「まさかこの匂いは……」機内に漂う予想外の“ネタバレ” スリランカ航空「機内食」レポート
2024年シーズンのMotoGP開幕戦取材のため、わたし(筆者:伊藤英里)はカタールへと向かっていました。そのフライトの機内で離陸直後に漂ってきたのは……「機内食は、まさかあのメニュー!?」。思いもかけないところで“ネタバレ”された、機内食のお話です。
想定外の出来事で、開かれた新たなトビラ
個人的な好みを言うなら、わたし(筆者:伊藤英里)は、機内食については断然「サーブされる料理の内容は直前まで知りたくない派」です。わたしにとって、MotoGP取材のために飛行機を利用する際の楽しみのひとつが機内食なのですが、キャビンアテンダントに「beef or chicken ?」と言われるまで、そしてサーブされるまで、その内容を楽しみにしておきたいのです。
いまやホームページでメニューを確認できたり、サーブされる機内食が書かれた紙が座席ポケットに入っていたりもしますけど、できるだけ情報を目に入れないようにして、機内食に臨む。それが、わたし流の機内食スタイル(?)なのです。
しかし、“ネタバレ”は思いもよらないところに潜んでいるものです。そのとき、わたしはMotoGPの2024年シーズン開幕戦であるカタールGPを取材するため、スリランカ航空でドーハに向かっていました。
乗り継ぎのスリランカのバンダラナイケ国際空港を離陸して間もなく、ふんわりと嗅ぎなれた匂いが機内に漂い始めます。「こ、これは……まさか。カレー!?」。
わたしの胸中に動揺が走りました。そう、あのカレーの匂いです。スリランカの食といえばカレー、と聞いたことがあります。インドに近い国ですから、食文化も近いのでしょうか。
「機内食のメニューがあらかじめわかってしまうのは面白くないなあ……。まあ、ほんとに機内食がカレーなら、という話だけど」
果たして、機内食は、カレーでした。まさか匂いで“ネタバレ”されるとは……。全くもって、想定外です。同時に、カレーの匂いの強力さをあらためて知ったのでした。
そんな“ネタバレ”カレーには、チキン、ベジタブル、フィッシュの3種類の選択肢がありました。わたしはチキンをチョイス。ライスを挟んでチキンとポテトのカレーの2種類が盛られていました。
じつは辛いものが大の苦手です。これまでの人生で、他人の「辛くないよ」発言ほど信用できないものはない、という考えを持つに至ったほどのお子様舌なのです。
それだけに、スリランカという本場のカレーを目の前にして、完全に慄いていました。どれだけ辛いのだろう……と。
ところが、です。食べてみれば、辛くないのです! いいえ、辛いことは辛いのですが、香辛料がほどよくきいていて、飛び上がるほどの辛さはなく、すいすいと食べ進められます。付け合わせのコールスローを合間に食べれば、良い具合に口の中をすっきりさせてくれます。気付けば、夢中になって食べていました。
「こういう経験もアリだなあ」と、わたしは食後のセイロンティーを飲みながら思いました。
機内食にはいくつかの選択肢はありますが、逆に言えば、その選択肢の中から選ぶしかありません。今回のようにカレーしかないのなら、カレーを食べるしかないのです。それは、自分が普段ならば食べないメニューに出会える、ということでもあります。
辛い思いをしたくないわたしは、外食するならばまずカレーを選ばないでしょう……「辛くないカレーもあるよ」と、言われても。
今までの自分の選択肢にない食の経験ができる。それもまた、機内食の面白さなのかもしれません。
Writer: 伊藤英里
モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。