カワサキ「初代空冷Z系エンジン」のメカノイズを低減!? 正しいシム調整作業で「直押しタペットノイズ」をシャットアウト!! 〜日本の至宝「空冷4発」を未来へ継承〜Vol.37
メイド・イン・ジャパンのモーターサイクルを代表する一台として、誰もが認める存在と言えるのがカワサキ「Z1/Z2」シリーズです。エンジンン組み立ては、いよいよシリンダーヘッドの搭載になります。ここでは、タペット調整の様子をリポートします。OHCエンジンのタペット調整と言えば、ロッカーアームに取り付けられたアジャストスクリューでクリアランス調整するのが一般的です。一方、カワサキの初代空冷Zシリーズは、カム山がダイレクトにタペットを押し込む直押し方式を採用するため、各カム山に対して「500円玉サイズのタペットシム」で調整を行なうのが基本作業になります。
タペットクリアランスをスムーズに行う段取りが重要
前回の作業では、4ストロークエンジンにとって重要な、バルブタイミングを司るカムスプロケットへのチェーン掛けを終え、カムホルダーを規定のトルクで締め付けました。

その後、クランクシャフトをゆっくり回しますが、この時に、ピストンとバルブがヒット(干渉)していないか手感覚で確認します。この作業確認後にタペットクリアランスの確認調整作業に入りますが、まずは、すべてのタペットに、ある程度のクリアランスがあるか否かを確認します。
バルブシートカットを行なったことで、バルブステムの突き出し量が変化します=シートカットによって、ステムエンド側が微妙に飛び出してしまい、タペットクリアランスが詰まってしまうからです。
内燃機加工のプロショップへシートカットを依頼する際には、バルブシートと当たるバルブの傘部分の研磨=フェイス研磨とステムエンドの研磨を同時に依頼し「突き出し量を再現してほしい」の旨を申し送りするのが良いです。
単なるシートカットのみでは、バルブの沈みによって、タペットクリアランスが減り、カム山のベース円でバルブを押し込んでしまうケースもあります。仮に、そのような状況になってしまったら、まずは薄いシムを入れてクリアランスを確保します。その後、正規のシム調整作業に入るようにするのが正攻法です。また、新品バルブへ交換する際も、バルブクリアランスを考慮しながら組み立て進行しなくてはいけません。
調整シムが数多くあれば、作業効率は圧倒的に良くなる
タペットシムホルダーの外周ツバ部分には「切り欠き」があります。この切り欠きが上へ向く位置までタペットを回します。

この状態でクランクをゆっくり回し、押し込まれたタペットホルダーの切り欠き部分へ、バルブリフターツールと呼ばれるSST(サービス・ショップ・ツールズ)をセットします。カムハウジングにボルト(同ツールの)を手締めして専用工具を固定したら、ゆっくりクランクを回して、カム山をベース円まで戻します。クリアランスが大きくなったところで、ピックアップツール先端でシムを起こし、ピンセットでタペットシムを抜き取ります。これがシム脱着の手順になります。
今回は、現状シムに対して5/100~10/100ミリ薄いシムを組み込むことで、すべてのバルブで規定クリアランス範囲内に収めることができました。もう1ランク薄くしたほうが良い!? それとも厚くした方が!? などなど迷う時には、カム山を真上へ向けて測定するだけではなく、仮に真上を12時とした時に、前後5分ほどカムシャフトを回しながらクリアランス測定することで、より確実な調整が可能になるそうです。この方法は、長年の経験から得たメーカー直系メカニックのノウハウだそうです。
また、同じサイズのシムが数多く必要になることもあるので、様々な厚さの調整シムを数多くかつ豊富に持つことが、作業性向上のポイントにもなります。カワサキ系プロショップもしくは超Zマニアなら、豊富に調整シムを保有していると思いますが、一般ユーザーはそうではありません。
タペットノイズが気になり始めたら、大事になる前にプロショップへ作業依頼しましょう。メーカー純正サービスマニュアルによれば、約6,000キロ走行毎にタペット調整が必要とあります。気になるノイズが無ければ調整する必要はありません。また、バルブシートの沈みでクリアランスが狭くなるケースもあるので、そんな際にもタペット調整が必要になります。
調整作業の完了後は、クランクシャフトをゆっくり数回転させ、再度シックネスゲージでタペットクリアランスを確認します。調整時にシムの収まりが良くないと、落ち着いたときのデータに変化が現れるケースもあるからです。すべての作業を終えたらヘッドカバーを復元しますが、カムエンドの半月型ゴム製プラグは常に新品部品を組み付け、シール座面には液状ガスケットを併用しましょう。
Writer: たぐちかつみ
フリーランスライター。バイクも作る国内自動車メーカーの生産技術開発部門を経てから大人向けのバイク専門誌「クラブマン」誌へ合流。同誌のメンテナンスコーナーが縁で、1995年春には「モト・メンテナンス」誌を創刊し編集長を務めた。同誌休刊後の2019年秋からは、内外出版社にて「モトメカニック」誌を創刊。現在も同誌編集長を務めている。















