈裟ですが、ブレーキ、ハンドリングなど加速同様の一体感があり、走るのが楽しいのです。

そうした走りのパッケージに加え、乗り物としてワクワク感を醸し出すのが外観デザインかもしれません。
「C400X」は、BMWモトラッドが誇るアドベンチャーモデル、「GS」シリーズが持つ逞しさと、どこまでも走ることを予感させる自由さ、冒険力を持ちながら、都市にも馴染む万能性のエッセンスが与えられています。カタチから発するそうしたオーラはもちろん、「C」シリーズの特徴である「フレックスケース」もそのひとつ。スクーターと言えばシート下ラゲッジの容量を少しでも拡大し、ライバルと差を付けるのが持ち味のひとつです。
まあ、ラゲッジをラクチンに積むなら、僕(筆者:松井勉)は外付けのトップケースを装着するでしょう。その方が使い勝手が良いようにも思えます。

結論として、長い時間乗っても疲れない快適性、走りの一体感をイージーライドで楽しめる「C400X」は、アジア生産ながら価格(消費税10%込み)は87万円から、と安くはありません。
でも、ABS、トラクションコントロール、グリップヒーター、シートヒーター、超見やすいTFT6.5インチメーター、明るい(ここ重要)LEDヘッドライト、ETC 2.0車載器、3年間保証等が付帯することを考えたら……。
「バーグマン400」の価格が84万7000円、装備は「C400X」の方が充実しているコトを考えたら、あとはBMWモトラッド正規ディーラーに飛び込みさえすれば、意外なるトビラが開くのかもしれません。幸運を祈ります!
Writer: 松井勉
モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。