もはや絶滅危惧種?しましま模様の板がついた信号機とは
非常にレアケースではありますが、しましま模様の板がついた信号機が設置されていることがあります。いったいなぜこのような仕様になっているのでしょうか。
いったいなぜ?しましまの板がついた信号機の役割とは
道路上に存在する信号機はどれも同じように見えますが、設置される場所や環境、信号機のメーカーなどによって少しずつ違いがあります。時には、ちょっと変わった信号機が設置されることも少なくありません。

例えば、緑と白のしましま模様の板を背面に取り付けたレアな信号機があります。この板の正式名称は「信号灯背面板」といいます。動物のシマウマ(ゼブラ)の模様に似ていることから、「ゼブラ板」と呼ばれる場合の方が多いかもしれません。
実際のシマウマは黒と白のしま模様ですが、ゼブラ板に使われている色は「緑と白」または「黄と黒」であると、法令で定められています。ちなみに、しま模様の幅は10cmと決められているそうです。
なお、緑と白のゼブラ板は街中に設置されることが多く、黄と黒のゼブラ板は工業地帯などでよく見られるようです。
かつての日本の道路では、ゼブラ板が取り付けられた信号機はたくさん存在しました。昭和40年代から50年前半にかけてバイクで街中を走れば、ゼブラ板の信号機はあちこちで目にすることができたそうです。しかし現在では、基本的にゼブラ板は廃止されてしまったため、その姿を見ることはほとんどなくなりました。
ではこのしま模様の板には、一体どのような意味があるのでしょうか。

終戦後まもない日本では、慢性的な電力不足に悩まされていました。そのため、信号機の光量も不足していたため、信号灯が薄暗く見づらかったそうです。そして光量の乏しい信号灯の視認性を良くするために、信号機の背後にゼブラ板が設置されるようになりました。
しかし、次第に信号機に使われる電球の性能が向上していき、電力不足も解消に向かったことで、ゼブラ板の必要性が大幅に減少していくことになったようです。また、ゼブラ板は思いのほか風の影響を受けてしまうため、信号機が揺れて危険という問題や、派手なカラーリングが景観を損ねるという指摘がありました。
前述のような問題を抱えていることに加え、信号機の視野性の問題が解消されたことでゼブラ板は昭和50年代ごろから撤去されることになったようです。
こうした時代背景もあり、ゼブラ板のついた信号機は瞬く間に街中から消えていきました。

そして現在では、古い信号機から省エネで視野性に優れたLED信号機への交換が全国で進められています。交換のペースは都道府県によってばらつきがありますが、都内では100%LED信号機に切り替わっているそうです。
そうしたなか減少の一途をたどるゼブラ板の信号機ですが、現在でもわずかながら存在している場所があります。また今でもゼブラ板がつけられているのには、いくつか理由があるようです。
それは西日などの強い太陽光が信号機の後方から射し逆光になる場合や、信号機の間隔が近すぎて見間違いを起こしやすい場所など。また繁華街など、周囲に派手な看板があるような場所でも信号灯の色が背景に溶け込んで見づらくなるため、ゼブラ板を取り付けることがあるようです。
このような条件が重なった場所では、新しいLED信号機に交換された場合でも、ゼブラ板が新たに設置されるケースがあります。このLED信号機にゼブラ板という組み合わせは、かなりのレアケースといえるかもしれません。
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なお警視庁によると、令和5年3月末の時点で、全国の車両用の信号機の総数は約127万灯あるそうです。そのうちLED信号機の数が約90万灯で、全体に占める割合の約71%におよんでいます。
今後も引き続き整備を進めていく方針ということなので、老朽化した古い信号機はどんどん姿を消していく運命にあります。そう考えると、昭和の時代から残っているゼブラ板の信号機は、絶滅寸前の貴重な信号機といえるかもしれません。