50ccの2気筒エンジンで21500rpm!? ホンダ「RC116」(1966年)のDOHCエンジンが精密すぎる!!
1962年に世界ロードレースGPに新設された50ccクラスでは、2ストローク対4ストロークの激しい戦いが繰り広げられ、ホンダは1966年に「RC116」を投入。世界初となる50ccのDOHC2気筒エンジンを搭載していました。
1966年の世界グランプリで全クラス制覇したホンダ
2025年4月に「新基準原付」と呼ばれる新しい原付1種が加わりました。排気ガス規制のクリアが難しい排気量50ccクラスに変わって、最高出力が4.0kW(5.4PS)までに制限した、125cc以下のバイクを原付免許でも運転できるようになりました。
ホンダは同年10月に、新基準原付に適合した4モデルを発表し、これで国内向けの50ccバイクは生産終了を迎えた事になります。
ホンダが創業時から作り続けてきた50ccバイクですが、その長い歴史の中では、世界グランプリ(現MotoGP)に参戦した50ccマシンもありました。

ホンダの世界グランプリへの挑戦は1959年のマン島TTから始まり、2年後の1961年には125ccと250ccの両クラスでタイトルを獲得しています。
翌年の1962年には50ccクラスが新設され、ホンダも初年度から参戦しました。ホンダは350ccも含め3クラスでタイトルを獲得しましたが、50ccクラスだけは1勝にとどまり、初年度のタイトルを獲得したのはスズキでした。ホンダの4ストローク単気筒DOHC4バルブエンジンは、2ストローク勢に対して力不足という結果になりました。
小さな排気量のエンジンは、2ストロークの方が最高出力を出しやすい傾向にあります。ホンダがこだわった4ストロークで対抗するためには、より高回転でパワーを発揮できるエンジンが必要でした。ホンダはこの課題を多気筒化で解決していきます。
50ccとしては世界初となる空冷4ストローク並列2気筒DOHCエンジンを開発し、1963年の最終戦となる日本GPへ投入して優勝します。
さらに開発を進め、翌1964年シーズンは3勝を挙げました。しかし2ストロークの勢いは強く、悔しいランキング2位となります。
迎えた1965年はさらに激しい戦いが待っていました。ライバルであるスズキとのバトルはシーズン最終戦の日本GPまで続き、チャンピオン候補同士のトップ争いは最終ラップまでもつれます。
相手の転倒というドラマチックな結末でホンダ「RC115」が1-2フィニッシュ。ラルフ・ブライアンズ選手とホンダが、このクラス初のタイトルを獲得しました。
翌1966年には50ccクラスで6戦中3勝し、メーカータイトル2連覇を達成します。この年は最大排気量の500ccクラスにもエントリーし、全5クラスでメーカータイトルを獲得する偉業を成し遂げ、ホンダの第1期世界GP黄金時代のピークとなりました。
その一翼を担ったのが、50ccクラスの「RC116」(1966年)です。

ホンダの50ccクラス参戦は1966年で終了したので、このクラスのファクトリーマシンは「RC116」が最終型となります。「RC116」のエンジンは60年経った今でも、50ccの4ストローク車で最も精密なエンジンであると言えます。
50ccの2気筒なので、25ccの小さなピストンが2個、さらにその上に細い吸排気バルブが4本ずつ、計8本も並んでいます。2本のカムシャフトはカムギアで駆動されており、これらの構造により21500rpmという超高回転で14PSを発揮し、最高速は175km/hと発表されています。
排気量別のエンジンパワーを比べる際に、1000ccに換算して「1リッターあたり何PS」という言い方をします。それで換算すると、1000ccなら280PSものパワーを発揮することになります。細くて軽いギアで構成された精密機械が、(換算上は)現代のスーパーバイクやMotoGPマシンに匹敵するような高出力を発揮していた訳です。
軽量化を徹底した車体重量(乾燥)はわずか50kgで、フロントブレーキは自転車のようなリムブレーキとなっています。「175km/hも出るバイクなのにリムブレーキ!?」と誰もが不思議に思うところですが、当時の50ccクラスにはハードなブレーキングが必要なかったと言われています(その分コーナリングスピードは速いと思われる)。
ホンダは2ストローク車に対抗するために他のクラスでも多気筒で高回転型のエンジンを開発しており、50ccの2気筒エンジンを2.5倍にした125ccエンジンもありました。
1966年に125ccクラスタイトル奪還を果たした「RC149」は、125ccで5気筒というとんでもないエンジンでした。
サーキットを全開で駆け抜ける、50ccの2気筒や125ccの5気筒エンジンの排気音を聞いてみたいものです。
■ホンダ「RC116」(1966年型)主要諸元
エンジン種類:空冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブ
総排気量:49.8cc
最高出力:14PS以上/21500rpm
乾燥重量:50kg
【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)
Writer: 柴田直行
カメラマン。80年代のブームに乗じてバイク雑誌業界へ。前半の20年はモトクロス専門誌「ダートクール」を立ち上げアメリカでレースを撮影。後半の20年は多数のバイクメディアでインプレからツーリング、カスタムまでバイクライフ全般を撮影。休日は愛車のホンダ「GB350」でのんびりライディングを楽しむ。日本レース写真家協会会員









