いま大人気なのに!! なぜか激減した「アメリカン」 かつて大型から原付まで存在していた!?
近年、圧倒的な販売台数を誇るホンダ「レブル」やカワサキ「エリミネーター」などは、バイクのジャンルとしてはクルーザーに含まれますが、かつてこのスタイルのバイクは「アメリカン」と呼ばれていました。しかも国内4メーカーのラインナップは半端ない数だったのです。
いまは「レブル」と「エリミネーター」が大人気!
ホンダの「レブル250」は、軽2輪クラス(排気量126~250cc)で7年連続でトップセールスを記録しています。2025年3月には発進から変速、停止まで自動的にクラッチ操作を行う、ホンダ独自の「Eクラッチ仕様車」も加わるので、ますます人気が高まるのではないでしょうか。

またカワサキの「エリミネーター」も、2024年の小型2輪クラス(排気量251~400cc)でトップの販売台数を誇っています。
両モデルともにシート高が低く、跨ると上体が起きたゆったりしたライディングポジションが人気のライトクルーザー、昔からの呼称だと「アメリカン」です。
ところが、大人気にも関わらず現在国内で販売されている日本メーカーのアメリカンは、ホンダの「レブル」シリーズ(250/500/1100)と、カワサキの「エリミネーター」および「バルカンS」のみです。それだけに人気が集中しているとも言えますが、ラインナップの少なさに寂しい気もします……。
ですが日本のアメリカンは、かつては膨大なラインナップを誇っており「ジャパン」+「アメリカン」で、「ジャメリカン」とも呼ばれていました。そんな和製アメリカンの歴史を覗いてみましょう。
輸出は「Z1」ベース、国内は実用車ベースで登場!?
アメリカンと聞いて多くの人が真っ先にイメージするのは、本場アメリカのハーレーダビッドソンではないでしょうか。とはいえ段差の付いた低いシートや大きく湾曲したプルバックハンドル、小さなティアドロップ(涙滴型)の燃料タンクを装備した、いわゆる「チョッパー」のスタイルは、1970年代初頭頃にアメリカで流行し、ハーレーはもちろん当時の英国車や日本車をベースに生まれたカスタムスタイルでした。
その流行に合わせて、カワサキは往年の名車「Z1」の後継モデルである「Z900」をベースに作った「Z900 LTD」が、日本メーカー初のアメリカンだと思われます。とはいえ「Z900 LTD」はアメリカで生産する海外専用モデルだけに、当時は実際に目にする機会はほぼありませんでした。

国内販売された最初のアメリカンは、1978年1月25日発売のホンダ「ベンリィCM125T」です。ベースは実用車の「ベンリィCD125T」ですが、プルバックハンドル、段付きシート、ティアドロップタンクという「アメリカン3種の神器」をきっちり装備していました。
また、同じ1978年にはヤマハが「XS750 Special」と「XS650 Special」を発売します。両モデルともベースはロードスポーツの「GX750」(並列3気筒DOHC)および「TX650」(並列2気筒SOHC)ですが、とくにスタイリッシュな「XS650 Special」は、和製アメリカンを盛り上げる存在となりました。
この1970年代終盤から1980年代初頭にかけて、日本に空前のバイクブームが訪れます。
国内4メーカーは、ジャンルや排気量ごとにラインナップをどんどん増やしていきますが、アメリカンもその例に漏れません。当時はほとんどがロードスポーツ車をベースにアメリカンが作られていた、と言っても過言ではないかもしれません。
車名の末尾に、ホンダは「CUSTOM(カスタム)」、ヤマハは「Special(スペシャル)」、スズキは英文字の「L」、カワサキは「LTD(リミテッド)」とつくモデルが、すべてアメリカンでした。
とくにヤマハは、1980年前後に国内販売モデルだけでも排気量やエンジン種類など、次の通り驚くほどの数をラインナップしていました。
「XS750 Special」(並列3気筒DOHC)
「XS650 Special」(並列2気筒SOHC)
「XJ650 Special」(並列4気筒DOHC)
「XS400 Special」(並列2気筒SOHC)
「XS250 Special」(並列2気筒SOHC)
「SR250 Special」(単気筒SOHC)
「RX50 Special」(2ストローク単気筒)
「XV750 Special」(V型2気筒SOHC)
「SR125 Special」(単気筒SOHC)
「RX80 Special」(2ストローク単気筒)
原付きからハイパーモデルまで、膨大なラインナップ!
かつては原付1種(50cc)も、スポーツ車やレジャーモデルで賑わっていましたが、アメリカンも多数ありました。草分けと言えるのがスズキ「マメタン」(1977年~)で、1980年にヤマハ「RX50 Special」とホンダ「ラクーン」が登場。カワサキは唯一の排気量50ccの4ストロークエンジン車「AV50」(1982年)を発売しています。

