「玉押し調整」って? 自転車の車輪の回転は小さな鉄の球が支えている
どれだけ修理しても車輪がスムーズに回転しない自転車は、「玉押し調整」を試しても良いかもしれません。根本のところで車輪の回転状態を左右するハブの構造とともに、聞き慣れないメンテナンスを紹介します。
わずか数ミリの鉄球の状態で、転がりが変わる
毎日乗っている自転車は、大事な相棒として日々のメンテナンスは欠かさず、タイヤの空気もしっかり入れてチェーンの注油も定期的に行っている……それなのに、なぜか新品の頃よりタイヤの転がりが悪くなっていると感じることはないでしょうか。

確かに、タイヤの摩耗やチェーンの伸びなど、全体的な経年劣化によって新品の時のように走り続けることは難しいものですが、それぞれのパーツを交換しても変わった気がしない場合、意外と見落としがちな「車輪」そのものに注目してみましょう。
車輪の回転の中心となる「ハブ」の中には小さな鉄の球が封入されており、その状態をチェック・調整することで、タイヤの転がりが改善されるかもしれません。そんなメンテナンスを「玉押し(玉当たり)調整」と言います。
自転車の整備に関わらない人だとなかなか聞き慣れないと思いますが、これにはまずハブの構造を説明する必要があります。
前輪と後輪で違いなどはありますが、自転車のハブは基本的には「ハブボディ」などと呼ばれる筒状のパーツに「ハブ軸」という1本の棒が刺さっている構造になっています。
乱暴な例えですが、ちくわの穴にキュウリを挿したイメージです。車輪が転がる時にはきゅうりは動かず、ちくわがぐるぐる回ります。そしてそのキュウリ=ハブ軸は、抜けたり左右に動いてしまわないように「ロックナット」で固定され、その内側に「ベアリング」という直径4~6mm程度の小さな鉄の球がハブ軸を支えるように複数配置されています。
日常生活ではまず目にすることのない「ベアリング」ですが、世の中の機械で何かが回転している部分には必ずと言って良いほど使われています。
ベアリングの役割は、摩擦を減らして回転を滑らかにすることです。身近な所では、少し前に流行った「ハンドスピナー」が、まさにベアリングを使った玩具になります。
そのベアリングを押さえている部品を「玉押し」と言い、玉押しの締め込み加減によって「車輪」の転がりが変化します。玉押しを締め込み過ぎるとゴリゴリといった感触で動きが悪くなり、極端に言うと車輪が回らなくなります。
逆に、玉押しの締め付けが緩過ぎると軸が固定されずにグラグラと動いてしまい、いわゆる「ガタがある」状態になり、車輪自体は転がるものの、最悪の場合は中のベアリングが破損し、最終的には車輪が転がらない状態にまで発展してしまいます。
ゴリゴリせずにガタもない理想の状態にセッティングすることが「玉押し調整」という作業です。
どれだけ修理しても車輪の転がりが良くならないという自転車は、この「玉押し調整」を行なってみても良いかもしれません。ただ、「玉押し調整」は細かい部品を扱うことになり、最適の状態については何か目安があるわけでもなく、調整する人の経験がモノを言う感覚的な作業です。できれば練度の高い自転車屋に依頼した方が良いでしょう。
また、実際にハブを分解してみると、ベアリングやベアリングを入れ込む皿状の部分に傷や破損があるなど、「開けてみたら調整不可能だった」という場合もあるので、調整を依頼する際はその可能性も念頭に置くと良いでしょう。