「な、ない!?」4カ月半ぶりにヨーロッパから帰国のフライトで受けた「機内食」の衝撃!!
衝撃でした。約4カ月半にわたるMotoGPの取材旅を終え、日本に帰るフライトで食べた「機内食」です。トレーの上には、いつもあるはずのアレが、無かったのです……。
旅に想定外はつきもの、なのだが……
2024年シーズンのMotoGPサンマリノGP取材を終えたわたし(筆者:伊藤英里)は、9月上旬に帰国の途に就きました。今シーズンは4月下旬のスペインGPからヨーロッパに渡り、9月上旬までの4カ月半ほどの間、ヨーロッパを移動しながらMotoGPを取材してきたのです。

スペインからフランスに移動し、ブルガリアに約2週間滞在しました。ブルガリアからイタリアのフィレンツェへ。ヴェネツィアに向かい、ドイツのケムニッツ、イギリスのバーミンガムとノーサンプトン、ブラックプール、マンチェスター、それからイタリアのリミニと、4カ月半の間、じつに6カ国、12の街を訪れたわけです。我ながら、よくこんなにたくさんの場所に行ったものだなあ、と思います。
サンマリノGPと公式テストを取材した翌日の朝、ボローニャ空港に向かいました。レンタカーを返そうとすると、予想外の出来事が発生です。返却担当の若い女性が、わたしが返却したレンタカーをじっと検分し、「キズがある」と言うではありませんか。
よく見てみると、確かに後部左側の窓のフチのゴムがひっかいたようにボロボロになっていて、運転席側のドアのフチに小さなキズがついています。
心当たりは全くないし、普通に走っていてキズがつく場所ではないので、「これはわたしじゃない」と主張しましたが、残念ながらわたしが出発前に撮った写真にその箇所がなかったので、200ユーロを支払うはめになりました。
彼女もなんとなく思うところがあったらしく、「でも、わたしはこれを報告しなければならないから……」と、申し訳なさそうでした。

MotoGPを取材するにあたって、レンタカーを借りてきたわたしの印象ですが、ヨーロッパでのレンタカーのこうしたキズに対する請求は、担当者や返却方法によってかなりムラがある気がします。今回のキズも、過去に見過ごされたものが、たまたまわたしのときに発見されたんじゃないかな、という気がしました。
腹立たしいことこの上ないのですが、出発のときに見過ごしてしまったわたしのミスでもあるので、「わかった」と言って200ユーロの支払いにサインしました。保険でカバーできるので大きな痛手はないのですが、手間を考えると、出発のときにもっとよく見ておくべきだったと悔やまれます。
しかしこれもまた、MotoGP取材旅のひとつのおまけエピソードのようなものです。ヨーロッパを旅していると、まさかという想定外がいくらでも起こるし、その想定外の度合いや角度が、「想定外のさらに外側」からやって来たりもします。“まさか”日本に帰るというときに、そんな「想定外」に出くわすとは思わなかったけれど……。
待ってました「機内食」! 嬉しい味と、新たな発見
今回は、ボローニャ空港からフランクフルト空港に飛び、フランクフルト空港から羽田空港へのフライトという旅程です。長い時間のフライトも久しぶりなら、機内食を食べるのも久々です。わたしにとって、機内食を食べるのが、飛行機移動の楽しみのひとつなのです。

ボローニャ空港からフランクフルト空港までは1時間半ほどなので、機内食は無しでした。フランクフルト空港から羽田空港までのフライトでは、離陸から1時間ほどして1食目、着陸の2時間前に2食目の機内食がサーブされました。このフライトはANAとルフトハンザのコードシェア便で、機材はANAです。
「これは機内食も日本食が期待できる!」と、フライトチケットを予約したときに心が躍ったことは、言うまでもありません。
なにしろ4カ月半もの間、日本食から離れていたので、すっかり日本食が恋しくなっていました。自分で白米を炊き、スーパーマーケットで買える具のないインスタント味噌汁で日本食らしいものを食べてはいても、満たしきれないものがあるのです。
最初は「鶏肉の甘辛ソース」をチョイス。着陸前は「白身魚のあんかけ」を選びました。機内食のトレーに割り箸が置かれているのを見て、自分が日本に向かっているのだなと、小さく感動しました。
わたしは自分のことを愛国心にあふれる日本人だとは思いませんが、祖国を離れるほど、自分が日本を恋しく思っていることを知ることがあります。こんな風に、ほんの小さなところでも。

機内食はとても美味しいものでした。久しぶりの出汁がきいた日本食は、五臓六腑に染み渡ります……と、感動したのですが、今回はもっと驚いたことがありました。
「ない!」機内食において、いつも、いかなるメニューでもついてきた、パンがないのです。
いつだったか、白米に副菜がうどんというメニューでも、パンがついてきて驚愕したことがあります。おそらくヨーロッパ(あるいは欧米)の人にとって、パンは日本人ととらえ方が違うのだろうと、だから機内食では常時あるのだろうと考えていたのですが、そのパンが、トレーに乗っていないのです。
「あるんだ、パンのつかない機内食……」
それが、率直な感想でした。そしてこうも思いました。「まだ、わたしの知らない機内食がある……」と。
再びパンの無い機内食に出会えることを、そして新しい発見ができることを楽しみに、次の機内食を食べる日を心待ちにしたいと思います。
Writer: 伊藤英里
モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。








