デビュー当初は理解されなかった? BMW Motorrad「GS」シリーズはいかにして人気モデルになったのか

「GS」の進化に影響を及ぼした2台

 ここからはちょっと長めの余談です。前述したように、フラットツインGSシリーズは、当初はオフロード色が濃厚だったのですが、1994年型でオンロード指向を強め、2004年型からは再びオフロード性能に力を入れるようになりました。そしてその路線変更には、以下の2台が影響を及ぼしたのではないか……と、私は感じています。

1990年代の欧州で大人気を獲得したヤマハ「TDM850」は、「XTZ750スーパーテネレ」の設計思想とエンジンの基本を転用して生まれたオンロード車。タイヤサイズは110/80-18(前)、150/70-17(後)で、ホイールトラベルは160mm(前)、140mm(後)。「XZT750スーパーテネレ」は90/90-21(前輪)、140/80-17(後輪)、235mm(前)、240mm(後)
1990年代の欧州で大人気を獲得したヤマハ「TDM850」は、「XTZ750スーパーテネレ」の設計思想とエンジンの基本を転用して生まれたオンロード車。タイヤサイズは110/80-18(前)、150/70-17(後)で、ホイールトラベルは160mm(前)、140mm(後)。「XZT750スーパーテネレ」は90/90-21(前輪)、140/80-17(後輪)、235mm(前)、240mm(後)

 1台目は、1991年にヤマハが発売した「TDM850」です。既存の「XTZ750スーパーテネレ」を、思いっ切りオンロード指向にしたと言うべきこのモデルは、アドベンチャーツアラーの美点を取り入れつつも、アドベンチャーツアラー特有の手強さを排除したのが特徴で、その資質が評価され、ヨーロッパでは大人気を獲得しました。

 もっともBMWモトラッドも、1983年に「R80G/S」のオンロード仕様となる「R80ST」を発売しています。とはいえ、「R80ST」のセールはいまひとつだったようですし、時代の流れを考えれば「R1100GS」の開発陣にとって、「TDM850」は意識せざるを得ないモデルだったはずです。

 そして2台目は、2000年、2001年にプロトタイプが公開され、2002年にパリダカールラリーで優勝を飾り、2003年から市販が始まったKTM「950アドベンチャー」です。

2003年から発売が始まったKTM「950アドベンチャー」は、KTM初の大排気量Vツイン車。タイヤサイズは90/90-21(前)、150/70-18(後)で、ホイールトラベルは前後230mm(上級仕様のSは前後265mm)
2003年から発売が始まったKTM「950アドベンチャー」は、KTM初の大排気量Vツイン車。タイヤサイズは90/90-21(前)、150/70-18(後)で、ホイールトラベルは前後230mm(上級仕様のSは前後265mm)

「R1150GS」を含めた同時代のライバル勢とは異なり、オフロード性能と軽さを徹底追求したこのモデルは、当時としては異端の存在でした。とはいえ、「950アドベンチャー」に刺激を受けたからこそ、「R1200GS」は原点回帰と言うべき路線を選択したのではないでしょうか。

 もっとも、「R1100GS」と「R1150GS」で培ったオンロード性能の維持にもこだわった「R1200GS」は、「950アドベンチャー」と真っ向勝負ができるモデルではありませんでした。

2005~2008年に限定販売された「HP2エンデューロ」は、「R1200GS」以上に原点回帰の姿勢を感じるモデル。タイヤサイズは90/90-21(前)、140/80-17(後)でホイールトラベルは270mm(前)、250mm(後)。パリダカールラリーのレーサーである「R900RR」をルーツとするフレームは専用設計で、フロントフォークはテレスコピック式を採用
2005~2008年に限定販売された「HP2エンデューロ」は、「R1200GS」以上に原点回帰の姿勢を感じるモデル。タイヤサイズは90/90-21(前)、140/80-17(後)でホイールトラベルは270mm(前)、250mm(後)。パリダカールラリーのレーサーである「R900RR」をルーツとするフレームは専用設計で、フロントフォークはテレスコピック式を採用

 その事実が腑に落ちなかったのでしょうか、BMWモトラッドは王者としての矜持を示すべく、2005~2008年に限定車として、「950アドベンチャー」の性能(最高出力98ps、乾燥重量198kg、装備重量は非公表)を凌駕する、「HP2エンデューロ」(最高出力105ps、装備重量は199kg)を発売しているのです。

【画像】フラットツインGSの変遷を画像で見る(13枚)

画像ギャラリー

Writer: 中村友彦

二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。

1 2

編集部からのおすすめ

CB750Fにまたがって「バリバリ伝説」の世界をVR体験できる! バイク王がバイカーズパラダイス南箱根の7周年イベントに出展【PR】

CB750Fにまたがって「バリバリ伝説」の世界をVR体験できる! バイク王がバイカーズパラダイス南箱根の7周年イベントに出展【PR】

最新記事