「燃料消費率」は参考になる? ならない? バイクのスペック表を読み解く!
バイクのカタログや、メーカーHPに掲載されている「スペック」や「仕様」、「諸元」の表には、購入時の参考やライバル車との性能比較など、役立つ情報が含まれています。「燃料消費率」は経済性や航続距離に影響するので、良いに越したことは無いのですが……。
燃費の表示は、2種類ある!?
バイクやクルマに関する情報や会話で、よく出てくる言葉に「燃費」があります。これは「燃料消費率」を略した呼び方ですが、スペック表には必ず記載されています。日本メーカーの場合、燃料消費率の単位は「km/L(キロメートル・パー・リットル)」で表示され、燃料(バイクの場合は基本的にガソリン)1リットルで何キロメートル走れるかを表しています。そのため、この数値が大きいほど「燃費が良い」、そして数値が低いと「燃費が悪い」と言われます。

しかし近年の国産バイクのスペック表を見ると、燃料消費率の欄に「国土交通省届値:定地燃費値」と「WMTCモード値」の2種類が記載されています。この違いは何でしょうか?
まず「国土交通省届値:定地燃費値」は、その名前からもわかるように国土交通省に届け出ている正規の燃料消費率で、平坦な舗装道路を乗車定員いっぱいに乗った状態で、一定のスピード(排気量50cc=第一種原動機付自転車は30km/h、その他は60km/h)で走って測定した燃費になります。
とは言え実際の走行では信号等での停止や発進、交通状況に合わせて加速や減速もすれば、道路がずっと平坦ということもありません。そのため定地燃費値の数値は、あまり現実的でないというのが実情です。

対する「WMTCモード値」は、2012年10月からバイクメーカーが自主的に表記するようになりました。こちらはシャシーダイナモと呼ばれる機械にバイクを乗せて、発進や加速、停止などを含んだ国際基準で定めた走行パターンで動かして排出ガスの試験を行い、一酸化炭素と二酸化炭素、ハイドロカーボン(炭化水素)の排出量に係数をかけて導き出します。
ちなみに測定モードは最高速度や排気量を基準に、大きく3クラス、細分化すると5クラスに分かれており、1名乗車の負荷の状態で計測します。少々難解ですが、実際に使ったガソリンの量ではなく、排出ガスを元に算出するのが特徴です。
相応に参考になるWMTCモード値
WMTCモード値は様々な走行パターンを想定しているため、定地燃費値よりも実際の燃費に近いと言えます。もちろん実際の乗るシーン(街中or長距離ツーリング)や走り方(飛ばすorノンビリ)はライダーによって千差万別なので一概に言えませんが、1000cc前後の大排気量車で高速道路を含めた長距離ツーリングを行なうと、WMTCモード値にかなり近い燃費になることがあります。反対に排気量が少ないバイクはWMTCモード値より実際の燃費が劣る(7割くらい?)傾向があるようです。それでも十分に参考になるでしょう。

バイクを配達などの業務用に使うわけでなもければ、燃料消費率の良し悪しでバイクを選ぶライダーは多くないかもしれません。しかし燃費が良い方が経済的で、ガソリンスタンドに立ち寄る頻度が減るのは事実です。

また同じ排気量でもエンジンの気筒数や最高出力が異なると、燃料消費率はけっこう変化します。たとえばカワサキの「Ninja 250」(2気筒)と「Ninja ZX-25R」(4気筒)を比べると、その差に驚くかもしれません。このあたりはバイクの特性と言うか、性格を決定づける要素のひとつとも言えるでしょう。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。