またアメリカンと言えば、ユッタリと流して走るイメージですが、ロードスポーツもビックリなハイパフォーマンスマシンも登場します。その代表格が、ヤマハ「VMAX」(1984年)です。当時最強の145psを発揮し、0-400m加速を10秒台で駆け抜けました。
カワサキも「GPZ900R」の水冷4気筒DOHCエンジンを転用した「エリミネーター900」(1985年)を発売し、国内では「エリミネーター750」や「エリミネーター400」など、水冷4気筒アメリカンが闊歩しました。
ホンダは1997年に排気量1284ccの水冷4気筒エンジンを搭載する「X4」を発売しますが、翌1998年には「X4」をベースに「CB1300SF」が登場します。これは一般的な「ロードスポーツ→アメリカン派生」とは逆パターンなのが興味深いです。
かつての和製アメリカンのラインナップは凄まじく、ここではごく一部しか紹介できません。シリーズ名だけを見ても、ホンダは前述した「CUSTOM」に始まり「マグナ」、「レブル(旧)」、「スティード」、「シャドウ」などがあります。
ヤマハは「Special」に始まり「ビラーゴ」、「ドラッグスター」、「ロードスター」、「ロイヤルスター」といったシリーズがあります。
スズキは「L」から始まって「サベージ」、「イントルーダー」、「マローダー」、「デスペラード」、「ブルバード」などです。
そしてカワサキは「LTD」から始まり「エリミネーター」、「スペクター」、「ボイジャー」、「バルカン」といったトコロです。
これらのシリーズで各排気量を用意し、さらにシリーズやサブネームの付かない英記号のみの車名のモデルもあり、もっと言えば国内販売していない輸出専用モデルもあります。
もしかするとアメリカンが登場した過去半世紀では、スーパースポーツやネイキッドなど他のカテゴリーのバイクと比べると、アメリカンがもっとも多彩な車種(ラインナップ)を販売したのではないでしょうか。
この10年で激減したけれど……
2000年代に入った頃から、バイクは厳しさを増す排出ガス規制の影響で、国内メーカーは全般的にラインナップを縮小する傾向がありました……が、和製アメリカンはまだまだ元気です。

過去のバイクカタログ本などを見ると、2000年は約33車種(内、逆輸入車が約5車種)、2005年頃も約30車種(内、逆輸入車が約13車種)、2010年で約26車種(内、逆輸入車が約18車種)ほど販売されています。
そして10年前の2015年でも、約18車種(内、逆輸入車が約4車種)もあります。
また和製アメリカンが登場した当初は、ロードスポーツ車の車体やエンジンを丸ごとベースにしたり、エンジンを転用するモデルが多かったようですが、21世紀の和製アメリカンは専用のエンジンやシャシーを用いる車種が少なからずあり、いま見ても魅力的なモデルが沢山あります。
ところが、2020年にはホンダ「レブル250/500」、ヤマハ「BOLT」、カワサキ「バルカンS」の4車種に激減し、現在に至る……という感じです。
輸出仕様車ではあと何車種かありますが、排出ガス規制などの兼ね合いで、かつてのように正規輸入(逆輸入)されていません。
繰り返しになりますが、ここ近年に至って和製アメリカンは少々寂しいのが現状です。人気が高まっている今こそ、もっとラインナップが増えても良いのでは……とも感じます。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

















