一体なぜ? 希少バイクの価格高騰に大きく関わる転売ヤーが規制できない理由
近年問題視されている「転売ヤー」による、中古相場の押し上げですが、安易に規制することができないのが実情です。その背景には、自由経済を守るという点が関係しています。
新車価格の2倍以上になる車両も!?
近年、いわゆる「転売ヤー」と呼ばれる人たちが暗躍し、希少なバイクの中古相場を押し上げる現象が問題視されています。
たとえば、2021年にヤマハから1000台限定で登場した「SR400 ファイナルエディション リミテッド」は、発売直後から受注が殺到し入手困難な状態となりました。一方、中古車市場を見るとSR400 ファイナルエディション リミテッドの在庫のほとんどは150万円以上の値札が付けられており、新車価格の74万8000円を大幅に上回っています。

SRシリーズは、43年の歴史を誇るヤマハの名車です。SR400 ファイナルエディション リミテッドは、その最終モデルの限定仕様であるため、多くのライダーの注目を集めた1台でしたが、転売ヤーを中心とした激しい争奪戦が繰り広げられた結果、一般のライダーが新車価格で手に入れることはもはや困難だったといわれています。
この、転売ヤーによる中古相場の押し上げはバイクだけでなく、クルマやゲーム機などいたるところで見られ、一種の社会現象となっている問題。こうした状況を受け、インターネット上では「転売ヤー規制論」を見かけることも珍しくありません。
特に多く見られるのは、「定価(新車価格)以上での中古車販売を規制すればよい」という意見。しかし、独占禁止法によって、メーカーによる再販売価格の拘束が原則禁止されているため、メーカーが定価以外での販売を規制してしまうと、法的に罰せられる可能性があるため、販売価格を規制することはできないのが現状です。
ちなみに公正取引委員会は、独占禁止法の目的を「公正かつ自由な競争を促進し,事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすること」。バイクメーカーによって販売価格が拘束されてしまうと、各販売店や中古車販売店の自由が損なわれてしまうことになるため、独占禁止法によって規制されているというわけです。
なお、正規販売店で提示されている「新車価格」は、厳密には「参考価格」であり、「定価」ではありません。バイクは販売店によって値引きが行われる可能性があることから、あくまで価格は販売店が自由に設定しているという状況が担保されているのです。
「定価」以外での販売を規制したらどうなる?
では、もし仮に各バイクメーカーが、定めた「定価」以外での販売を規制してしまうと、どのようなことが起こりうるのでしょうか。それは、各メーカーが販売価格を大きく釣り上げること。

たとえば、上述のSR400ファイナルエディション リミテッドのように、150万円という価格でも購入を希望する人がいるのであれば、ヤマハ自身がその価格を「定価」とすることもあり得るでしょう。すべての企業は利益の追求が製品販売の第一前提であり、需要と供給のバランスが取れるのであれば、価格を引き上げる事は必然ともいえます。
そんな転売ヤーを取り巻く問題の難しいところは、悪質な転売ヤーと正当な再販事業者を明確に区別できない点にあります。もちろん、古物商許可を取得していなかったり、必要な納税をしていなかったりする販売者は論外ですが、「転売」という行為自体は商取引の基本であるため、それ自体を規制することは現実的ではありません。
結局のところ、「転売ヤー」を安易に規制してしまうと、ほかの部分で消費者に不利益が生じる可能性が大きいため、規制できないのが実情です。
なお、音楽ライブなどのチケットについては、「定価」以上での転売が規制されていますが、これは「チケット不正転売禁止法」という法律によるもの。書籍についても公正取引委員会による規制の対象外とされています。
このように、いくつかの例外はありますが、バイクに関しては現状自由な「転売」が認められているため、一部モデルの価格が高騰してしまうのは仕方ないことだといえるでしょう。





