デビュー当初は理解されなかった? BMW Motorrad「GS」シリーズはいかにして人気モデルになったのか
「GS」の進化に影響を及ぼした2台
ここからはちょっと長めの余談です。前述したように、フラットツインGSシリーズは、当初はオフロード色が濃厚だったのですが、1994年型でオンロード指向を強め、2004年型からは再びオフロード性能に力を入れるようになりました。そしてその路線変更には、以下の2台が影響を及ぼしたのではないか……と、私は感じています。

1台目は、1991年にヤマハが発売した「TDM850」です。既存の「XTZ750スーパーテネレ」を、思いっ切りオンロード指向にしたと言うべきこのモデルは、アドベンチャーツアラーの美点を取り入れつつも、アドベンチャーツアラー特有の手強さを排除したのが特徴で、その資質が評価され、ヨーロッパでは大人気を獲得しました。
もっともBMWモトラッドも、1983年に「R80G/S」のオンロード仕様となる「R80ST」を発売しています。とはいえ、「R80ST」のセールはいまひとつだったようですし、時代の流れを考えれば「R1100GS」の開発陣にとって、「TDM850」は意識せざるを得ないモデルだったはずです。
そして2台目は、2000年、2001年にプロトタイプが公開され、2002年にパリダカールラリーで優勝を飾り、2003年から市販が始まったKTM「950アドベンチャー」です。

「R1150GS」を含めた同時代のライバル勢とは異なり、オフロード性能と軽さを徹底追求したこのモデルは、当時としては異端の存在でした。とはいえ、「950アドベンチャー」に刺激を受けたからこそ、「R1200GS」は原点回帰と言うべき路線を選択したのではないでしょうか。
もっとも、「R1100GS」と「R1150GS」で培ったオンロード性能の維持にもこだわった「R1200GS」は、「950アドベンチャー」と真っ向勝負ができるモデルではありませんでした。

その事実が腑に落ちなかったのでしょうか、BMWモトラッドは王者としての矜持を示すべく、2005~2008年に限定車として、「950アドベンチャー」の性能(最高出力98ps、乾燥重量198kg、装備重量は非公表)を凌駕する、「HP2エンデューロ」(最高出力105ps、装備重量は199kg)を発売しているのです。
Writer: 中村友彦
二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。












