一体どうやって決めた?鈴鹿8耐2022にHonda Dream RT SAKURAI HONDAが國井勇輝選手を起用した理由とは? レーシングライダー濱原颯道のレースレポート
日本で大人気の真夏の祭典、鈴鹿8耐のライダーは、各チームどのように決定しているのでしょうか。国内外で活躍するレーシングライダーの濱原颯道選手が、2022年の鈴鹿8耐でHonda Dream RT SAKURAI HONDAが國井勇輝選手起用の裏話を教えてくれました。
決め手は何にでも乗れる実力と可愛いキャラクター?
こんにちは!そーどーです。今回は、去年の鈴鹿8耐で、Honda Dream RT SAKURAI HONDAのチームメイトとして、國井勇輝選手に声を掛けた経緯をお話しして行きます。

國井君と初めて会ったのは、7年前くらいだった気がします。富士スピードウェイのカートコースで一緒に走ったのが最初かと。
ちなみに國井君は、元MotoGP 250㏄クラスの世界チャンピオンである青山博一監督率いる HONDA team ASIAでmoto3クラスに参戦していた日本のトップライダーのひとり。その時は「こういう子が世界戦で戦っていくんだろうなー」と勝手に期待していました。
その後は、博一くん(青山博一監督)がたまに日本でバイクトレーニングや自転車トレーニングをする時に僕も誘ってもらっていて、そのメンバーに國井くんもいたという間柄。
人懐っこくていじられたりもするし、藍にからかわれたりしていて、「なんかライダーには中々居ないキャラだな」と、可愛いやつだと思っていました(笑)

ライダーとしては、何に乗ってもそつなく乗れちゃうし、それでいて速い。あと、基本なにか言われても「はい!頑張ります!」と、言われた事はやって来る印象でした。
そんなこんなでしばらくして、國井くんが全日本ロードレース選手権に参戦する事に。その時に「去年まで世界戦で、250ccで戦っていたけど、身長も高くなったし器用だし、8耐には割とアリかも?」と思い、僕の中で桜井ホンダのライダーとして声を掛けようか迷った数人のうちの1人になりました。
そしてチームには國井君に声を掛けたい旨を伝え、とりあえず桜井ホンダのピットに呼びつける事に。
「なんで日本に帰ってきちゃったんだよ」って僕が言うと、「えへへ、でもまた戻るつもりでいますよそーどー君!」とニコニコしながら答える感じ。
その為の何かの手伝いになるかは分からないけど、「お、いいじゃん」と、僕もチームもその時に思ったと思います。

一番の決め手は、2022年の全日本の開幕で宿がたまたま同じだったので、僕らがご飯を食べている時に國井くんが来て、「えへへー、また会っちゃいましたね」って、本当に人懐っこくて。ムードメーカーなダイジロー(日浦大治朗)と人懐っこい國井くんの3人で組めたら、チームメイト同士でギスギスする事もなく表彰台を狙えるのでは?と思い、「必ず乗せてください」とチームに再度お願いをしちゃいました(笑)
ちなみに、僕の中での第一候補だった藍(小椋藍選手)には、「俺はヤダよ、勇輝誘いなよ」とずっと言われていた事もあり、勝手に藍のお墨付きだという風にチームにも推薦する事に。
こんな流れで、國井勇輝というライダーが僕とダイジローのコンビの第3ライダーという形で加入した経緯です!
3人のライダーが決定!そこで重要となるのがマシンのセッティング合わせ
國井君の初テストの感想は、「重いし曲がらないし、あっという間にコーナーが来る」でした。
去年は全日本のST600クラスに出ていたとはいえ、前年までは世界選手権のMoto3車両に乗っていた訳なので、排気量で言えばホンダ「CBR1000RR-R」のピストン1個分。その感想は、よくわかります。その後はなんとなく剛性の高いJSBマシンや、プロトタイプのBSタイヤにも馴染めてきて、チームや僕としても合格な所まで順応してくれました。

