BMWモトラッド渾身のアドベンチャーツアー 8度目の舞台はヨーロッパの秘境アルバニア!!

2年に1度、BMWモトラッドが提供する渾身のアドベンチャーツアーが、2022年9月にアルバニア南部を舞台に行なわれました。日本をはじめ各国の代表ライダーが『インターナショナルGSトロフィー2022』に参加。チーム・ジャパンに帯同する松井勉氏が、現地の模様を紹介します。

8度目の開催、舞台はヨーロッパの秘境アルバニア!!

 2022年9月2日、アルバニアの首都ティラーナ国際空港には、大きなダッフルバッグを担いだ一団が続々と姿を現します。アルバニア南部を舞台に行なわれる『インターナショナルGSトロフィー2022』に参加するライダー達です。

アルバニアを巡る『インターナショナルGSトロフィー2022』。7日間かけて行なわれたステージの最終日、移動区間は80kmほどと短いものの、その内容は濃密。川沿いに移動する道は雨に削られ乾き、埃と轍がライダー達に最後の試練を与えたのです
アルバニアを巡る『インターナショナルGSトロフィー2022』。7日間かけて行なわれたステージの最終日、移動区間は80kmほどと短いものの、その内容は濃密。川沿いに移動する道は雨に削られ乾き、埃と轍がライダー達に最後の試練を与えたのです

「GS Trophy(ジー・エス・トロフィー)」は、最高のアドベンチャーツーリングを各国のGSライダー代表と共有し、BMWが生み出したGSの世界を体現しよう、というもの。別の角度から見れば、良質なプロモーションイベントであり、リアルに冒険旅行を体験できるものなのです。

 その始まりは2008年、イタリア・ミラノからチュニジアのサハラ砂漠を目指しました。2010年は南アフリカのスワジランド(現エスワニティ)、モザンビークを舞台に行なわれました。

 続く2012年は南米大陸、チリからアルゼンチン、アタカマ砂漠に足跡を残します。2014年は北米カナダ、2016年は東南アジアのタイ王国で熱帯雨林のトレールにも足を伸ばします。2018年は中央アジア、モンゴル。そして2020年にオセアニア、ニュージーランドを縦断し、2022年の舞台は南東ヨーロッパ、アルバニアです。

9月4日のスタートを待つ「R 1250 GS Trophy」が並ぶ。アクラポビッチのサイレンサー、ショートスクリーン、前後一体型のラリーシート、メッツラーのダート向けタイヤ「カルー4」を履く仕様。カスタムされたバイクがこれだけ並ぶと壮観!
9月4日のスタートを待つ「R 1250 GS Trophy」が並ぶ。アクラポビッチのサイレンサー、ショートスクリーン、前後一体型のラリーシート、メッツラーのダート向けタイヤ「カルー4」を履く仕様。カスタムされたバイクがこれだけ並ぶと壮観!

 BMWモトラッド内にあるプロジェクトチームが、時間をかけてプロダクトを造るように準備、運営されるのはもちろん、ライダーは生涯に1度しか参加できるチャンスはありません。それもこのイベントを格別なものにしています。

 期間中、宿泊はテントとシュラフ。ルートは当日マーシャルのみが知っていて、ライダーは素晴らしい景色の中でスキルを問われる難所と戦うことになるのです。

初日、ダート比率の高い移動ルートを走り終えようとするGSトロフィーライダー達。「R 1250 GS Trophy」仕様で登る石畳の道の先には城壁に囲まれた小さな町があり、史跡と言えるような場所が最初のキャンプ地でした
初日、ダート比率の高い移動ルートを走り終えようとするGSトロフィーライダー達。「R 1250 GS Trophy」仕様で登る石畳の道の先には城壁に囲まれた小さな町があり、史跡と言えるような場所が最初のキャンプ地でした

