不動車のホンダ「ベンリイC92」をエンジンのプロがレストア! 穴の空いたマフラーを交換ついでにもっとカッコイイ物にアップデートします 【vol.13】
老舗内燃機屋「井上ボーリング」で、年間700台ものヘッド再生を行うベテランヘッド技師が、不動車となったホンダ「ベンリイC92」の再生とモディファイを行う連載。第13回目は、穴の開いてしまったノーマルマフラーを、外装に似合うデザインの物に交換します。
水平に伸びるノーマルマフラー
以前のオーナーが乗らなくなった後も、実働状態を維持する目的で定期的にエンジンを掛けていた事が裏目に出て、内部からの腐食が進み、穴が開いてしまったノーマルマフラー。
タイ製のリプロ品ならそのままの形状の新品が購入可能ですが、価格が5万円以上もする上に、今回排気量が増えてキャブもバルブも大きい物になる事を考えると、抜けのバランス的にもイマイチです。
また、水平に伸びたプレスマフラーはスーパーカブと同じようにビジネスバイク感が満載なため、個人的にキライなので、もっと安くてスタイリッシュな物に変更した上で、少し尻上がりにマウントしてイメージチェンジをしたいと考えました。
しかしスイングアームから固定式のタンデムステップが生えていて、このままではマフラー取り付けの角度を変える事はできません。調べてみると、初期のものはタンデムバーがねじ込み式になっていた事が分かりました。

そのスイングアームに交換し、マウントベースが上方向にオフセットされた折り畳み式のタンデムステップを取り付ける事で、マフラーの角度を上げられるスペースが確保できます。
早速ヤフオクでスイングアームと折り畳み式タンデムステップを検索しました。
スイングアーム自体は青メタリックに自家塗装されていて、程度が悪い物が格安で買えましたが、自分で黒塗装するとチェーンスライダー部分などの塗膜が剥がれやすく、組んでしまうと再塗装も面倒になるので、仕上がりと経年劣化を考慮してパウダーコートを依頼した為、その方が高くつきました。

これでマフラーの角度を尻上がりにできるようになったのですが、ノーマルマフラーはサイドスタンドとセンタースタンドそれぞれを収納した際のストッパー的役目を担っており、これがなくなるとスタンドがチェーンケースに当たる所まで跳ね上がってしまいます。
サイドスタンドのマウント部はメインステップバーの付け根に有り、同じくホンダの「モンキー」や「ダックス」ではそこに段差があってストッパーになっていますが、ベンリイC92にはその段差が無いので、追加する事が必要。ついでに着座位置が4.5cm後退した外装に合わせて、メインステップも少し後方に移動させます。
ベンリイC92のメインステップはエンジン下のマウント部から垂直に上がった位置にありますが、ホンダ「ベンリイ CB125K2」では斜め後方に立ち上がっており、高さはそのままに4cm後退した位置となっています。
サイドスタンドはフレームに取り付けられていますが、これにはストッパーが付いているので、このステップとサイドスタンドを組み合わせて、ベンリイC92用バックステップを作成しました。
マフラーもノーマルに戻せる様マウント位置は共通に
ベンリイC92のノーマルマフラーは、エキパイとサイレンサーの繋ぎ目にOリングを使用した差し込み式で、長いサイレンサーの付け根付近に2箇所のボルトで固定。テールエンドまでの長い距離を、ここで支える構造です。
また、ベンリイC92のフランジはエキパイ後端から入れますが、ベンリイCD125のマフラーではフランジはエンジン側から入れて割カラーを使用して固定することで、エキパイとサイレンサーを切り離す必要は無いため一体化され、強度的に改善されています。
整備性と取り付け強度の観点から、エキパイはベンリイC92のリプロ品を採用し、サイレンサーは純正よりも短い物を使用しつつ、口径変換アダプターをエキパイに溶接して、サイレンサーは差し込み式の分割式とする事で剛性の確保を目指します。
使用するマフラーはノートン風リバースコーンタイプの汎用品で、車両にあてがって最適な角度を検討。その角度で曲がる様にするべく口径変換アダプターを角度調節し、エキパイ後端に溶接で取り付けました。
取り付けステーは前側をエキパイ後端のアダプター部に、後ろ側はサイレンサーにそれぞれ現物合わせで製作し、溶接固定することで完成。

ちなみにステップもマフラーもセンタースタンドも、いつでもノーマルに交換可能な仕様です。
次回はヘッドライト以外の電装12V対応や、タイヤ交換等をした上で、いよいよエンジンの始動確認を行います。
Writer: 市川信行(井上ボーリング ヘッド技師)
川越で創業70年の老舗内燃機加工屋「(株)井上ボーリング」で多種多様な4ストロークエンジンのシリンダーヘッドに関するオーバーホール作業を担当する加工技師。プライベートでもバイクのレストアを趣味としており、趣味を仕事に生かしてるのか仕事を趣味に生かしているのかよく判らないこの状況を楽しみながら、年間700台前後のヘッド再生をこなしている。










