“走り”は同じじゃない!? ハスクバーナの兄弟車「ヴィットピレン801」&「スヴァルトピレン801」比較試乗!!
スウェーデン発祥のハスクバーナ・モーターサイクルズが誇る兄弟車、「ヴィットピレン801」と「スヴァルトピレン801」は、いずれもKTM「790デューク」譲りの排気量799ccの水冷パラレルツインを搭載しています。実際に乗り比べると走りはどう違うのでしょうか?
「白い矢」と「黒い矢」
2013年からKTMファミリーの一員となっているハスクバーナ・モーターサイクルズのルーツはスウェーデンにあり、車名にも母国語の響きが残されています。「ピレン」は「矢」を意味し、「ヴィット=白」、「スヴァルト=黒」を表すため、両車のモデル名はそれぞれ「白い矢」と「黒い矢」のイメージです。
細身でシャープなスタイルは、まさに矢を思わせるもの。果たして、その走りもまた矢のように鋭いのでしょうか。
ロードスターの「Vitpilen 801(ヴィットピレン801)」と、スクランブラーからインスピレーションを得た「Svartpilen 801(スヴァルトピレン801)」は、いずれもエンジン同様「790デューク」譲りの基本コンポーネントを共有する兄弟車です。

両車の違いは、外装パーツや標準装着タイヤの銘柄などに限られるようにも見えます。しかし実際に乗り比べてみると、走りのキャラクターは見た目以上に、明確な差別化が図られていることがわかりました。順を追って説明しましょう!
走るとわかるハンドリングの違い
2台の違いが最もわかりやすく表れているのが、フロントマスクです。ヴィットピレンはレンズとケースを廃し、60個のLEDによるデイタイムランニングライトと、Bi-LEDプロジェクターを用いたヘッドライトを採用。個性的なフロントマスクを演出しています。
一方、スヴァルトピレンもヘッドライトを取り囲むようにリングタイプのLEDポジションライトを配置。こちらはレンズ付きとし、フライスクリーンを組み合わせることで、ヴィットピレンとは異なる表情を見せています。
アルミ製のテーパーハンドルは、ほとんど高さが変わりません。スクランブラースタイルのスヴァルトピレンの方が、ハンドル1本分ほど高いかな、と感じる程度で、オフロードに対応するスチール製クロスメンバーが追加されています。
トップブリッジやアンダーブラケットは共通で、ステップ周りにも違いはありません。ヴィットピレンは低くマウントされたハンドルバーにより前傾のスポーティな姿勢をとり、スヴァルトピレンはアップライトでリラックスしたライディングポジションとなることが、跨がればすぐに分かりました。シート高はスヴァルトピレンが820mm、ヴィットピレンは838mmです。

走り始めて、すぐにハンドリングの違いに気づきます。ロードスターであるヴィットピレンは、軽い操作で車体がスッと向きを変え、“コーナリングマシン”と呼びたくなるほどの高い旋回力が際立っています。
一方のスヴァルトピレンは、倒し込みや切り返しで軽快さよりも若干の落ち着きがあり、旋回に入ってからもゆったりとした穏やかな挙動を感じさせます。
ヴィットピレンがライダーの操作に素早く反応してスッと寝ていくのに対し、スヴァルトピレンは直進安定性の高さを感じさせ、ライダーが意識して操作することで車体がバンクしていくのです。
とはいえ、向きを変え始めれば、ライダーの意思に対して車体は素直に反応し、身のこなしは非常に軽快。速度域によって挙動が大きく変化することもなく、操作に対して一貫した動きを示すため、扱いやすさにもつながっています。
スヴァルトピレンは荒れた路面でも車体の挙動を乱しにくく、スクランブラーらしい安定感があります。クイックに向きを変える、すばしっこいヴィットピレンに対し、スヴァルトピレンはどんな路面でも余裕を持って走れる懐の深さが魅力です。
足まわりは共通なのにナゼ?
前後サスペンションのストローク量はフロント140mm/リヤ150mmで共通。ホイールは前後17インチで、共通デザインのブラックアルマイト仕上げ。フロント120/70ZR17、リア180/55ZR17というタイヤサイズも変わりません。
ただし、標準装着タイヤが異なります。ヴィットピレン801がミシュラン「ROAD 6」、スヴァルトピレン801がピレリ「MT60 RS」を履いています。
ハンドリングの違いは、タイヤの違いが大きく影響していると考えられます。ラウンド形状やトレッドパターン、内部構造などの違いが、車体の動きに影響を与えているのでしょう。
ブロックタイヤのようなワイルドなトレッドパターン(溝)を持つ「MT60 RS」は、アスファルト路面での優れたグリップ力とハンドリング性能を持ちながら、フラットダートなどの軽いオフロード走行もこなせる設計になっています。

