一体なぜ? バイクにもあった「ロータリーエンジン」 クルマみたいに現存しないワケとは……

バイクのエンジン(内燃機関)は、ほぼすべてがピストンが往復運動する「レシプロエンジン」を搭載していますが、かつては「ロータリーエンジン」のバイクも存在しました。なんとなく速そうで魅力的ですが、再登場しないのでしょうか?

マツダが実用化した「ロータリーエンジン」

 バイクやクルマの内燃機関は、ガソリンと空気の混合ガスが燃焼・爆発してエネルギー(駆動力)を生み出しています。そして現在のほぼすべてのエンジンが、爆発力によって筒状のシリンダーの中を上下するピストンの「往復運動」を、クランクシャフトで回転力に変換する「レシプロエンジン」になります。

 しかし4輪メーカーのマツダで有名な「ロータリーエンジン」は、おむすび型のローターがまゆ型のハウジングの中で回転して駆動力を生み出します。

マツダのロータリーエンジンの内部。まゆ型のハウジングとおむすび型のローターの間に吸い込んだ混合ガスを、ローターが回転することで圧縮→点火→爆発(燃焼)させてローターの回転を繰り返し、中心のエキセントリックシャフトで回転力を取り出す
マツダのロータリーエンジンの内部。まゆ型のハウジングとおむすび型のローターの間に吸い込んだ混合ガスを、ローターが回転することで圧縮→点火→爆発(燃焼)させてローターの回転を繰り返し、中心のエキセントリックシャフトで回転力を取り出す

 歴史を遡ると、ロータリーエンジンはドイツの技術者のフェリク・ヴァンケル氏が発明したため「ヴァンケル・エンジン」とも呼ばれ、1957年に西ドイツ(当時)のNSU社との共同開発で成功しました。

 レシプロプロエンジンとは異なり、回転運動のみで部品点数も少なく、非常に効率的で当時は「夢のエンジン」と呼ばれ、世界各国の自動車・バイクメーカーがライセンス契約を結びました。

 しかし……理論的には高効率で素晴らしいのですが、実際に製造するには多くの問題があり、4輪メーカーで実用化できたのは、実質的には日本のマツダ(当時の東洋工業)だけではないでしょうか。

 地道な研究と実験を繰り返し、1967年に「コスモスポーツ」を発売し、以後同社のスポーツタイプの「サバンナ」や「コスモ」、「RX-7」シリーズにロータリーエンジンを搭載したことは、クルマ好きの間ではよく知られていることでしょう。

1970年代は、バイクメーカーも開発に取り組む

 しかしマツダ以外にも、というかクルマではなくバイクにもロータリーエンジン車が存在しました。その世界初は1972年にドイツのハーキュレス社が発表した「W2000」で、同じドイツのザックス社製の空冷1ローターのロータリーエンジンを搭載していました……が、極少量生産で実用性にも乏しかったと言われています。

 そして1972年の東京モーターショーに、ヤマハが水冷2ローターの排気量330cc×2の「RZ201」というロータリーエンジン搭載バイクを展示します。エンジンはヤンマーと共同開発し、最高出力は68馬力で当時の750ccクラスに匹敵、デザイン的な完成度も非常に高い車両でした。

 当時のヤマハ販売店向けの冊子「ヤマハニュース」にも大々的に掲載されたため、予約を受け付ける販売店もあったそうです。しかし実際の発売には至りませんでした。

 次いでウワサに上ったのが、カワサキの「X-99」と呼ばれる試作車(1974年)で、「Z1」をベースとする車体に水冷2ローターで排気量896.8ccのエンジンを搭載し、最終的に87.8馬力を発揮したそうです……が、残念ながら1975年に開発を凍結しました。

 またホンダはNSU社とライセンス契約を結ばずに独自でロータリーエンジンを開発し、1975年に「CB125」の車体にコンパクトな空冷ロータリーエンジンを積む試作車を作りましたが、こちらもお蔵入りとなりました。

 海外ではオランダのバンビーンが、1974年にプロトタイプを発表した水冷2ローター996cc(4輪のシトロエン用のエンジンを転用か?)の「OCR1000」を1977年に発売しますが、生産台数は非常に少なかったようです。

 そして1974年、ついにスズキがロータリーエンジンの「RE-5」を発売します。水冷1ローターで排気量は497cc、最高出力は62馬力です。

スズキが1974年に発売した「RE-5」
スズキが1974年に発売した「RE-5」

 ちなみに4輪車のロータリーエンジンの自動車税は、排気量に係数1.5を掛け合わせて計算するため、一説には「RE-5」もそれに倣い497×1.5=745.5ccとして、当時の国内の排気量上限の自主規制だった750ccに合わせて設計したとも言われます。

