めざすはちょっと遠くのカフェ? ロイヤルエンフィールド「コンチネンタルGT650」はそんなネオレトロなバイクだった

1901年に英国で誕生したバイクブランド「ロイヤルエンフィールド」が、現行モデルとしてラインナップする「コンチネンタルGT650」は、排気量648ccの空冷並列2気筒エンジンを搭載する、カフェレーサースタイルが特徴的なモデルです。試乗しました。

スタイル抜群、走り出せば良い時間を過ごせる

 1960年代から70年代にかけて、黄金期を迎えていたイギリスブランドのバイク達。排気量250ccクラスはもちろん、2気筒の500cc、650cc、750ccの存在は、日本製の4気筒エンジンが世界を席巻するまで、ビッグバイクのスタンダードでした。さらに音楽、バイク、レースにインスパイアされたライダー達が好んでカスタムをしたカタチ、それが「カフェレーサー」です。ロイヤルエンフィールドの「Continental GT 650(コンチネンタルGT650)」も、そんな時代をオマージュした1台です。でも、それだけではありません。

ロイヤルエンフィールド「Continental GT 650」に試乗する筆者(松井勉)
ロイヤルエンフィールド「Continental GT 650」に試乗する筆者(松井勉)

 ロイヤルエンフィールドが「Continental GT」というモデルを最初にリリースしたのは1964年で、当時はまさにイギリスバイクの黄金期です。単気筒250ccエンジンを搭載し、レーサーのようなFRPのガソリンタンク、クリップオンハンドル、レーシングスタイルのシート、回転計、後退したステップ、そしてサイレンサーのカタチにまで、レーサースタイルが封入されていました。

 今回走らせた「コンチネンタルGT650」を見ても、そのDNAはしっかりと受け継がれています。マテリアルこそ異なりますが、燃料タンクの形やクイックに燃料補給が出来るようにワンプッシュで開くアルミのタンクキャップも当時を思わせます(現行モデルではカバーで、その下にキー付きの燃料キャップが装備されています)。

 現行モデルは、2017年秋にイタリアのミラノで発表された、新しい並列2気筒650ccクラスのエンジンを搭載しています。フレームはダブルクレードルの端正な形をしたもの。少し離れてこのバイクを眺めて下さい。とくにシートの下端と平行に後方へ延びるパイプと、それがリアフェンダーの上で丸くラウンド形状となっているあたり、まるで60年代のバイクのようです。

ロイヤルエンフィールド「Continental GT 650」は各所にカフェレーサースタイルへのこだわりが見て取れる。搭載される排気量648ccの空冷並列2気筒SOHC4バルブエンジンも、その形状や磨き込まれたケースカバーなど存在感抜群
ロイヤルエンフィールド「Continental GT 650」は各所にカフェレーサースタイルへのこだわりが見て取れる。搭載される排気量648ccの空冷並列2気筒SOHC4バルブエンジンも、その形状や磨き込まれたケースカバーなど存在感抜群

 フロントフォークのボトムケースは黒く塗装され、2本のリアショックもこのスタイルにピッタリ。空冷エンジンのシリンダーからシリンダーヘッドへと膨らむように冷却フィンが形作る丸みも、全体にマッチしています。なによりケースとケースカバーの形状も、アルミをしっかり磨き込んだクラシカルで手のかかる手法をとっています。

 跨がってみます。820mmのシート高から想像するより足つき感は良好。細身で薄いシートフォームと細い車体のお陰でしょう。クリップオンハンドルとやや後退したステップから成るライディングポジションは前傾スタイルになりますが、お尻が高い位置にないので前のめり感はそれほど強くありません。

 速度計と回転計が並ぶ姿もビンテージ風味が香ります。ヘッドライトはマルチリフレクタータイプのハロゲンバルブ。これもこのバイクに似合っています。

 エンジンは空冷OHC4バルブの並列2気筒。さらにクランクシャフトを270度位相にして不等間隔爆発なので、ドコドコドコとエンジンの振動も味わいとして楽しめます。650ccクラスの排気量ゆえ低回転からトルクも充分。発進も楽にこなします。クラッチやアクセルも想定通りの手応えで、重過ぎず、軽過ぎず。走り出しにこれといったクセは感じませんでした。親しみやすいバイクです。

ライディングポジションは前傾になるが前のめり感はそれほど強くはなく、エンジンの振動を味わいとして感じつつ、市街地から高速道路、ワインディングまで気持ち良く流すことができる
ライディングポジションは前傾になるが前のめり感はそれほど強くはなく、エンジンの振動を味わいとして感じつつ、市街地から高速道路、ワインディングまで気持ち良く流すことができる

 前後18インチホイールを履く車体はハンドリングもとりわけクイックさを主張することなく、クリップオンハンドルの角度も適切で、市街地レベルの速度から思い通りのライディングを楽しめます。

 シフト操作は少しストロークが多めのため、しっかりとつま先でかき上げる、踏み込むというメリハリが必要でした。カフェレーサーを楽しむファッションとして、エンジニアブーツやレースアップ+ソールのしっかりしたブーツを履くこともあると思うので、もしかしたらメーカーの心遣いなのかもしれません。

 この日、雨上がりで路面が濡れている場所も多く、ワインディングを楽しめるほどではありませんでした。寒いせいもありましたが、ウエット時の接地感はもう少し高めて欲しいと感じました。しかしカスタムとしてタイヤを交換すれば選択肢は少なくないので、標準装備のタイヤもそれほど意識する必要は無いのかもしれません。

 ブレーキに関して、ルックスは抜群、あとはもう少し制動力を高めたチューニングが欲しいところです。グッと握り込めば制動力そのものはありますが、スポーツバイクらしく走ろうと思うと、フロントもリアも減速度が欲しい印象です。

 エンジンのパワーとトルクは4000〜5000rpmあたりを使い、あとはアクセル開度の大きさで加速感、排気音などを好みに調整するような走りをするのが楽しさに直結しています。タタタタと運び上げる力量は650ならでは。でも剛力過ぎて手に余る印象もありません。ちょうど良い。

 ツーリングで多用するコンスタントスロットルでの走行でも、風、音、風景を味わいながら流すのが最高。良い時間を過ごせます。このあたりになると、タイヤのこと、ブレーキのこともあまり細かく気にならなくなっている自分に気が付きます。

見た目も美しい燃料タンクキャップ。ワンプッシュでカバーを跳ね上げると鍵穴が現れる仕組み
見た目も美しい燃料タンクキャップ。ワンプッシュでカバーを跳ね上げると鍵穴が現れる仕組み

 スタイル抜群な「コンチネンタルGT650」は、高速道路を流していてもその余裕は充分。追い越し車線を急ぐよりも80〜90km/h程度で走行風が心地良いレベルで流す感じがぴったりのバイクでした。

 カラーリングによって価格(消費税10%込み)は97万円台から102万円台まで選択肢がありますが、色選びやオプションパーツで乗り出しからカスタムをしてしまう、という楽しさもあるでしょう。ライダー自身のスタイルにも気を遣い、皮やデニム、ヘルメットも含め、ビンテージ感に拘ったスタイルも楽しめる1台。

 元々イギリス発祥のロイヤルエンフィールドは、故郷でも好評だと言います。なるほど、現代に深く潜行し過ぎないプリミティブさ、それもこのバイクの魅力なんだ、と「コンチネンタルGT650」を走らせて思ったのです。

【画像】ロイヤルエンフィールド「コンチネンタルGT650」を見る(20枚)

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Writer: 松井勉

モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

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