嗚呼、青春の“400レボリューション” 時代を動かしたのは、“いつも”カワサキだった!?
オートバイの生産をスタートし、2023年で70年を迎えたカワサキモータースジャパン。2年前より神戸・元町にあるカワサキワールドでは、70周年を記念した企画展が定期的に開催されていますが、欧州輸出モデルに的を絞った第3弾に続き、この4月からスタートしたのが「我らが青春の'80年代400cc」をフィーチャーした第4弾。懐かしくて、ちょっとほろ苦い記憶もよみがえる!? “カワサキ400シリーズの革命”をご覧ください。
色褪せるどころか、むしろ今欲しい、あの頃の“西風”。
——ZEPHYR(ゼファー)。それは西からの新風。そしてkawasakiのニュージャンルバイクに与えられた名前だ。時間を縮める性能だけに目を向けるのではなく、ゆったりと時間を感じる性能を身につけ、町の風や匂いをスケッチするように走るバイクがあってもいい——とは、発売当時のカワサキ「ゼファー400」のカタログに書かれていた冒頭の一文。

朱色に塗られた鳥居の中にゼファー400がスッと佇む大看板と、その前に鎮座する1989年式ゼファー400の初期モデル……ゼファーといえば、レーサーレプリカ全盛のなか当時、3年連続でトップセールスを記録し時代の寵児となった1台であり、出力と効率を追い求め、先鋭化し過ぎたバイクシーンに辟易としていたユーザーが大歓迎した、400ccの革命児。
カワサキワールドで今年の4月からスタートしたばかりの「熱狂の青春時代」企画展は、このゼファー400から始まります。
改めまして1989年登場のゼファー400。皆さん、覚えているでしょうか? 発売当時のカタログには、彼女との想いを綴ったストーリーが描かれているだけで、スペックや装備を謳う文言は一切ナシ。車名表記も排気量を示す“400”は加えずあえての“ZEPHYR”だけ。
徹底した“数値的性能からの脱却”を図ったカワサキの狙いは見事に当たり、ネイキッド(=カウルレス)カテゴリーを作ったのはもはや誰もが知るバイク今昔物語。とはいえ、レーサーレプリカと近似のフレームワーク(バックボーン=メインチューブがスイングアームピボット周辺まで真っ直ぐに伸びたレイアウト)や、アルミ製角断面スイングアームにアクスルのエキセントリック構造等、各部の高剛性な構成は、“ゆっくり走ることも楽しめる”新しいスポーツスタンダードといった雰囲気であらためてじっくりと眺めても見応え抜群です。そんなゼファー400の発売当時価格は52万9000円、しかも消費税ナシ。安っ!!
等身大バイクが最高だった、あの頃の“ヨンヒャク”達。
“カワサキオートバイ”が産声をあげたのは、現カワサキモータースジャパンのルーツとなる、川崎明発工業(明石の発動機という意。川崎航空機工業製エンジンの総発売元)が創業した1953年。というわけで、2年前の2023年から「70 Years of Good Times」記念展が定期的にカワサキワールドで行われているワケですが、この4月からスタートしたのがバイクブームを彩った“我らが400ccモデル”の特別展。

その象徴でもあるゼファーで幕を開ける展示ですが、お隣には1978年モデルのKH400(登場は’76)がお出まし。ジャジャ馬の愛称で知られるマッハ系2ストローク・エンジンの出力をより扱いやすく改良したKHシリーズは、たっぷり増幅された中低速トルクとエンジンのラバーマウントによる振動低減もあり人気を獲得した1台でした。
さらに歩を進めると1979 年に登場したZ400FXがお出迎え。フラッグシップモデル「Z1」と同様のDOHC4気筒が400ccで楽しめる!! と話題にもなった、少しやんちゃな青春時代を過ごしたヒトにもたまらない!? 人気モデルですが、その後ろに飾られた「80年代バイクブームの熱狂」と題された展示看板も見どころなんです。バイクと人が溢れかえる当時の写真とともに、『あいつとララバイ』『バリバリ伝説』『湘南純愛組』といったバイク漫画も紹介されていて脳内はもう完全にタイムスリップ!?

水冷エンジン、アルミフレーム、前後16インチ……熱量MAXの'80年代。
Z400FXから始まった4ストロークDOHC4気筒エンジンは、次々と現れるライバルに対抗するために改良を重ね、その後のGPz400Fでは最高出力54PSまで登り詰めていた……といいますが、ついに1985年、その性能をはるかに凌駕するマシンが登場しました。
それがZ400FXの隣に並べられたGPZ400R。水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブエンジンに、ホイールサイズは時代を象徴する前後16インチ仕様。400cc(=中型モデル)に感じさせない迫力のリア(タイヤ)ビューを、当時羨望の眼差しで眺めたヒトも多かったんじゃないでしょうか。
この特別展、けっこう嬉しいのが当時のカタログを自由に閲覧できるコーナーがあること。ゼファーシリーズは400/750/1100/Kaiまで揃っていますし、意外とレアなエリミネーター400のカタログも見応え十分。
時代を感じさせるデザインやワードセンスも一見の価値アリで、Z400FXなんてナゼか映画E.T.をイメージさせる!? 宇宙テイストでキャッチコピーは「閃光のオブジェ——」。とにかく“新しい”を訴えたかったことは伝わってきますが……その真意はなんだったのか? カワサキワールドへ行かれた際は、ぜひそんな答え探しもお楽しみください(笑)
ディーラーにはバイクを買いにきた若者がいっぱい!!
大トリは1989年に登場したZXR400のスポーツプロダクション仕様、ZXR400R(’90sモデル)です。ZXR400といえばレーサーレプリカ最後発として妥協のない作り込みに徹し、アルミツインチューブ・フレーム(E・BOX・FRAME)や前後ラジアルタイヤ、そして市販車初の倒立フォークを採用した、とにかくとんでもなく豪華な装備が奢られたモデルだったことでも知られています。

そんなZXR400のレースにフォーカスした”R”仕様は、FCR40キャブレターやクロスミッションも搭載したさらにスペシャルな1台。
そして感慨深いのが、このレーサーレプリカとして尖りまくったZXR400と同じ年に、反レーサーレプリカとしてゼファー400が登場したという事実……というワケで、ココまできたら→入り口へ戻り、もう一度ゼファー400をじっくりと噛みしめる……というのが、オススメの順路であります。
また、ちょっと羨ましくなってしまうのが背後を飾る当時のディーラー店内の様子を写した特大パネル。一度でいいからこれほど賑わっているバイクショップへ行ってみたいものですね、ほんと。
カワサキモーターサイクル事業70周年特別展示の第4弾「熱狂の青春時代」展は9月28日まで。関西の方はもちろん、関西方面へツーリングに行かれた際にはぜひ!!
■カワサキワールド・神戸海洋博物館 開館時間:10:00〜18:00 (最終入館17:30) 休館日:月曜日・年末年始 入館料:大人900円/小人(小・中・高)400円 兵庫県神戸市中央区波止場町2-2
Writer: 芝原啓彦
20年近くに渡って雑誌「ストリートバイカーズ」の編集部員を担当。バイク乗りが薦める、オートバイ・ブックス「THE MOTOR-CYCLIST' BOOKS」では編集長を担当するほか、ヤマハ「SR」やカワサキ「メグロ」など多数のムック本も出版。愛車はヤマハ「SR」、カワサキ「Z1000」。

















