スペック表から読み解く! 「変速比」と「減速比」はナニが違う?
バイクのカタログや、メーカーHPに掲載されている「スペック」や「仕様」、「諸元」の表には、購入時の参考やライバル車との性能比較など、役立つ情報が含まれています。「変速比」や「減速比」でバイクの性格が分かる……かも!?
回転数を「減速・変速」して走りやすくする
スポーツバイクのスペック表の「変速比」の欄を見ると、そのバイクのギア段数ごとに数値が記載されています。また「一次減速比/二次減速比」の欄にも、似たような細かな数値値が書かれていますが、いったいにナニを変速したり減速したりしているのでしょうか?

じつはバイクのエンジン(クランクシャフト)が生み出す力(トルク)は意外と小さく、そのままではバイクの重量やライダーの体重、荷物などを動かすには十分ではありません。エンジンはかなりの高回転で、歯車などを使って回転数を下げる、すなわち「減速」することで、回す力(トルク)を大きくしています。これは理科や化学で習うテコや滑車の原理に似ています。
そこでまず、クランクシャフトからトランスミッション(変速機)に回転を伝える際に減速しますが、これを「一次減速」と呼びます。伝達されるトランスミッション側のギアの歯数を、伝達するクランクシャフト側のギアの歯数で割った数値が「一次減速比」になります。

次にトランスミッションによって、一次減速で伝わってきたエンジンの回転を坂道や平たん路など走るシーンや、高速道路など速度域の違いに合わせて、扱いやすく効率の良い回転数に切り替えて、後輪に伝えます。
6速のバイク場合は6セットの変速ギアがあり、ここでも主に「減速」していますが、車種によっては6速など高いギアでは増速している場合もあるため「変速」と呼んでいます。
後輪に伝える側(アウトプット)のギアの歯数を、クランクシャフトからクラッチを介して回転が伝わる側(インプット)のギアの歯数で割った数値が「変速比(ギヤレシオ)」になります。
そしてトランスミッションのアウトプット側の軸に設けたドライブスプロケットと、チェーンを介して後輪のドリブンスプロケットを回すところが「二次減速」です。ドリブンスプロケットの歯数をドライブスプロケットの歯数で割った数値が「二次減速比」になります
カワサキのスペック表が分かりやすい!
カワサキのスペック表は、減速比や変速比の数値の後に、ギアやスプロケットの歯数が記載されています。いずれも左側が伝達される側の歯数なので、これを右側の伝達する側の歯数で割ると、減速比や変速比になります。

たとえばカワサキ「Z900RS」の変速比を見ると、1速~5速は「1より多く」、カッコ内のギアの歯数も左の伝達される側が多いので「減速」していますが、6速だけは「1より少なく」なっており、歯数も伝達する側の方が多いので「増速」していることが分かります。
このような変速比を持つバイクは、6速に入れることでエンジンの回転数がグッと低くなり、燃費が向上したり排気音や振動を低減することができます。かつてはこのように変速比が1より少ないギアを「オーバートップ」と呼んでいました。
スポーツ性に影響するギヤレシオや二次減速比
また、各ギアの変速比の数値の差が少ない(変速比の間隔が狭い)トランスミッションを、「クロスミッション」と呼んだ時代もありました。これはシフトアップした時にエンジン回転が落ち込まずに鋭く加速でき、シフトダウンする際もエンジンブレーキが強く効かないので、レースやスポーツ走行向きでした。
しかし近年のスポーツバイクの多くは、昔のクロスミッションと同等か、それ以上に接近した変速比のトランスミッションを装備するようにななったため、クロスミッションという表現をしなくなりました。

あくまで一般論としての傾向ですが、二次減速比が小さい方が高速重視で、大きい方が加速重視になります。これは排気量やエンジン型式が異なるバイクでは比較できませんが、同じ機種でもマイナーチェンジした時などに変更されることがあるので、そんな場合は参考になります。
このように、かなりマニアックではありますが、変速比や減速比はそのバイクの特性を知る上でヒントになることも多いのです。
ちなみに、二次減速比に関係するドライブスプロケットやドリブンスプロケットは、歯数の異なるアフターパーツが相応に用意されているので、カスタムやサーキット走行などを楽しむ際に、セッティングとして変更する場合も少なくありません。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。






