EWCの歴史上最多、レース全体で202クラッシュ、13チームがリタイア!! 実は台本があるんじゃないの!? ル・マン24時間はそんなドラマを多数乗り越えての2位表彰台! レーシングライダー石塚健のレースレポート
国内外で活躍するレーシングライダーの石塚健選手が参戦したフランスのブガッティサーキットで行われたEWC開幕戦 、ル・マン24時間レースをレポートしてくれました。
EWC史上最高に荒れたサバイバルレース
皆さんこんにちは! レーシングライダーの石塚健です。
今回は2025年4月17日から4月20日にフランス ル・マンにあるブガッティサーキットで開催された、FIM 世界耐久ロードレース選手権の開幕戦、ル・マン24時間に参戦してきたので、そちらのレポートを書いていきます。
今回はその後編、決勝レースの模様をお伝えしていきます。それでは行ってみましょう!
いよいよ迎えた決勝日。この日も朝から雨が降り、サーキットはフルウエット状態。そんな中での土曜日の15時に、24時間レースがスタートしました。

スタートライダーはクリス選手。サイティングラップから他チームの転倒が発生し、その後も序盤から何台ものチームが転倒していくというサバイバルな展開でしたが、自分達チームは安定した走行を続け、3番手で1回目のスティントを終えてくれます。
チームの作戦で、ウエットでのスティントはひとりのライダーがダブルスティントを行うという事になり、この作戦が上手くいきクリス選手がクラストップを走行。次のディエゴ選手にバトンタッチします。
その後も順調にライダーチェンジを繰り返しながら走行していましたが、雨が降ったり止んだりのかなりリスキーなコンディションに足元をすくわれ、クリス選手、そしてディエゴ選手ともに各スティントで転倒。幸い小さなクラッシュでそのまま走行できる程度の破損だったため、2人とも自分でバイクをピットに戻し、数分のピット作業で済む程度でレースに復帰。大きく時間をロスすることなく、順調にレースは進んでいきました。
とは言っても、転倒によるタイムロスなどで一時はクラス6番手まで順位を下げましたが、他チームも転倒が相次ぎ4番手まで回復。夜21時半の辺りが暗くなった頃に自分の1回目のスティントが始まりました。
雨は止んでいたもののコンディションはハーフウエットで、ラインは乾きかけているという微妙な状況の中、スリックタイヤを選択してコースイン。ミスの許されない状況でしたが、様子を見ながら徐々にペースアップしていきライバル勢をパスして行きます。
ワンスティントは約40周で、時間にして1時間20分という長いスティントを終えてピットイン。順位をクラス3番手に上げる事ができました。

ここで8時間が経過し、1回目のポイントが付与されました。24時間レースでは8時間と16時間、そしてチェッカー時のタイミングごとの順位によって、チームにポイントが付きます。そのため途中経過の順位も、チャンピオンシップを争う上ではとても重要なポイント。やはり24時間レースでの8時間は、あっという間です。
そんな順調に見えた自分たちのレースですが、直前のスティントでの転倒でクリス選手が足に怪我を負ってしまい、ここからは残りの3人でレースを回していく事になってしまいます。
その後も転倒、緊急ピットイン、セーフティーカーランと、様々なトラブルが発生していきましたが、なんとか鬼門の夜を越え、朝を迎えることができました。
自分が担当した夜中のスティントでは、気温がかなり下がった路面を新品タイヤでコースインし、そのまま長いセーフティーカーランを経てのレース再開という、この上ない程ハイリスクな状況でしたが、無転倒で乗り越える事ができ自信になりました。内心は、とても恐ろしかったです(笑)。
自分の4回目のスティントでは、トップとは数周差がついてしまい、このまま何事もなければトップを捕らえるのは難しいという状況でクラス2番手を走行。3位との差は数周のギャップを築く事ができ、単独2番手という状況でした。
夜が明けてからも、雨が降ったり止んだり、乾いたり、絶対にミスが許されないコンディションの中、まったく気の抜けない走行が続きます。
そして遂に自分の最終スティントを走り終えて残り約2時間のタイミングで、チームメイトに全てを託し、レースを見守る段階に突入。
順当にいけば、1人1時間程度のスティントを2人がミスなくこなしてくれるだけでクラス2位は確定の状況だったため、チーム全員でリラックスした雰囲気でモニターを見守ります。
しかし残り30分を切った、表彰台獲得への現実味が出てきてきたタイミングで、まさかのハプニングが発生。モニターに、ケビン選手がマシンを押している姿が映し出されました。

「え!???」まさかの事態に絶望を感じましたが、ケビン選手の正しい判断とチームの連携の取れた的確な動き、指示によりバイクは素早くピットに戻す事ができ、そこから大急ぎで修復作業に取り掛かります。
なんとかレースに戻って、ポジションを守りたい。そしてここまで頑張ってきたチーム全員の努力が無駄になって欲しくない。色々な感情が爆発し、涙がでました。
そんな想いが通じたのか、僅か数分でマシンの修復が完了。10周程あった3位との差は2周程に縮まってしまいましたが、なんとか順位をキープしたままコースに復帰することができ、チーム関係者や観客からは拍手喝采が起きるほどでした。
マシンを押していた原因は、走行中にチェーンが切れたというもので、エンジンブローでなくて本当に良かったです。
いよいよ残り15分、ディエゴ選手が危なげない走りで走行を続け、ようやく15時に無事SSTクラス2位でチェッカー! 最終的にはレース全体で202クラッシュ、13チームがリタイアとなる、EWCの歴史上もっとも転倒回数が多く、サバイバルなレースだったようです。
開幕戦での表彰台は本当に嬉しく、今年はなんとか結果を残さなければならないというプレッシャーもかなり感じていた上に、チャンピオンシップや将来に向けても絶対に結果が欲しかったのでまずはひと安心。
表彰台に乗るのは2022年の鈴鹿8耐以来、約3シーズン振りだったので尚更嬉しかったですし、やはりル・マンでの表彰台は格別でした。
そして何より長く時間がかかってしまいましたが、応援して頂いているスポンサー様やファンの皆様に表彰台獲得の報告ができたことが一番嬉しかったです。
しかし目標だった優勝には届かず、自分自身にも課題が残るレースであったことは間違いないので、次戦スパに向けてチームと改善していきたいと思います。
次戦こそ優勝し、タイトル争いを確実なものにするべく頑張っていきますので、引き続き応援よろしくお願いします!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。以上、ル・マン24時間のレースレポートでした! それでは!
Writer: 石塚健
(レーシングライダー)埼玉県出身の30歳。3歳からポケットバイクに乗り始め、ロードレースというオートバイ競技に参戦。現在は世界各国で活躍できるライダーを目指して日々、活動中。 2019年から、ヨーロッパでおこなわれる「FIM CEV REPSOL Moto2ヨーロピアンチャンピオンシップ」への挑戦を開始。2025年は「FIM 世界耐久選手権」に、フランスのDafy-RAC41-Hondaより参戦し世界タイトルを目指します。自身のチームも立ち上げ「鈴鹿8耐」にも参戦! スポンサー募集中です! 応援よろしくお願いします。