 2021年、各参加国で予選が開催され、ファイナルをかいくぐったブラジル、ドイツ、中国(2020年2月のニュージーランド大会では、COVID-19の感染拡大の影響で中国チームは本戦に参加できず、2020年と2022年の2チームが参加)、フランス、ドイツ、インド、日本、ラテンアメリカ、メキシコ、オランダ、南アフリカ、韓国、イギリス、そしてアメリカなど、各国・地域から各3名の男性チームに加え、ブラジル、フランス、ドイツ、ラテンアメリカ、メキシコ、南アフリカから各2名の女性代表チームが、スタート地点で様々な準備を進めます。

 そして9月4日、開催8回目を迎えるインターナショナルGSトロフィーはスタートを切りました。

 スタートは5分おきに、2チームを1人のマーシャルが先導し、移動を始めます。選手、メディア、そして運営チームのSNS撮影班、BMWモトラッドの開発・デザインなどの主要な役職につく人(社長含む)も、現地に用意されたBMW Motorrad「R1250GS」のトロフィー仕様を走らせます。全体では200台近いバイクが時間差でアルバニアの自然に放たれたのです。

毎日、2チーム毎に1名のマーシャルがルートを先導。その日に設定されたスペシャルステージやランチポイント、キャンプ地へと参加者達を案内します。ダート比率、しかも難所が多い今大会では、移動アベレージが低かったのも印象的。その分、急げる場所は急ぎます
毎日、2チーム毎に1名のマーシャルがルートを先導。その日に設定されたスペシャルステージやランチポイント、キャンプ地へと参加者達を案内します。ダート比率、しかも難所が多い今大会では、移動アベレージが低かったのも印象的。その分、急げる場所は急ぎます

 海辺のベースキャンプからスタートした初日、10分ほど走ったダートロードの先にある荒れ地で1本目のスペシャルステージが行なわれました。

 最初のステージは、広い荒れ地スペースに2本の線で描かれた、幅1メートルほどのコースです。アップダウン、砂、岩、タイトターンを、選手達はR1250GSで走行します。

 足つき、転倒、コースアウトはペナルティポイントが加算され、3名のチームメンバーが1人づつ走行し、フィニッシュポイントで両手を挙げ、それが確認できたら次のライダーがスタート、3名合計で6分を超えるとタイムアウト……ライダー達の緊張がビシビシ伝わります。

 期間中はこうしたステージが2つから多い日で4つほど設定され、ライディングばかりではなく、時に純正オプションのナビゲーションアイテムを使ったもの、またメカニカルスキルを問われるものもあります。

 インターナショナルGSトロフィーは“It is not a race. It is team competition.”と言うとおり、個人のレースではなく、共に旅をし、日々行なうゲームの最終結果が順位となって表れるというもの。

8回目を迎えたインターナショナルGSトロフィー。アルバニア大会への日本代表は、写真右から舟橋理人さん、中澤聡さん、藪田真吾さんの3名。国内予選会、決勝でライディングスキル、フィジカル、コミュニケーション力などから選ばれたGSユーザーです
8回目を迎えたインターナショナルGSトロフィー。アルバニア大会への日本代表は、写真右から舟橋理人さん、中澤聡さん、藪田真吾さんの3名。国内予選会、決勝でライディングスキル、フィジカル、コミュニケーション力などから選ばれたGSユーザーです

 日本チームは、初回から毎回参加を続ける数少ない国のひとつです。2022年の代表に選ばれたのは、舟橋理人さん、藪田真吾さん、中澤聡さんの3名。「ミスなく慎重に走れば順位はついてくる」そんなストラテジーをもって当たった結果、初日は総合5位という結果に。

 しかし、2日目の移動セクションで路面のギャップに隠れた岩にフロントタイヤを取られ中澤さんが転倒し、運悪く鎖骨を骨折、この時点でリタイアとなります。

 その後、チームで走るステージでは他のチームと直接比較ができないことから、以後の走行コンテンツでの獲得ポイントが最下位タイのポイントとなり、最終リザルトでは下位に沈みます。しかしこれも、冒険の旅では時に起こることなのです。

ルート上で滑りやすい、転倒の可能性がある、あるいはスタックしてしまうことが想定される場合、先行ライダーがその場所をクリアしてから次のライダーがトライする、という方式で移動しました。それにしてもこのバイク、よく走ります!
ルート上で滑りやすい、転倒の可能性がある、あるいはスタックしてしまうことが想定される場合、先行ライダーがその場所をクリアしてから次のライダーがトライする、という方式で移動しました。それにしてもこのバイク、よく走ります!

