バイク整備士資格取得に「定員の壁」 国交省の新たな対応を受けた東京都自動車整備振興会の次なる目標
資格者不在の整備工場で分解整備はできず、整備の水準を上げるために、バイク業界でも資格取得が推進されています。ところが、この資格取得のための講習を受けられない、という事態が首都圏を中心に起きています。一方、希望者が少な過ぎる地域の悩みも深刻です。
整備には資格が必要だが、整備士になるための講習が足りない
四輪車と比較して簡易な構造とされるバイクでも、分解整備や車検は認証工場でしか行なうことができません。分解整備に従事する従業員は2人以上必要で、そのうち1人は2級自動車整備士の資格を有し、整備主任者として届け出ることが必要です。

この資格取得のための講習を巡って2024年夏、東京都内のバイクショップで、こんな嘆きが聞かれました。
「年に1回しかない講習会の応募で定員がすぐ埋まって、新たなに整備士になろうとする人材が困っている」
応募が殺到するのは、整備士の出発点となる「二輪3級整備」の資格取得講習です。受講日程は9月~翌3月まで、毎週1回全32回(基礎と二輪)。講習後に資格取得試験があります。
働きながらの資格取得にあわせているため、受講には期間が必要です。3級の資格がなければ、それ以上のキャリアアップは望めませんが、募集は年1回のみです。
「二輪3級整備」資格が脚光を浴び始めたのは、2022年頃からです。コロナ禍の行動制限でバイクの需要が増えたことに加えて、働き方改革に伴う人材不足がバイク業界でも深刻化しました。
これまでも工業系の高校、各種学校を卒業して有資格者として社会に出る新卒者は四輪車ディーラー系を目指すことが一般的でした。そのため人材不足はよりバイク業界に目立ち、専門教育を受けていない人を整備士として育成することが増えるにつれて、講習の応募者が増えた、というわけです。
また、法令上は整備主任が選任されていれば、整備士でない人でも指導の元で整備に従事できますが、正規販売店となる契約にも、資格者の整備を求める項目が盛り込まれるようになり、資格取得の希望は高まっています。
ただ、希望者が増えても講習の定員を増やせない事情が「定員の壁」でした。
整備士は国家資格で、講師1人につき25人まで、という目安が定められています。講習は実技を伴い、その中では専門の機材が必要で、講習の主催者からすると、定員が一定数に達しないとコスト割れしてしまう恐れがあります。教育機関を除く講習の主催者は事実上、自動車整備振興会に限定されているため、実施には慎重な姿勢で臨んでいました。
これが変わるきっかけになったのは、国土交通省物流・自動車局が打ち出した“柔軟な運用”でした。25人という上限に対して、応募者が若干上回る場合は、各運輸局と協議し定員を拡大することを考えています。
東京都で講習を主催する東京都自動車整備振興会は、2025年夏の整備士資格講習の募集について「二輪3級整備講習の講師を増員する方向で、すでに講師を確保した」と話します。
二輪車3級整備の講習の募集が定員を上回っているのは、神奈川県など首都圏で多く見られます。
全国的には、資格講習が開催できない地域も課題に
定員を上回り、受講希望者に対応できない地域がある一方で、全国には希望者が少な過ぎて「二輪自動車講習」を開催できない地域もあります。こうした地域では「3級ガソリン自動車」など四輪車の講習を受けたり、隣県の開催地に“通学”することになります。いずれも資格取得に余計な時間がかかり、整備士不足を加速する要因になっています。

バイク業界ではこんな意見も出ています。
「もともと講習と同じことを教える工業高校などでも、講習を受けられるような環境が整えられないだろうか。その設備を利用できれば、確保するのは講師だけで、開催が可能になる。整備士を増やす努力をしていなかいと、ユーザーの整備に何カ月待ちという状況が生じてしまう」
国交省物流・自動車局では、バイク整備の全国的な実態の調査にも乗り出す構えです。
Writer: 中島みなみ
1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。





