BMW Motorrad新型「R 1300 GS」の乗り味は、至れり尽くせりで「鬼に金棒」だった!!
問題点を探してみたものの……
試乗会は、午前に慣熟を前提としたグループ走行、午後は媒体ごとにフリー走行、という流れで行なわれました。午前の走行を終えた時点で印象的だったのは、同業者全員が、満面の笑みで「R 1300 GS」を絶賛していたことです。その様子を見た私の中には「これでは全員のインプレが似たような内容になってしまう。せめて自分だけでも、異論を述べなくては」……という妙な使命感が芽生え、午後の走行は懐疑心を持って臨むことにしました。

もっとも、実際に私が発見した「R 1300 GS」の問題点は、エンジンパワーの増大に伴って強化されたクラッチの操作がちょっと重いこと、テールランプ一体式LEDリアウインカーの被視認性が相変わらずいまひとつなこと、先代の「R 1250 GS」より車重が12kg軽くなっていても(ヨーロッパ仕様のスタンダードで比較した数値)、やっぱり押し引きが楽ではないこと、くらいだったのです。
それどころか、午後の試乗を始めて30分ほどで懐疑心は消え去り、以後はこのモデルの魅力にひたすら感心することになりました。
じつは当初の私は、「90%以上の部品が新設計なのだから、完成度では熟成が進んだ先代に及ばないはず」と思っていたのですが、「R 1300 GS」は生まれながらにして、抜群の完成度を備えていたのです。
尋常ではないフレンドリーさ
最高出力に加えて最大トルク(先代+7Nmの149Nm)も向上したエンジン、操舵と緩衝の分離を推し進めたテレレバー式フロントサスペンション、良好なトラクションを意識してロング化されたスイングアーム、空力性能向上が実感できるスクリーン+外装など、「R 1300 GS」の魅力はいろいろな視点から語ることができます。とはいえ、私がこのモデルで最も感心したのは「尋常ではない……」と言いたくなるレベルのフレンドリーさでした。

もっとも、先代だって十分にフレンドリーだったのです。でも新型の場合は、走り始めた直後から車体が小さく、細くなったように感じますし、右へ左へといった動きは明らかに先代より軽快です。
そしてエンジンは常に従順で優しく(とはいえスロットルをガバッと開ければ、フロントまわりが簡単に離陸する)、車体はどんな状況でも良好な乗り心地と濃厚な接地感を維持してくれます。
いやはや……これはもう「至れり尽くせり」と言って良いのではないでしょうか……。
そんな私の思いをさらに強くしたのが、アダプティブライドハイトコントールです。同様の機構はすでにハーレー・ダビッドソンが「パンアメリカ1250スペシャル」で採用していますし(ただし自動調整が行なわれるのはリアのみ。「R 1300 GS」は前後とも自動で上下する)、体格が大柄で巨大なバイクを苦にした経験があまり多くない私は、そういった機構の必然性を感じていなかったのですが……。
今回の試乗では、自動で行なわれる車高調整がムチャクチャありがたかったのです(停止時のシート高は820mmで、速度が50km/hを超えると約3秒で850mmに上昇し、25km/hを下回ると約1.5秒で820mmに下降。作動は素晴らしく滑らかで、下降時のハンドリングの違和感は皆無)。中でも、走行写真の撮影時の狭路でのUターンと、オフロードを走った際の安心感は特筆モノで、私の頭には「鬼に金棒」という言葉が浮かびました。
小柄な女性ライダーでも楽しめる?
当原稿を書いている最中にふと思い出したのは、技術説明会の待ち時間に会場で流れていた動画です。この種のバイクの慣例に従い、プロモーション動画では快走路での疾走シーンやオフロードをガンガン攻める様子を見ることができるのですが、それとは別に、小柄で、そんなに経験豊富ではなさそうな女性ライダーが、オフロードをトコトコ走る動画が流れていました。

現場でその動画を見た私は、どうしてこんな微妙なモノを? という気がしたのですが、いまになってみると2種の動画は示唆的で、「R 1300 GS」の開発には、経験豊富なエキスパートだけではなく、そういったライダーも参加したのではないかと思います。
だからこそこのバイクは、尋常ではないレベルのフレンドリーさ、至れり尽くせりにして「鬼に金棒」な乗り味が実現できたのでしょう。
Writer: 中村友彦
二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。





