 しかし実際には輸出車となり、国内では販売されませんでした。また生産期間も1974~1976年で、実質的には1年少々しか作られませんでした。

 とはいえマツダのロータリーエンジンと同様に、数々の問題をクリアして実用化できたのは、スズキの技術力の高さといえるでしょう。

 ともあれ、スズキ「RE-5」の生産期間の短さや、ヤマハやカワサキが完成間近で開発を断念したのには理由があります。

 まずはロータリーエンジンの「悪いウワサ」で、そもそもライセンス元のNSU社が発売したクルマがエンジントラブルを頻発。またロータリーエンジン特有の「悪魔の爪痕」と呼ばれるハウジング内の異常摩耗(マツダやスズキは独自技術でクリアした)などから、「ロータリーエンジンは壊れやすい」という悪評が立ってしまいました。

 もうひとつはロータリーエンジンの「燃費の悪さ」で、おりしも1970年代中頃は世界的なオイルショックに見舞われたため、非常にタイミングが悪かったと言えます。

 社運をかけてロータリーエンジンに注力したマツダは開発を継続しましたが、他の4輪・2輪メーカーが手を引く選択をしたのは仕方なかったのかもしれません。

ノートンのロータリーがレースで活躍するが……

 ロータリーエンジンのバイクは時代の波に消えたかに見えましたが、じつは英国のノートンが地道に開発を続けていました。

 1982年には空冷2ローター588ccから82HPを発揮するロータリーエンジンを搭載するバイクをイギリス全土の警察に納入し、1984年には「WANKEL INTERPOL2(ヴァンケル・インターポール2)」という名のポリス仕様をリリース。そして1988年には同車をベースにオーソドックスなネイキッドスタイルの「CRASSIC」を発売しました。

 並行して、ノートンはレーシングマシンも開発します。前出の空冷2ローター588ccをベースに135HPにパワーアップし、アルミフレームに搭載した「RC588」です。

 このマシンは後にエンジンを水冷化し、最高出力は152HPにアップ、軽量コンパクトでパワフルな「RC588」は短期間でどんどん性能を高めて行きました。

 ところが、問題になったのが「排気量」です。ロータリーエンジンはローター1回転で3回爆発し、エキセントリックシャフト1回転に対して1回爆発するため(1ローター当たり)、レシプロエンジンと異なり、容積に係数を掛けて排気量換算します。そこでレース等を統括するFIM(国際モータリズム連盟)は、ロータリーエンジンに「1.7」の係数を設定し、「RC588」は588cc×1.7=999.6ccとなり、2気筒エンジンのTT-F1マシンと認められました。

 そして英国内のレースやマン島TTでも活躍し、世界選手権TT-F1クラスにも参戦し、ロータリーエンジンの実力を世界に知らしめました。1991年には「RC588」をベースにレーサーレプリカの「Norton F1」を発売します。

 こうしてロータリーエンジンによって復活の兆しが見えたノートンですが、それまで経営難から倒産や合併を繰り返したのと同様に、やはり経営的な問題によって残念ながらレース活動を続けることはできませんでした。

ロータリーバイクの灯は消えず……か?

 ノートンの終焉でロータリーエンジンのバイクは完全に消滅したかに見えましたが、2021年に「Crighton Motorcycles(クライトン・モーターサイクルズ)」がロータリーエンジン搭載の新型モデル「CR700W」を公開しました。

 同社はノートンでレース用ロータリーエンジンの開発を担当したBrian Crighton(ブライアン・クライトン)氏が興したブランドです。

「CR700W」のエンジンは水冷2ローター690ccで、220psの最高出力を誇り、トランスミッションを含むエンジン重量は43kg、車体重量は130kgと超軽量で、販売価格は日本円換算で約1300万円(当時)で25台限定生産と発表されました。

 あまりにスペシャルなバイクなので、安直に「CR700W」をもって「ロータリーバイクが復活!」とは言い難いところですが……。

 ともあれ、各メーカーが開発に勤しんだ1970年代はもちろん、ノートンが活躍した1990年代初頭から30年以上も経過した現在なら技術的にも進化し、諸問題をクリアしたロータリーエンジンも不可能ではないと想像します。

 レシプロエンジンと異なるフィーリングを味わえるロータリーエンジンのバイクが登場したら、よりバイク界が活性化されそうですが……。

【画像】どんなフィーリングか乗ってみたい!! ローターリーエンジンのバイクを見る(17枚)

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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