今はもうほとんど見られなくなったキャブ車、なぜなくなったのか
かつては「キャブ車」と呼ばれるバイクが主流でしたが、徐々にその数は減り、今ではほとんど目にすることはなくなりました。いったいなぜ、キャブ車は少なくなっていったのでしょうか。
かつては主流だった「キャブ車」は絶滅危惧種?なぜ数が減ったのか…
ひと昔まえは、キャブレター式のエンジンを採用したいわゆる「キャブ車」と呼ばれるバイクが主流でした。

キャブレターとは、エンジンへ燃料を供給するための燃料噴射装置を指します。バイクのエンジンは、シリンダー内に入れるガソリンを霧状にして空気と混ぜて混合気をつくり燃焼させますが、この量を適切に調整するのがキャブレターの役割です。
またキャブレターは、エアクリーナーから吸い込んだ空気の流れを利用して作動します。電気部品は一切使われておらず、空気の力だけで燃料を噴射できるというシンプルな構造でできているのが特徴なので、メンテナンスやパーツ交換が容易にできる、セッティングも自分の好みに応じて変えられるなどのメリットがあります。
しかしその反面、外気温や気圧などの天候の影響を受けやすく、エンジンがかかりにくくなったり、アイドリングが不安定になりやすいのがデメリット。それゆえに定期的なメンテナンスが必要なうえ、燃費性能や排ガスの環境性能も現行のバイクに比べて見劣りします。
近年では、一部のオフロード競技用モデルなどを除いて、新車で販売されるキャブレターを搭載したバイクをほとんど目にすることがありません。
では現在、ほとんどキャブ車が見られなくなったのは、どのような理由があるのでしょうか。

まず理由のひとつに、”インジェクション式”の登場が挙げられます。インジェクションはキャブレターと同じ燃料噴射装置ですが、電子制御で燃料の噴射量をコントロールするしくみ。気温や気圧など、その時々の状況に応じてコンピューターが最適な燃料の噴射量を割り出してくれます。
そのため、環境の変化に影響されにくいのでエンジンが安定しやすい上に燃費もよく、排ガスも最小限に抑えることができ、メンテナンスもほとんどいりません。
ただし、コンピューターで制御されているのでセッティングを簡単にできないうえ、万が一故障した場合は修理費用やパーツ代が高くなるのがデメリットです。
そして、キャブ車の数が一気に減るきっかけとなったのが、厳しい排ガス規制の影響があります。これは1992年の「ユーロ1」から始まり、深刻な排ガス問題の解決を図るため、CO2の排出量の規制値を段階的に引き下げていくというもの。
とくに2006年に新たに設けられた排ガス規制では、1998年の規制値よりも7割〜8割減という非常に厳しい数値目標が掲げられました。さらに追い打ちをかけたのが、暖気モードでの測定方法だったのが冷気モードに変わったことです。これにより、対応ができない多くのキャブ車や空冷エンジンを積んだバイクが生産終了に追い込まれました。

また、2016年の排ガス規制では、バイクの「OBD(車載式故障診断装置)」の装備も義務化されています。
OBDとは、排ガスの異常を検知したり監視することができるシステムのこと。この規制により、これまで生産され続けてきた既存車も搭載が義務化され、対応できない数多くの名車が姿を消すことになったというわけです。
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このように、キャブ車は技術の進歩というより環境問題の影響によって、ほぼ消滅してしまいました。キャブ車は燃費が悪く、排ガスの発生も抑制しにくいため、現在の新車のラインナップは性能面で優れたインジェクションを搭載したモデルにすべて置き換わっています。
しかし、バイクは趣味性の強い乗り物なので、独特な構造や排気音、レトロな雰囲気をもつキャブ車に魅了されるライダーも少なくありません。どうしてもキャブ車のバイクがほしい人は、中古車市場を探してみるとお気に入りの一台が見つかる可能性があります。