2回目のテストからは、遂にライダー3人が集結。多分ダイジローと國井君は、ほぼ初対面だったと思います。3人とも、いい意味でヘラヘラしていて、スイートルーム(チームの休憩室)では、アニメやお菓子の話ばかりしていました。
ピリピリ感0。こんな8耐は初めてで、凄く楽しい(笑)
実は8耐って、通常は誰がエースライダーになるかという、チームメイトが1番のライバルみたいな雰囲気が凄い事が多いんです。
でも、そんな感じでいると上手くまとまらなかったり、「今から俺がタイム出す」みたいに先走って転倒し、流れを悪くするなどという経験があったので、2022年の8耐はとても新鮮でした。

ちなみに8耐は、3人のライダーが1台のバイクで走るので、ポジションやセッティングの共有も重要なポイント。
僕は身長がかなり高く、体重も重いのでよく周りに「ペアライダーとのセッティングやポジションに苦しまない?」と聞かれますが、國井君は176㎝、ダイジローは180㎝くらい、僕は191㎝と割とみんな大柄で、さらに僕のバイクは跨ると、そこまでポジションが広く感じないと思うんです。まあ僕の感想ですが。
リアサスのバネレートも、僕は体重の割に柔らかいのが好みなので、そこまで大きなズレはありませんでした。
というより、正直僕は「なんでも上手く乗れる」という自信があったので、車体のセッティングの大まかな部分を2人に任せて、手元のスイッチで変更できる制御やエンブレの調整、パワーモードなど(アクセルを開けた時に手元では何%開いていて、バタフライ側では実際には何%しか開いてないみたいな調整方法)に集中し、そこで上手くバランスを取りました。
何より、僕がエースライダーだったとしても、仮に僕が常にチーム内のトップタイムじゃなかったとしても、このチームとこの2人となら何かを我慢してでも完走したいという気持ちが強かったです。

ちなみに僕とダイジローが予選のアタッカーだったのですが、唯一好みが違ったのがスイングアーム長。僕とダイジローでは、16㎜ほど僕の方が長いのを好んでいました。
そにため、ずっと短い状態で乗っていたのですが、「予選だけ伸ばしてくれ、1発出して来るから」と言って、僕はぶっつけでアタックをする事に。そして僕もダイジローも2分07秒2という、とてもバランスの取れた感じで予選を終える事ができました。
8耐のレースウィークもみんなリラックスしていて、僕が「微妙なコンディションだから、ちょっとわからせて来るよ」と言ってトップタイムを出したり、ダイジローも「ちょっとわからせて来るわ」と言ってファクトリーマシンに次ぐ2番タイムを出したり、その横で國井君が「マジでスゲーっす!俺も頑張ります!」と言うような、とてもほんわかした雰囲気でした。

こんな感じで、昨年のHonda Dream RT SAKURAI HONDAのライダーは決まりました。チームの方からも「颯道君のいう事は正しい事が多いから」と僕を信頼してくれて、とても感謝しています。
僕が桜井ホンダを離れる事になった時も、「僕の紹介だけどダイジローは使ってあげて下さい。本当に速いので」とお願いしたり、國井君は桜井ホンダ経由で教習所に通い、バイクの免許を取ったりと、チームに紹介して本当によかったと思えるライダー達と組めた2022年の8耐は、間違いなく僕の中で1番良い思い出に残るレースだったと思います!
そして、僕のわがままに5年も付き合ってくれたチームにもとても感謝しています。
ちなみに國井君が第3ライダーに決まった時に、唯一僕に「なんで俺じゃなかったんですか!颯道君と仲良くなったから声がかかると思ってたのに!」と言ってきた人がいます。
一体それは誰でしょう?(笑)知りたい方は、僕に直接聞いてください。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます!決勝の話はいつかします(笑)
そしてこれが買った車🚗
— 濱原 颯道 I AM YOUR RIDER (@Sodo_hh) March 29, 2023
HONDA S2000
借りて乗ったけどすごく乗りやすい事にびっくりした🙌
借りまくろ🤣 pic.twitter.com/cH1dGMjFyO
Writer: 濱原颯道(プロライダー)
全日本ロードレースでは国内2位、全日本スーパーモトでは国内3位の経験があり、他にもオフロードやストリートまでバイクならなんでも好きな男。普段は個人レッスンにマシンセットアップ、テストライダーなどと色々な活動をしている。バイクに関することならビギナーから国際ライダーまで、多くの人から相談を受けたりもしている。