電動バイクの「いま」あるべき姿を体験 ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.173~

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、市街地でこそ使い勝手の良い電動バイクなら所有したいと言います。どういうことなのでしょうか?

電動バイクは、短距離移動でこそ使い勝手が良い

「電動バイクに乗ってみませんか?」

 僕(筆者:木下隆之)はそんな試乗のお誘いを、最近は拒否することにしている。

BMW Motorradの新型電動バイク「CE 04」に試乗する筆者(木下隆之)
BMW Motorradの新型電動バイク「CE 04」に試乗する筆者(木下隆之)

 と言うのも、重量級のバッテリーを搭載したバイクは取り回しが悪い。本来エンジンが積まれている場所に安易に積むから重心が高い。ガレージから引っ張り出すのも、信号待ちで片足を地面に着いて支えるのも困難なのだ。

 立ちゴケを忌み嫌う僕にとっての天敵。そんな僕の気持ちを知ったうえで『バイクのニュース』編集長が誘ってきたのである。それが、BMW Motorradの新型「CE 04」だ。

 ところが、当初の心配はまたがっちっゃた瞬間に霧散した。バッテリーを低い位置に、前後に長く搭載するスクータータイプで、外観からして低重心感が強い。しかも、前後に細長いスケボーのようなシートは座る位置を自在に変えることができるから、またがってもグラグラしないのだ。カタログによるとシート高は800mmだが、感覚的にはそれ以下。不安定感は無い。

 最高出力は31kW(42PS)だ。ライディングモードは「エコ」から試して「レイン」、「ロード」へ、そして「ダイナミック」に設定すると、ちょっと過激な加速を披露する。市街地走行では「エコ」モードで十分過ぎる加速を見舞う。

 旋回特性は独特だ。簡単には立ちゴケしないような低重心感覚だから、僅かな体重移動でバンクする気配は無い。ハンドルで曲げていく感覚なのだ。それほど安定している。

 カタログによる航続可能距離は130kmと、長くはないけれど、都会的な使用に割り切れば不満はない。と言うより、強引に大容量のバッテリーを積んだところで、かえって使い勝手が悪化するだけだ。ロングツーリングは諦めて、都会チョロチョロに徹すればまたったく不満は無いのである。

メルセデス・ベンツの電気自動車「EQA」
メルセデス・ベンツの電気自動車「EQA」

 ちなみに、メルセデスの最軽量BEVであるEQAをドライブしてみたものの、こっちも軽さが魅力だった。ガソリンエンジン搭載モデルほど軽快ではないが、航続可能距離は550kmにも達するという足の長さを誇りながら、都会チョロチョロが快適なのである。

 世界は盲目的に電気モーター流行りだが、騒いでいる割には普及していない。とくにEV後進国の日本での電気自動車比率は2%以下である。それも道理であろう。今回の「CE 04」で都会をチョロチョロが証明したように、バッテリー駆動の乗り物は、まだまだ短距離移動でこそ使い勝手が良いからだ。

 そんな電動バイクならば、所有しても良いと思った(価格の問題もあるが……)。

【画像】BMWの電動バイク「CE 04」を見る(6枚)

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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