 残されたチーム・ジャパンのメンバー、舟橋さんと藪田さんは、BMWとGSにまつわるペーパーテストのようなヒストリークイズやフォトチャレンジ、ビデオチャレンジと題された、走行コンテンツ以外では1位のポイントを獲得するなど、しっかりと戦いを続けます。

 その姿勢は運営スタッフや他のチームからの声援や、怪我をしたメンバーは大丈夫か? という友情に満ちたやりとりに表れます。GS乗りたちの友情は国境や言葉を簡単に越えてゆきます。

3日目に現れたドロドロのU字溝の中を進むかのようなルート。バランスを崩しても足は地面の高い部分に届きますが、その場所もズルズルに滑ります。距離にして数km続いたこの道、多くの参加者がバイクとウエアを泥だらけにしたことはご想像の通りです
3日目に現れたドロドロのU字溝の中を進むかのようなルート。バランスを崩しても足は地面の高い部分に届きますが、その場所もズルズルに滑ります。距離にして数km続いたこの道、多くの参加者がバイクとウエアを泥だらけにしたことはご想像の通りです

 アルバニアに用意されたルートは、移動区間そのものが高いスキルを問われるものでした。斜度のあるガレ場のヒルクライムルート、雨が削った路面、そのオフキャンバーになったと部分でトラクションを逃さないように上り、そして下りではラインを選ぶ難しさが常につきまといます。

 そんな状況でも「R1250GS」は高い走破性を示します。アクラポビッチのチタンサイレンサーやメッツラーの新作オフロードタイヤ「カルー4」の装着など、参加者は同じ仕様のバイクで走ります。ちなみにタイヤの空気圧も2kgf/cm²に指定されていて、メカニックによる抜き打ち検査も行なわれます。

 砂浜、川渡り、泥濘地、ガレ場、長いダート路……四国の1.5倍程度の国土で、地中海(アドリア海)沿岸に山脈が続き、ルートもアップダウンを繰り返します。舗装路比率が低く(あえてそうしたルートを選択しているのですが)、今回も7割以上はダート路、途中で一度止まると再スタートすら難しい場面が多くありました。そんな1200kmの行程が7日間続きます。

世界中からインターナショナルGSトロフィーのスタート地点に集まった選手達。アドベンチャーツーリングを堪能しつつ、毎日行なわれるスキルテストで腕を競い、寝食を共にして走ると不思議な結束が生まれる究極のイベントが、いま始まるのです
世界中からインターナショナルGSトロフィーのスタート地点に集まった選手達。アドベンチャーツーリングを堪能しつつ、毎日行なわれるスキルテストで腕を競い、寝食を共にして走ると不思議な結束が生まれる究極のイベントが、いま始まるのです

 旅を共にしたGSライダー達は、一生の思い出を得たに違いありません。次回、2024年のインターナショナルGSトロフィーに向け、すでにBMWモトラッドのプロジェクトチームは準備を開始しています。2023年には国内での選考会も行なわれるでしょう。

 アナタも一生に一度、しかしそれ以上に大きな体験となるインターナショナルGSトロフィーにチャレンジしてみて下さい。GSオーナーであり、体力、ライディングスキル、そして英語能力に自信があれば、誰でもエントリーが可能です。目的地は、常に挑戦の先にあるのです。

【画像】壮大!!『BMW Motorrad International GS Trophy 2022』の模様を詳しく見る(31枚)

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Writer: 松井勉

モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

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