ツインエンジン搭載にくわえ、ロードスター・スタイルへと進化したハスクバーナ「ヴィットピレン801」
ハスクバーナは新型車「ヴィットピレン801」を発表しました。先に発売した「スヴァルトピレン801」でシリーズ初のツインエンジンを搭載。フレームや外装類も、前身となる701シリーズから一新しました。その兄弟モデルとの個性の違いはどこにあるのでしょうか。
2気筒エンジンを搭載した「801」シリーズ
ハスクバーナが新たにラインナップした「Vitpilen 801(ヴィットピレン801)」は、先に販売がスタートした「Svartpilen 801(スヴァルトピレン801)」と、エンジンやフレームと言った車両の主要構成部品にくわえ、前後サスペンションや外装類など多くのパーツを共有しています。
しかしバイクの顔とも言えるヘッドライト周りのデザインに加え、ライディングポジションや前後サスペンションのセッティングを、よりスポーツ指向に変更することで、「ヴィットピレン801」は独自のキャラクターを造り上げているのです。

そもそもヴィットピレンとスヴァルトピレンは、それまでオフロードバイクブランドだったハスクバーナが、総合バイクブランドとして再出発するときに真っ先にラインナップしたモデルです。
当時からこのふたつのモデルは主要部品の多くを共有し、装着するタイヤやライディングポジション、前後サスペンションのセッティングを変更してキャラクターを分けていました。
分かりやすく両車の特徴をまとめると、セパレートハンドルにロード用タイヤを装着し、カフェレーサースタイルを造り上げていたヴィットピレン。対してスヴァルトピレンは、バーハンドルにブロックタイヤを装着し、オフロードテイストをチョイ足ししたスクランブラースタイルを採用していました。
最初は、排気量373.2ccの単気筒エンジンを搭載した401シリーズからスタートしたヴィットピレンとスヴァルトピレンの兄弟は、後に排気量693ccの単気筒エンジンを搭載した701シリーズをラインナップ。ただし「ヴィットピレン701」はセパレートハンドルを採用したモダンなカフェレーサーでしたが、後に追加された「スヴァルトピレン701」はフラットトラッカースタイルを採用していました。

そして2024年春には、401シリーズがフルモデルチェンジ。排気量を398.7ccに拡大するとともにフレームや外装類も一新しました。また「ヴィットピレン401」はセパレートハンドルからバーハンドルへと変更になり、カフェレーサーからロードスターへと、そのスタイルも変更したのです。
さらに2024年初夏に、701シリーズの後継モデルとなる「スヴァルトピレン801」を発表。エンジンは、シリーズ初となる排気量799ccの並列2気筒となり、フレームも一新。先に新しくなった401シリーズと連携の取れた、新しいボディデザインも採用していました。
今回試乗した新型「ヴィットピレン801」は、2024年11月に開催されたEICMAミラノ国際モーターサイクルショーで発表されました。冒頭で説明したとおり、車体を構成する主要パーツのほとんどを「スヴァルトピレン801」と共有しています。では、「ヴィットピレン801」独自のディテールはどこにあるのでしょうか。見ていきましょう。
バーハンドルを採用したロードスター
まずは、特徴的なヘッドライト周りのデザインを見ていきましょう。まるで宙に浮いたような未来的なこのデザインは、60個のLEDを使用しシームレスな光りのラインで造り上げたデイタイムランニングライトと、Bi-LEDプロジェクターを使ったヘッドライトによって構成されています。

一般的なヘッドライトは、レンズとケースでユニットを一体化しています。その見慣れたレンズとケースがないことで、こんなにも斬新な顔周りが造れるんですね。車両を横から見ると分かるのですがデイタイムランニングライトが斜めにデザインされているのも特徴。また少し車体前方に配置されています。こういった小技の集合体で、この個性的な顔周りが構築されているのも面白いですね。
それと重要な変更点は、バーハンドルの形状です。少し幅広く、それでいて少し低めにグリップ位置をデザインしたバーハンドルは「ヴィットピレン801」専用パーツ。ステップ位置は801シリーズで共通ですが、ハンドル形状の変更で、やや前傾したスポーティなライディングポジションが造られているのです。
マニアックなところでは、ライディングポジションの変更にともない、シートスポンジの硬さも「ヴィットピレン801」専用にアレンジされています。シート高もシート形状も同じですが、前傾ポジションとなったことでシートへの荷重が減るので、それに合わせてシートスポンジを少し硬めの素材に変更しています。

忘れてはならない大きな変更点は、前後タイヤです。「ヴィットピレン801」はスポーツ指向が強いミシュラン製ロード6タイヤを装着しました。オフロード走行も考慮してブロックタイヤを装着していた「スヴァルトピレン801」とは大きく違うポイントですね。そのタイヤの変更に合わせて、フロントフォークやリアショックユニットそのものは同じですが、サスペンションのセッティングも変更されています。
また801シリーズは、レイン/スタンダード/スポーツの3つのライディングモードを標準装備。オプションのダイナミックパックを選択すると、4つ目のライディングモード/ダイナミックが追加されます。
ライディングモードは、異なるエンジンの出力特性に合わせて、リアタイヤの横滑りを抑制するトラクションコントロールや、バンク角に応じて効き方を変化させるコーナリングABSなどの電子制御デバイスを組み合わせたもの。801シリーズでは、エンジンの出力特性は共通ですが、電子制御デバイスのセッティングをヴィットピレンとスヴァルトピレンで変えているとのことでした。
スポーティな走りの個性
たったこれだけの変更にもかかわらず、「ヴィットピレン801」を走らせると、兄弟モデルとは違うスポーティな個性を感じることができました。
初ライディングは各ライディングモードの出力特性が同じという説明を聞く前だったので、あれこれライディングモードを変更したり、各電子制御デバイスのセッティングを変更したりしましたが、どの領域でも「あれ? 各ライディングモードの出力特性も変えたかな?」と思うほどでした。エンジンの反応も、それに対する車体の反応も速くなって、「スヴァルトピレン801」に比べるとスポーツ指向が強くなっていると感じたのです。

この反応は、ライディングポジション変更やタイヤ変更に合わせて前後サスペンションのセッティングを変更したことが影響していると思いますが、それによって「ヴィットピレン801」の個性が際立ったと感じました。
とはいえ、そのスポーツマインドは扱いにくいものではありません。801シリーズが搭載する並列2気筒エンジンは、コンピューターが2つのシリンダーを監視&コントロールすることで、低中回転域でもモリモリとトルクが発生して、ライダーのスポーツマインドをOFFにした街中走行や、ツーリングのようなゆったりと流すような走り方もサポートしてくれます。
開発者たちは「ヴィットピレン801」に「ダイナミック・ロードスター」というキャッチフレーズを付けていましたが、僕的にはスポーツマインドをOFFにしたときのフィーリングも良好だったことから、「オールラウンド・ロードスター」というふうに紹介しても良いかな、と感じました。
■写真:Sebas Romero、Marco Campelli
■協力:KTMジャパン
■衣装協力:クシタニ、アルパインスターズ
Writer: 河野正士
国内外問わず、幅広いフィールドでオートバイ関係の取材、 執筆活動を行う。オートバイ・メーカーのwebサイトなども担当しているため、繋がりも強く、事前情報などにも精通。
海外試乗会などにも積極的に参加している。


















