小排気量バイクに見る、燃費性能の逆転現象!? ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.190~

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、ホンダの原付バイク「クロスカブ」シリーズが魅力的だと言います。どういうことなのでしょうか?

カタログ数値と実体験による燃費性能比較、とでも言いましょうか……

 僕(筆者:木下隆之)はホンダの原付バイク「クロスカブ」の雰囲気にすっかり魅せられてしまいました。その名から想像する通り、ベースは「スーパーカブ」ですが、細部にアクティブなアイテムを盛り込むことで、生活感を打ち消しているのです。

ホンダの原付2種ビジネスバイク「スーパーカブ110」(左)をベースに、アウトドアテイストのクロスーバースタイルに仕上げられた「クロスカブ110」(右)
ホンダの原付2種ビジネスバイク「スーパーカブ110」(左)をベースに、アウトドアテイストのクロスーバースタイルに仕上げられた「クロスカブ110」(右)

「スーパーカブ」と言えば、蕎麦屋の出前であったり、新聞配達の足として活躍してくれています。日本の社会を支えてくれるビジネスバイク界のスーパースターなのですが、デザインをちょっと変えただけで、休日の遊びが似合うバイクに変身するのだから感心します。

 さらには、経済性がとても高いのです。もちろん「スーパーカブ」がベースなので、耐久性も経済性も秀でていることに疑いはありません。好燃費であろうことは予測していましたが、それでも驚愕的な燃費に腰を抜かしかけたのです。

「クロスカブ」シリーズには、排気量49ccの「クロスカブ50」と、排気量を109ccにまで増やした「クロスカブ110」がラインナップされています。キャラクターはほぼ共通で、車体寸法は「110」の方が若干前後に長く、左右に広く、天地に高いのです。車両重量は7kgしか変わりませんが、またがった感覚からすれば「50」よりも「110」の方がはるかに大きいような気がします。

「50」は原付らしくシートにちょこんと座る感覚ですが、「110」ではバイクに乗って走る感覚が味わえます。このようにライディングフィールに違いがあるのですが、不思議なことに、燃費性能はほとんど変わらないのです。

 カタログ数値で言えば、燃料消費率(WMTCモード値、いずれも同じクラス1)では「50」が69.4km/lで「110」が67.9km/lと、その差わずかです。日常で走り込んだ感覚からすれば、むしろ力強さを感じられる「110」の方が燃費に優れていたような気がします。

 排気量は2倍以上の差があり、最高出力も3.7PSに対して8.0PSと約2.5倍です。燃費はパワーと排気量に反比例するものとばかり思っていたので、これは驚きです。

 開発時のセッティングにも影響するのでしょうが、排気量によるパワーの大きさがアドバンテージとなって、同じ条件下での走行では必要以上に回転数を上げて頑張ってしまうことが少ないからかもしれません。回さないからガソリンを消費しない、ということなのでしょう。

 小さな差ですが、車体が重たくても排気量が大きくパワーで勝る方が燃費が良い。そんな逆転現象が起きているような気がします。

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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