ストレスフリーですぐ馴染み扱いやすい2ストモデル!? KTM「150 EXC」はオフ入門から上級者までカバーする!!
排気量143.99ccの2ストロークエンジンを搭載するKTMのエンデューロマシン「150 EXC」は、2024年型で全面的に刷新されました。ヘッドライトはLED、始動はセルのみ、燃料供給方式も変更されています。一体どのような乗り味なのでしょうか。「ワイルドクロスパークGAIA」での試乗レポートをお届けします。
トップエンドで味わえる、2ストらしい伸び
車体重量97.8kg(燃料なし)の軽量なボディに、最高出力36.7PSを発揮する水冷2ストローク単気筒エンジンを搭載。その走りは俊敏で、どこにもストレスを感じずオフロードと向き合えます。

長野県の「ワイルドクロスパークGAIA」で開かれたKTM、ハスクバーナ・モーターサイクルズ、ガスガスの最新エンデューロモデル試乗会にて最初にKTMの2ストモデル「150 EXC」乗ったところ、早くも「これは今日イチかも!?」と予感させるほど、コントロール性、パワー、トータルバランスに優れているではありませんか。
エンジンは低中速域からトルクがしっかりとあり、扱いにくさなど感じません。そして高回転ではしっかりとパワーを伴いつつ、気持ちよくトップエンドまで伸びていきます。
衝撃吸収性に優れたニューフレームは剛性を強調し過ぎず、スリム化されたこともあって身体にすぐ馴染みます。
エントリーモデルと侮るなかれ
「150 EXC」は、KTMのエンデューロマシン「EXC」シリーズのエントリーモデルに相当しますが、そこは競技専用モデルであり、戦闘力は凄まじいレベルにあります。

オフロードコンペティション車では、排気量125ccクラスの2ストモデルであってもパワーは充分ですが、ボア×ストロークを54.5×58mmで排気量を143.99ccにまでスケールアップすることで、低中速トルクを太らせ、さらに強力な出力特性を獲得しているのでした。
それでいてピーキーさはなく、右手のスロットル操作とライダーの意志に忠実に応えてくれます。2ストだからって、難しさなどありません。
距離を稼ぐ配置にツインインジェクター
2024年モデルでは、燃料供給方式が従来のTPI(トランスファー・ポート・インジェクション)に代わり、新たにTBI(スロットル・ボディ・インジェクション)を採用しました。TPIでは掃気ポートで燃料を噴射しますが、TBIでは燃焼室からより距離を稼げるスロットルボディにて燃料を噴射し、霧化特性を向上します。

燃焼室からより遠くにインジェクターを置いたことに加え、ツインインジェクターとしていることも見逃せません。スロットルフラップの前と後ろ、2カ所に配備し、アイドリング~低回転時は下流側のインジェクターだけを使って燃料を供給し、回転が上がるにつれ2本のインジェクターを作動。燃焼効率により優れる混合気をシリンダーへ送り込みます。
さらに、電子制御式のパワーバルブを新採用しました。従来はエンジンの回転数によってバルブの開閉を制御する機械式でしたが、新型はECUによるコンピュータ管理でより緻密な制御を可能とし、エンジンマッピングも精巧で的確なものへとバージョンアップを果たしています。
エンジン始動はキック廃止でセルのみに
2024年型の「EXC」モデル2ストロークエンジン全般で言えるものですが、キックスタートを廃止しています。従来型はセル/キック併用でしたが、セルスターターおよびバッテリーの性能、信頼度や実績からでしょう。キックをなくすことで軽量化にも貢献しています。実際、エンジンはボタンひと押しですぐに目覚め、キックアームの必要性は感じません。
エンジン搭載位置を2度後方へ傾斜させ、スプロケットの位置は3mm下がっています。加速時のトラクション性能が高まっているのは、こういった改良も好影響をもたらしていると思われます。
足まわりも強力に武装
インナーチューブ径48mmのWP製XACT-USD倒立フォーク(クローズドカートリッジフォーク)は300mm、WP製XPLOR PDSショックアブソーバーは310mmと、余裕あるストローク量を確保。初期荷重ではしなやかに動き、奥でしっかりと踏ん張りが効き、ウェーブディスクを持つブレーキを含み、足まわりも一線級なのは言うまでもないでしょう。

シート高は963mmで、身長175cm/体重64kgの筆者(青木タカオ)がまたがると、片足のつま先が地面に届きます。オフロード競技車両としての足つき性は標準的で、100kgを切る車体の軽さによって取り回しは苦になりません。
従来のヒューズに代わるOCU(オフロードコントロールユニット)を搭載し、クラッシュした時に自動的にエンジンを停止させるロールオーバーセンサーも新装備するなど、電装も進化させています。
車体価格(消費税10%込み)は122万5000円で、製品のポリシーとして“REDY TO RACE”を掲げる通り、買ってそのまま即エンデューロレースなどに参戦可能。ビギナーが腕を磨くのにも最適ですし、上級者がアグレッシブに走らせれば表彰台を狙えます。
競技用2ストローク150ccクラスでは唯一のEFI車であり、セルスターター搭載モデルであることも、推しポイントになるでしょう。
Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。