前後サスペンションはWP製APEXで、インナーチューブ径43mmの倒立式フロントフォークはオープンカートリッジタイプ。ハスクバーナのエンブレムが施されたラジアルマウント式4ピストンキャリパーには、ブレンボ傘下のスペインメーカー、J.JUAN(ホタ・ホワン)製を採用しています。
フロントディスク径は300mm。インナーローターには、GALFER(ガルファー)のエンブレムも確認できます。リアブレーキのディスク径は240mmで、ボッシュ製のコーナリングABSシステムを搭載。「スーパーモトABS」モードを選択すれば、リアタイヤのABSを解除することも可能です。
リアサスペンションはリンク機構を持たないモノショックです。アルミダイキャスト製のスイングアームはオープンラティス形状とされ、外側にリブ(補強)を露出させています。最適な剛性としなりを両立し、軽量化を図りながら優れたトラクションも生み出します。
285度位相クランクが生むトラクション性能
軽量高剛性なクロームモリブデン鋼製チューブラーフレームは、エンジンをストレスメンバーとして活用。KTM「790デューク」譲りの排気量799ccの水冷パラレルツインは、軽量かつコンパクトなパッケージに仕上げられ、スヴァルトピレン、ヴィットピレンいずれも最高出力105PSを発揮します。
ピークパワーの発生回転数が「790デューク」の9500rpmに対して9250rpmと、わずかに低く設定されていることも見逃せません。
そして、12.5:1という高い圧縮比を持ちながら、低回転域でギクシャクすることはなく、過激さをむき出しにしたような性格ではありません。
一般道で多用する3000~5000rpmでは、輪郭の明瞭なツインらしい鼓動感が味わえます。もちろん、スポーツモードでスロットルをワイドオープンにすれば、105PSの実力を存分に味わえます。ライド・バイ・ワイヤによるアクセル制御は巧みで、思わず右手のスロットルグリップを大きく開けたくなります。
アクセルに対する反応は鋭く、まさに「ツキがいい」という表現が当てはまります。しかし、敏感すぎるわけではありません。

パワフルであっても、神経質すぎることがない。285度位相クランクによる独特の脈動感は、KTMのスーパーネイキッドやアドベンチャーなどが搭載してきた75度Vツインにも通じるもので、285-435度という不等間隔爆発と大きなクランクマスによって、路面をしっかり捉えるトラクションを生み出しています。
低回転から力強いトルクを発揮し、高回転域ではパワーに厚みを増しながら伸びていく。レブリミット付近までよどみなく吹け上がるそのフィーリングは、痛快としか言いようがありません。
どちらを選ぶか悩ましい
基本コンポーネントを共有する兄弟車でありながら、実際に乗り比べてみると両車のキャラクターは明確に異なることが分かりました。
ヴィットピレン801は、鋭い旋回性と前傾姿勢を活かして、スポーツライディングを積極的に楽しめるロードスター。
一方のスヴァルトピレン801は、穏やかで安定感のあるハンドリングによって、荒れた路面やツーリングでも余裕を感じさせるスクランブラー的な味わいを持っています。
排気量が1000ccを超える大型車やハイパワーマシンは持て余してしまう。でも、自分の手の内でスポーツライドを楽しみたい。そんなライダーにとって、105PSという出力と180~181kgという車重の両モデルは、初めての大型バイクとしても魅力的な存在でしょう。
一方で、リッターバイクを乗りこなしてきたベテランライダーにとっても、持てる技量を存分に活かせる、走り応えのあるモデルです。
価格(消費税10%込み)はいずれも145万9000円です。どちらに決めるかは、用途とデザインの好みでしょう。

Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。


















